※ かなり短いww
※ そしてフレンさんは計画的です。
油断大敵。料理の罠。
旅の途中。バウルに頼み空の上。何時もの様にフィエルティア号の中で昼食の時間になった。
役割分担がジャンケンで決まり、準備に取り掛かった。
今日は空の上と言うのもある為、火を使わない料理にしよう。
そう言ったオレの提案が通り、今日の昼食はサラダに決まった。
そして、今日の料理当番は…。
「僕だね」
…フレンだった。
サラダにしたのは、本っ当に正解だよな。
フレンの必殺料理が出ない。
きっと、出ない。
でも、何か不安が過ぎるのはどうしてだ?
「…フレン、手伝ってやろうか?」
「大丈夫だよ。ユーリ。ただのサラダだしね」
そのサラダですら不安になるから、言ってるんだが…。
「それじゃ、僕が手伝うよっ!!」
ナイスだ、カロルっ!!
「え?でも、カロルは朝も作ってくれただろ?今は、休んでくれ。気持ちだけ貰っておくよ」
ニッコリ笑ったフレンに、カロルは「あ、うん。ありがとう」とすごすごと帰ってきてしまった。
なんだろう、このデジャヴ…。
「…カロル、ここは覚悟を決めよう」
「…そうだね…」
オレとカロルは皆が待つ場所へ、肩を落としながら向かうのだった。
「お帰りー、どうやら失敗したようね」
「…うん。あっさり笑顔で断られちゃった…」
「うむぅ。やはり、フレンのあの笑顔は怖いのじゃ」
「…だな。あれは反則だ」
「美味しい時は本当に美味しいんですけど…」
「不味い時は死ぬほど不味いのよね…」
「せめて、誰かと一緒に作ってくれると有難いのだけれど…」
円形に座りながら、オレ達はますます肩を落とした。
「お待たせっ、出来たよっ」
そうだ。サラダだからなっ。
フレンが出来た料理を一人一人に配っていく。
目の前に瑞々しい、野菜がとても綺麗に盛られていた。
「ほんっとに、お前は器用だよな」
「そうかな?」
「うん。凄く、美味しそう…」
「だから、よりいっそう恐怖が募る、と言うか…何と言うか…」
全員が配られた目の前にあるサラダをじっと見つめ、呟いた。
ここは、腹をくくって…。
「そ、それじゃ、いただきまーすっ!!」
カロルの覚悟を受け、声を合わせ一口含んだ。
…そして。
口の中に爽やかなレモンの風味と野菜の絶妙な味が広がった。
「美味し〜いっ♪」
「はい。とっても美味しいです」
「ただの葉っぱなのに美味しいわ」
「えぇ、凄く美味しいわ」
「今日のはレシピ通りに作ったんじゃな」
「わふっ」
「うむ。サッパリしていて、それでいて舌が、痺れ、て……」
「…っ!?」
…しまった。
完全な油断だった…。
最初レモンの酸味で舌が痺れているのかと思っていたが…、体全体が痺れてきた。
「あ、あれ?みんな、どうしたんだい?」
慌てたようにフレンが声をかけるが、それに反応出来る奴は一人もいない。
「も、もう、ダメ…」
「あ、アタシ、も…」
カロルから順に倒れて意識を失っていく。
「フ、レン、お前、なに、いれた…?」
「え?新鮮な河豚を細かく切って」
「こんの、馬鹿…が…」
最後まで言えなかったのが悔しい。
オレはそのまま意識を失った。
たかがフレンの作った料理で…。
そして、意識が戻り、目にしたのは天井だった。
見た事のある天井…と言うより見慣れた天井だ。
ここは…オレの部屋だ。
「ユーリ、目が覚めた?」
フレン…?
そう、声を出した筈なのに声が出ない。
何でだ?
視線だけでオレを見下ろすフレンに問いかける。すると、フレンはニッコリ笑い答えた。
「声が出ないのが不思議?それはね、まだユーリが河豚の毒にやられてるからだよ」
何だそれっ!?じゃあ、他の皆もっ!?
「それは大丈夫。皆の毒はちゃんとパナシーアボトルで中和されたよ」
じゃあ、オレのもしろよっ!!
「ダメ」
はっ!?
「ねぇ、ユーリ。…しよ?」
はぁっ!?
「だって、もう何ヶ月もしてない。だから、ね?」
『ね?』じゃねぇよっ!!
と、とにかく逃げるっ!!
声は出なくとも、体が痺れていても、気合と根性で少し位は体を動かす事は出来るはず。
必死に体を動かそうとすると、ちょっとだけ体が持ち上がる。
けど、フレンはそれを見越していたのか、オレを再びベットへと押し付けた。
「逃がさないよ。ユーリ」
フレンの目は立派に獲物を狙う獣の目へと変化していた。
「わざと作った訳じゃないけど、でもこんなチャンスを逃す手はない」
「……っ……ふっ……ぁ、あ…っ」
フレンの唇がオレの痺れが抜け切らない唇に重ねられ、舌と舌が絡まりあう。
そのままオレは不本意ながらもフレンに美味しく頂かれてしまった。
翌日、河豚の毒は中和されたが、別の意味でオレは寝込む事になった…。
そして、二度とフレンの料理は信用しないと改めて心に深く刻み込んだ。