君の為のプロポーズ





昔々ある所に、超絶美形の王子様がいました。
王子様は、黄金に輝く髪と見るもの全てを虜にする青い瞳を持ち、更にとても優しく剣に優れているという、何それ、あんたちょっと神に気に入られ過ぎじゃないの?と言われそうな位完璧なお人でした。

そんな王子様ですが、ある日。
城下へとお忍びで偵察へ行っていた時のことでした。
そこを歩いていた美青年。
ここが重要です。
そこを歩いていた『美青年』に王子は一目で恋に落ちてしまいました。
咄嗟に彼の手を掴み、

「僕とお付き合いしてくれませんかっ!?」

と声をかけてしました。
美青年は黒髪をなびかせ、振り向くと一言。

「は?」

まるで寝ぼけてんのか、この野郎。
と言うかのような声でした。
しかし、一度恋に落ちた王子様の耳にそんな言葉は入りません。
全くこれっぽっちも入りません。
本当ならこれはストーカー?もしくは犯罪者?なのですが。
そこはそれ。
王子様ですから。
王子様は絶対の権力者ですから。
それに王子様はその美貌が武器なのです。
美青年はその紫の瞳を丸くさせ、驚きました。
そしてそして、なんと王子様の交際を受け入れたのです。
決して顔には出しませんが最高に浮かれ果てた王子様は早速美青年とデートをするのでした。
因みに、この時美青年の都合は全くもってお構いなしです。
その日、夕暮れまで王子は美青年とのデートを堪能し、流石に城へと帰らなくてはならなくなってしまいました。

「…今日はこれでお別れだけど…」
「あぁ」
「名前を、聞いても良いかな?」
「っ!?……ユーリだ」
「ユーリ…。良い名前だね。…ねぇ、ユーリ」
「ん?」
「次に会う時、必ず君に結婚を申し込むから、絶対。待っててくれるかい?」
「……あぁ。待ってるよ。どんな状況でも待っててやるよ」

あまりの嬉しさに王子は美青年に口づけを交わすと、急ぎ城へと戻りました。
そして、城にいる王様の部屋へと特攻をかけるのです。
ドア?そんなものは切り捨てます。
王様愛用のワイン?そんなものは切り捨てます。
王様専用高級ベット?そんなものは切り捨てます。

「って、おおぉいっ!!おっさんまで切り捨てる気じゃないでしょうねっ!!」

王子様は目がマジでした。
王様は斬って捨てられる。と本気で恐怖を感じたので、王子様の言い分を聞きだすことにしました。

「なになになに?どしたの?おっさんなんで切り捨てられるのか理由だけでも聞かせて頂戴よ」
「父上。僕はとても愛しい人が出来ました。だから、許嫁との婚約を解消したいのです」
「え?あ、なに?そうなの?」
「はい。僕は彼と生涯を共に過ごしたい。だから」
「んー…そうかー。おっさん的には、あの許嫁ちゃんの方がフレンちゃんには合うかなーと思ってたんだけど。でも、まー。本当に好きな人が出来たんなら止める必要ないわ。好きにしなさいな」
「ありがとうございますっ!」

王子様は剣を振り上げながら嬉しそうに微笑みました。

「だからー、お願いだから、剣、降ろしてくれる?」

一瞬成敗してしまおうと思いましたが、この国の王子である事を思いだし、剣は静かにしまいました。
こうして、王子は美青年と一緒になる許可を貰ったのです。
残すは、この事を美青年に伝えるだけっ!!
王子様は翌日喜々として美青年に会いに城下へと向かいました。
しかし、その日は美青年と会う事が出来ませんでした。
今日は外出していないのだろうか?
その時、王子様は深く考えていませんでした。
けれど、次の日も、その次の日も。
王子様は美青年と会う事は叶いませんでした。
王子様は街を回ってみることにしました。
相手は自分が王子だってことをきっと知っている。
だから、自分に会おうとするならば、必ず城の付近にいるはず。
でも、王子様は美青年に会う事は出来ません。
街の中をいくら歩き回っても、黒髪の男性といくらすれ違っても、それは王子様が探している最愛の人ではなかったのです。
待っていると言ってくれたのに。
王子様の心に小さい、でも、確かに黒い何かが生まれたのでした。
城へ戻り王子様は考えました。
良く考えてみると、王子様は美青年の名前以外何も知らない事に気づきました。
相手は自分の事を知っているようだったのに、自分は何もしらない。
その事実に、王子は愕然としました。
後悔しました。
沢山沢山後悔しました。
どうして、もっと早くに知ろうとしなかったんだろう。
どうして、もっともっと早く彼を知る事が出来なかったんだろう。
王子はまるで壊れた人形の様に、今までの日々を取り戻しました。
人形の様に、王様に命じられた事だけを実行し、何を考える事もなく、ただの無表情の人形に。
そんな王子を見かねて、とあるお付きのメイドが王子に小さな光を与えました。

