※ 女体化です。
※ 君が作るモノ。の続きっぽい…?コレだけでも読めます。きっとww



幸せな道。





「それは駄目ですっ!!」

エステリーゼ様が声を高々と僕に言った。

「で、ですが、今ユーリは家事に追われてますし、僕にも任務が…」
「いけませんっ!!」

僕の小さな反抗もあっさりと叩き潰された。

「いいですかっ!?フレンっ!!結婚式は女の子にとって憧れなんですよっ!!」
「憧れ…?そうゆうものなんですか?」
「そうですっ!!純白なドレスに身を包んで、貴方と一緒に生きると宣言する場なんですっ!!」
「…一緒に…」
「だから、するべきなんですっ!!」
「しかし…」
「いいからするんですっ!!」
「わ、分かりました。ですが、と、とりあえずユーリに相談してみます」

何とかエステリーゼ様の言葉を遮り、別れると城の自室へと戻った。
書類を広げ、案件を考えるが先程のエステリーゼ様の言葉が頭に残り、つい横道をそれてしまう。
『結婚式』
確かに僕とユーリは、夫婦で子供も二人いる。
双子の女の子。ハルとルリ。
ハルは僕と同じ金髪碧眼で中身はユーリそのもの。
ルリはユーリと同じ漆黒の髪に紫闇の瞳。二人ともユーリに似ていて凄く可愛い。
そう言ったら、ユーリは『ハルの外見は僕にそっくりだし、ルリの中身はお前そのものだ』とさらりと嬉しい事を言ってくれた。
本当に僕の奥さんは優しいし、可愛いし……って、違うっ!!
僕が気にしてるのはそこじゃなく、結婚式だよっ!!
ユーリも結婚式あげたいのかな…?
ハルもルリも、もう5歳だし…。
出来なくは無いよね…。
ユーリの花嫁姿か…。
ドレス姿のユーリが脳裏をチラつく。

「…いいかもしれない」

早速、仕事を終わらせてユーリの元へ聞きに行こうっ!!
僕は今日の残りの仕事を鬼のような速さで終わらせた。

城から自宅へと帰る途中、ふと店に飾られた真っ白なドレスに目が止まった。
それは、普通のウェディングドレスを膝丈にしたような、一風変わったドレスだった。
再びユーリの姿が脳裏をよぎる。

「……ユーリに、似合いそうだな…」

ブーツとセットのドレス。
そのまま、引き寄せられるように店の中へ入り、購入してしまった。
その店の中は、とても危険だった…。
何故なら、ユーリやハルやルリに合いそうなデザインばかりだったから…。
そして店員も実に巧妙で…。
気付けば娘達の分も込めて、大量に買い込んでしま……やばい、よね。

「どうしよう…。僕のお小遣いとはいえ…怒るよね、多分」

しかし、やっぱり止めますとは言えず店を出た。
せめてもの救いはドレスは一着ずつだった事だろうか…。
他は普段着だ。
でも…。
紙袋を両手に提げて歩いていると後ろから名を呼ばれ、振り返るとそこにはハンクスさんが呆れ顔で立っていた。

「は、ハンクスさん…」
「物事には限度があるもんじゃぞ?」
「は、ははっ…。ユーリに似合いそうだと思ったらつい…」

バレてしまったんだから、今更隠す必要も無い。
僕が素直に言うと、ハンクスさんは一瞬きょとんとして、大声で笑い出した。

「相変わらず『ユーリ馬鹿』は健在じゃの」
「す、すみません」
「何を謝っておるんじゃ?別にわしゃ怒ってないぞ。むしろわしも昔、ばあさんに買ってやって怒られたもんじゃ」
「そうなんですか?」
「あぁ、そうじゃよ。だから、買ったものを数回に分けてプレゼントしたり」
「数回に分けて…?」
「そうじゃ。…ふむ。お前さんの場合、昔からユーリに嘘をつけないからのぉ。わしが預かっててやろうか」
「本当ですかっ!?有難う御座いますっ!!」
「しかし、珍しい事もあるもんじゃ。フレンが買いすぎるなぞ」
「それが…実はエステリーゼ様が…」

