帰って来たはずなのに(T×L)





タタル渓谷。
月明かりで顔が見えない。
けれど…。

「約束、したからな…」

ルークがいる。
私の目の前に…。
死んだなんて認められなかった。
だって、ルークは帰ってくるって約束したんだもの。
絶対認めたくなかった…。
でも、今目の前にあなたはいる。
無意識に足が動いていた。
触れたい。
あの姿は、幻じゃないと。
今ここにいるのだと。
生きているのだと。
確かめたい。

「ルークっ!!」

胸に飛び込む。
背中に手を回す。
確かに、生きている者の暖かさ。
ここにいる。
ルークは帰ってきたんだ。

「…離れろ」
「ルーク…?」

低い声。
いつもの声じゃない。
それにこの話し方は…。

「俺はルークじゃない」
「では、アッシュですのっ!?」

ナタリアの言葉が頭に響く。
嘘…嘘っ!!

「ルーク…ルークはっ!!?」

アッシュが帰って来た。
じゃあ、ルークは…?
アッシュがナタリアを抱きしめつつ、首を振った。
後は何も言わず、ただ泣いているナタリアの頭を撫で続けた。

「約束、したじゃない…。ルークの、ばか」

溢れ出す涙を止めることは出来なかった。