「諦めてしまうの?」
「……?」
「ただ何も知らないと言うだけで、諦めてしまうの?」
「君が何を言っているのか、わからない」
「知らないのなら、知ればいい。会えないのなら探せばいい。だた、それだけの話でしょう?」
「…ジュディス…」
「私は、人形の王子に仕える気はもうないの。だって、幸せそうな王子を知ってしまったんですもの。人探し何て簡単でしょう?貴方はこの国で二番目の権力者よ」

目が覚めたようでした。
王子様は私事で人を利用する気はありませんでした。
けれど、今は。今だけは、と。
兵たちに美青年の行方を探させる命を出しました。
数日後。
美青年の行方が分かりました。
その報告書には、美青年が今は隣国へいると。
隣国は彼の故郷。どうやら故郷へ帰ったようでした。
その報告書とその姿絵を確認していると、後ろに気配がしました。
思わず剣を抜き突き付けると、そこには王様の姿がありました。

「…す、すぐ、剣を、抜く癖やめない?」
「これは父上。申し訳ありません」
「謝ってても剣は降ろしてくれないのね。何見てるのよ?」
「あ、これはっ」
「別に怒ってるわけじゃないのよ。男心。おっさんにもちゃんと分かるから。…あれ?」
「?」
「フレンちゃんが惚れたのってこの子?」
「え、えぇ。それが、何か?」
「この子って、おっさんが用意した婚約者じゃないの」
「……は?」
「…さては、フレンちゃん。面倒になって最近の姿絵見てないわね?」
「あ、いや、それは、その…」
「ちゃんと見るように、って言ったでしょ?」

王子慌てて、戸棚にしまっていた王様に渡された婚約関係の書類を取り出し、姿絵を見ました。
確かにそこには、あの美青年の姿が。
王子様は頭をフル回転させました。

(婚約者がユーリ?という事は、僕はユーリとの婚約を破断してしまったって事で…だから、ユーリは故郷に帰った?)

王子様の顔から血の気が引いていきます。

「ほら、だから言ったじゃない。おっさんの目は間違いないんだって」
「……申し訳ありません」
「それはおっさんに言う事じゃないわね」
「……行きます。ユーリを迎えに」
「はいはい。気を付けて行ってくるように」
「はいっ!」

王子様は急いで城を飛び出し、隣国へと向かいました。
勿論、愛しい人を迎えにです。
王子様は隣国まで一週間の距離を三日で辿り着き、護衛が力尽き干からびているのをガン無視して美青年の住む家へと走りました。
逸る鼓動を抑え込む様に深呼吸をし、王子はドアをノックしました。
ですが、反応はありません。
もう一度ノックします。
すると、ドアが開き黒髪がひょこっと見えました。

「ユーリっ!!」
「……っ!?」

バタンッ!!
ドアが閉められました。
慌ててノックをして、ノブを回して、美青年の名を叫びます。
ですが美青年は答えようとしてくれません。
焦れた王子は、ドアを斬りました。

「ぉわっ!?」
「ユーリ、話があるんだ」
「ドアを斬って、しかも剣を持ちながら話って」
「話を逸らさないでくれっ」
「逸らしたくもなるっての。ってか逸らしたわけじゃ…あー…ドアが」
「ユーリっ!」
「…何だよ。分かったよ。覚悟、決める。ほら、中に来いよ。ただし、兵を入口に見張らせろよな。ドア破壊したんだから」
「…わかった」

王子様は神妙な顔つきで頷きました。
勿論、美青年に言われた通り、体力もろくに残っておらず飲まず食わずで干からびている兵を見張りに置きました。
役に立つかなんて関係ありません。
だって美青年は王子が守れば何の問題もありませんから。
美青年は王子を自室へと案内しました。
王子はきょろきょろとその美青年の自室を見渡しました。
物というものが何もない部屋に驚きつつも、今はそんなことをしている場合ではないと我に帰ります。