ハンクスさんと一緒に下町へと向かいながら、エステリーゼ様と話した内容を説明した。
結婚式をあげていない事実にハンクスさんも、やはりエステリーゼ様と同じ反応をした。
やっぱりあげる必要があるだろうか…。
ユーリも本当は結婚式をしたいと思っているだろうか…。
考え込みながら、ハンクスさんの家へお邪魔するとそこにはユーリが借りていた宿の箒星の女将さんがいた。
そして、ハンクスさんの口から一連の流れを説明されると烈火の如く怒った。
そんなに大事なものだろうか…。
女将の怒りに数歩引いて考えてしまう。

「そうだっ。下町の皆で結婚式をあげてやろうじゃないかっ!!」
「えっ!?」
「それはいい考えですっ!!」

僕が答える前に部屋のドアがありえない音を出して開き、そこにはエステリーゼ様が立っていた。

「ど、どうしてここに…?」
「盛大にやりましょうっ!!幸いドレスはフレンが買った純白のドレスがありますしっ!!」
「え?な、なんで知って…?」
「フレンっ!!」
「は、はいっ!!」
「指輪は渡してるんですっ!?」
「えっ!?いえ…」
「最低ですっ!!」
「うっ…すみません」
「ユーリにサプライズプレゼントですっ!!準備は任せてくださいっ!!」
「え、エステリーゼ様っ!!それはっ」
「フレンは指輪の準備だけしっかりしていてくださいっ!!ユーリには決してばれない様にっ!!」

そう言って、ドレス以外の服を持たされハンクスさんの家を追い出されてしまった。
……何で、こんな事に…。
悔やんでももう遅かった。

諦めてトボトボと、家へ帰りドアを開けると、子供達が走って来た。

「父さん、お帰りっ」
「パパ、お帰りっ」
「只今、ハル、ルリ」

足に抱きつく二人が可愛い。手に持っていた服の入った袋を床に置くと二人を抱き上げた。
すると嬉しげに小さな手を伸ばし首に抱きつく二人の頬にキスをするとお礼にとキスを返してくれる。
毎日の日課だ。そして奥からユーリが出迎えてくれた。

「お帰り、フレン。早かったな」
「只今、ユーリ」
「?この紙袋どうしたんだ?」
「ん?あぁ、つい皆に似合うと思って買っちゃったんだ」
「ったく、無駄遣いすんなよな」

やっぱり、言われた。
苦笑いを浮かべていると、ユーリが僕をじっとみて「ま、嬉しいけどな」と笑ってくれた。

「とにかく疲れただろ。もう少しで飯出来るからその重苦しい鎧外して来いよ」
「あぁ、そうするよ」

子供達を腕から降ろし、ユーリが紙袋を持ってリビングへ行ったのを確認すると自室へと着替えに行く。
その後ろを子供達が手を繋ぎながら追ってくる。ハルが今日あった事を自慢げに話すのを頷き、ルリは今日何は何かあったか?と問う。
これも毎日の日課になっていた。着替え終わるといつものように右手をハルと左手をルリと繋ぎリビングへと戻る。
テーブルの上にはホカホカと美味しそうなオムレツとコーンスープが並べられていた。

「ルリーっ。パン持ってけーっ」
「はーいっ!!」
「ハルはグラスなーっ」
「オッケーっ!!」
「フレンはスプーンよろしく」
「了ー解」

テーブルに全てが揃い「いただきます」と仲良く食事が開始した。
大きなスプーンで一杯救い上げ口の中にハルとルリが頬張る。それを溢さないだろかと見守りながら食事をする。
僕はこの時間が一番好きだった。
仕事の疲れが一気に吹っ飛ぶんだ。

「そう言えば、ユーリ」
「んー?何だよ」
「ユーリって結婚式したいと思う?」
「絶対嫌だっ!!」
「えっ!?」

そんな力一杯否定されるとは思わなかった。

「な、何で?」
「何でって、あんな汚したら怒られるような真っ白のドレス着て、しかも知り合いの前でキスとか無いだろっ!!」
「……そっか。うん。ユーリはやっぱりそうだよね」