「んで?話ってなんだよ」

話を聞くといったものの、美青年はとっても話を聞いてくれそうな態度ではありませんでした。
見るからに怒っています。
けれど、王子様はめげません。
とにかく誤解を解こうと頑張りますが。
美青年の耳にも心にも届きません。
王子は―――逆切れしました。
美青年の肩をぐっと押し、ベットへと押し倒したのです。

「ちょ、まてっ」
「待たないよ。だって言葉でどんなに伝えても伝わらないんだ。だったら…体に教え込むまで」
「はぁっ!?ちょ、やめっ、どこ触ってっ」

美青年は必死に抵抗をします。
しかし、王子様はドアすら一撃で切り捨てる怪力の持ち主です。
抵抗はほぼほぼ無意味でした。

「い、やだ、ってっ、」

抵抗の言葉すら王子様には届きません。
どっちが人の話を聞いていないのか。
美青年は頭にそんな矛盾が飛び交います。
一方、王子はやっと愛おしい人に触れれる喜びで理性すらも切り捨ててしまいました。
美青年はあっという間に服をポイされて、体の至るところにキスをされ、恥ずかしさのあまり、腕で顔を隠してしまいます。
けれど、王子はその顔も見たいので、あっさりと外してしまい、その真っ赤になった頬にキスを落とします。
そんな優しさにちょっと絆されそうになった美青年ですが、王子の指が自分の中に入りこもうとした瞬間、我に帰ります。

「や、やだっ、ふれ、んっ、うぁっ!?」
「力を抜いて。傷はつけたくない。けど、僕ももうそんなに我慢できないんだ」

早急に中を拡げ、王子様は指を引き抜くと、美青年の抵抗をねじ伏せて、中へと自身を押し込みました。
美青年の背は弓なりにしなり、その紫の瞳からは涙が零れ落ちます。
それが何の涙なのか、色々考えは浮かびますが、王子は分からず素直に問いただしました。

「そんなに、僕が嫌か?」
「…っ、いや、だったのは、お前だろ」
「え?」
「オレと、いっしょに、なりたくなかったから、婚約、解消したんだろ」
「…違うよ。違うんだ、ユーリ」
「フレン…?」
「僕は君が婚約者であるって気付けなかったんだ。だって、僕は君が赤ん坊の時の姿しか知らなかったから」
「…へ?」
「父上が持って来ていた君の姿絵。つい面倒で棚にしまい込んで…。それがまさか君だとは思わなかったから…」
「んじゃ、もしかして…」
「ちゃんと僕が君だと知っていたら間違いなくそのまま結婚していたよ。言っただろう?次にあった時結婚を申し込むって」
「フレン…」

美青年は嬉しそうに微笑み王子に抱き着きました。
王子は考えました。
これはプロポーズを受けてくれたと思っていいのだろうか?と。
何だろう、この可愛い生き物は?と。
もう、動いていいかな?と。
結論として、王子は嬉しげな美青年を感情のまま抱きしめ、その薬指に誓いのキスをすると、美青年の奥を突き始めました。

「―――あぁっ!?」

咄嗟に出た可愛い声を堪能しつつ、美青年の悦がる場所を集中的に突きます。
そして、二人同時に果てて、王子は美青年を抱いたまま、二人仲良く眠りにつくのでした。
翌日、王子は美青年を連れて城へと戻ります。
勿論、護衛の兵士たちもへべれけのまま付いて行きます。
イチャイチャしながら帰還した二人は王様は歓迎しました。
護衛の兵たちはそのまま医務室へ。
こうして二人は幸せに暮らしました、とさ。


※※※


「って言う話はどうです?」
『………』

全員が絶句して、フレンとユーリに至っては口が開きっぱなしだ。

「…取りあえず、エステりーぜ様」
「はい?」
「子供向けのお遊戯会でその題材は無理です」
「って突っ込み場所そこじゃねーだろっ!!」
「うぅ〜ん。エステル、中々やりおるの」

一斉に騒ぎ出した中。
部屋の隅でカロルだけが、

「大人って…大人って…」

震えていた。






アトガキ的なモノ。


ミルティ様のリクエストで
『許嫁フレユリ』
でした。
コメディ色をめちゃ強にしてみたのですが、いかがでしょう?
気に入って頂ければ嬉しい(≧▽≦)
お伽噺風の中にエロを入れる感が倒錯的で楽しいかなとwww
書いている方は凄く楽しかったです(^◇^)
リクエスト有難うございましたっ!!