何か納得がいってしまった。
やっぱり普通の女の子と同じだと思わない方がいいみたいだな。
でも…今更エステリーゼ様を止める事は出来ないよね…。

「ユーリ、ごめんね?」

取り合えず謝っておくと、ユーリはただ首を捻るだけだった。




※※※




フレンが早く帰ってきた日から三日後。
家でハルとルリと三人で遊んでいると、そこへ突然エステルが現れた。

「よぉ、エステル。どうしたんだ?そんな嬉しそうな顔をして」
「ユーリっ。準備は出来ましたよっ!!」
「準備?一体何の話だ?」
「さ、これに着替えて下さいっ!!」

手に持っていたのは、この前フレンが洋服を買ってきた店と同じ柄の紙袋。

「ハルとルリはこっちよ」
「リタ?」

やはり同じ柄の紙袋を持ってリタがエステルの後ろから顔を出した。
…?
そう言えば、二人ともいつになく正装だよな…。
コレは一体…?

「とにかく着替えてくださいっ!!」

どアップでエステルに迫られ、数歩引きながら断ると何を言われるか分からない恐怖心から頷いた。
リビングに行き紙袋を開くと中には真っ白なドレスが入っていた。
何か…引っかかるんだが…?
必死に記憶を探る。

『ユーリって結婚式したいと思う?』

…あ。

『ユーリ、ごめんね?』

フレン…、知ってやがったなっ!!
と今更気付いた所でもう遅い。
目の前でエステルはオレが着替えるのを待ってるし、後ろでリタがさっさとハル、ルリを着替えさせてしまった。
仕方ない。
腹を括って、ドレスに着替える。
って、丈が短いっ!!
しかも、レースの手袋はいいとしても、白のブーツって…。
フレン…後で覚えてろよ…。
沸々と怒りで腹が煮えたぎってくる。
すると、ふわりと頭に何かのせられた。
これは…ヴェール?

「完成ですっ!!」
「後は化粧ね」
「じゃあ、私の出番かしら」
「ウチも手伝うぞっ!!」

いつの間に入って来たのかジュディとパティの二人が化粧箱を持って立っていた。
何でこんな事になったんだ…。
ジュディに化粧をされながら、ただ考えていた。

バッチリ化粧までされて、そのままエステルに手を引かれるまま、下町へと続く坂道を下っていく。
市民街にある自宅から出て、途中色んな人に見られては拍手を送られ、野次を送られ…。
オレ、今恥ずかしさで死ねるっ。
間違いなくっ!!

「このまま、下へ降りていってくださいね」

エステルに言われ、一人で坂道を下る。
あれ?
いつもなら誰かしらとすれ違うはずなんだけど…。
誰ともすれ違わない。
それ所か人の気配すらない。
不信に思いながらも坂をゆっくり下っていくとそこには…。

「フレンっ!?」
「ユーリ」

噴水の前で、騎士団の正装をした、フレンがこっちを見て立っていた。
オレに手を差し伸べながら。
慌てて走りよりその手に触れると、フレンが優しく握り返してくる。
フレンの手は凄く暖かかった。

「フレン…。お前な…」
「うん。言いたい事は分かってるよ。でもエステリーゼ様を止める事が出来なくて…」
「…だろうな。あの勢いには勝てねぇよ」

オレとフレンは互いに微笑んだ。

「そのドレス、凄く似合ってるよ、ユーリ」
「…ここに来るまで凄く恥ずかしかったんだぞ」
「どうして?」
「色んな奴に拍手されたり、野次られたり…」
「それは、仕方ないよ。だって、ユーリは他の誰より綺麗だから」
「…馬鹿」

ぷいっと顔を逸らすと、フレンがくすくすと笑っているのが聞こえた。
だけど、悪い気はしない。
ふっとオレにも笑いがこぼれた。

「ユーリ、これ、受け取ってくれる?」
「ん?」

フレンがポケットから取り出したのはチェーンで繋がっている2つの指輪だった。

「これは…?」

良く見ると見覚えがある、銀色の輪に小さく緑色の宝石がついた指輪。

「これ、お前の親父さんとお袋さんがしてた…」
「うん。僕の両親の形見だよ。子供の頃、母さんが僕に渡してくれたんだ。いつか、本当に愛せる人が出来たら渡しなさいって」
「フレン…」
「まぁ、その時から『多分ユーリでしょうけど』って笑ってたけど」
「……ま、あのお袋さんなら当然だな」

フレンの親父さんが亡くなった後も、数日泣いて泣き尽くして、でも悲しんだ後は前に進むだけだってフレンとオレの背中を押してくれたっけ。

「いつか、ユーリに渡そうと思ってたんだ。けど…ハルとルリが先に産まれちゃってタイミングが。プロポーズもしてないし…」
「ははっ。だな」
「ユーリ…貰って、くれる?」

何で、疑問系なんだよ。
握り合っていた手を放し、手袋をとると、フレンの前に手を差し出した。

「ユーリ?」
「当たり前の事聞いてんなよ。フレン」

フレンはきょとんとした後優しく微笑み、チェーンから指輪を外すとオレの手を取り薬指に指輪をはめた。

「ほら、手貸せよ」
「うん」

今度はオレがフレンの薬指へと指輪をはめる。

「ユーリ、愛してる」
「バーカ。…オレも、愛してるよ」

フレンの顔が近づくのをそっと目を閉じ受け入れた。
唇にフレンの唇が重なったその瞬間。


パーンっ!!パーンパーンっ!!

クラッカーの音が一斉に鳴り響き、

『結婚おめでとうーっ!!』

一体何処にコレだけ隠れていたんだって呆れるくらいの下町の皆がオレ達の周りに拍手しながら笑顔で現れた。

「パパーっ!!」
「母さんっ!!」

ハルとルリが全力でこっちに駆け寄ってくる。
ハルは青のドレス、ルリは赤のドレスがとても似合っていた。
…フレンが感動で倒れそうになる位には。
オレはハルを、フレンがルリを抱き上げると、下町の皆が走り寄ってきた。
フレンは幼馴染の男共にからかわれ、オレの周りには女達が嬉しそうに笑ってくれた。
女将さんなんかは涙まで流して…。

「まさか、ユーリの花嫁姿が見れるなんて…」
「なんか、さらっと酷い事言ってないか?」

笑い声が溢れた。
すると、いきなり大きな影が出来た。
何だろうと空をみると、そこにはバウルがいて…。

「ユーリ、結婚おめでとーっ!!凛々の明星からのプレゼントだよっ!!」
「カロル?」

空から大量の花吹雪が舞い降りてきた。
多分バウルから皆が撒いているのだろう。

「フラワーシャワーか。いいねっ」
「じゃあ、僕からはこちらを」
「ヨーデル殿下っ!?」

いつの間にいたのか。
殿下が騎士を引き攣れ、現れた。
その中にはコックが数十人と混ざっていて…。

「料理を沢山ご用意しました。さぁ、今日はお祝いです。皆さんで騒ぎましょうっ」

歓声があがり、今までに無く下町が賑やかになった。
バウルから降りたカロル達も中に混じり楽しげに騒いでいる。

「ユーリ…」

何とか、ルリを死守して帰ってきたフレンが隣に立った。

「ハルちゃ〜ん、ルリちゃ〜ん。おっさんと美味しいもの食べようよ〜」
「わんわんっ!!」

おっさんが、遠くでお皿を持ちながらラピードと並んで子供達を呼んだ。
ハルとルリは顔を見合わせたかと思うと、

「行くーっ!!」
「あ、駄目だよ、ハル。転んじゃうよっ!!」

二人がオレとフレンの腕から降りて、足早に駆けていった。
それを二人で微笑ましげに見送っていると、フレンがオレの肩をそっと抱き寄せた。

「絶対に…幸せにするからね、ユーリ」
「…オレはもう幸せだ。ここにいる誰よりも、な」

そっとフレンの胸に顔を埋めた。
今、――幸せで…。
幸せすぎて…涙が溢れて止まらないのを、皆に知られたくないから…。
そんなオレに気付いてか、フレンもそっとオレを抱きしめた。