※ 今更ながらやっぱりいいなって思ったんで。
※ 2009WINTERのエステルの料理修業ネタ。
※ でもあの後、その毒料理どうしたのかな〜?とか思って。
※ 妄想したらこうなったと言う…。
※ 特にフレユリっぽくはないww
※ でも、フレンのあの料理をどうにか出来るのってユーリだけかな?
※ って思ったら益々萌え上がってしまったという。
※ パティはいないけど出しちゃった♪
辛いキス〜ユーリ編
『お前かーーーーっ!!』
オレとカロル、リタにおっさん。
一斉に立ち上がり、柿マグロをもぐもぐしているフレンに叫びをぶつけた。
いきなり、飛び上がり叫んだ所為か、フレンは目を白黒させて、ゴビリッと口の中のモノを飲み込んだ。
「い、いきなり、どうしたんだっ?」
「どうしたんだ?、じゃねぇっつーのっ。あー…くそっ。滅茶苦茶なレシピをエステルに教えやがって」
口の中にまだ、アイスとマグロのデスマッチな味が残っている。
他の皆もそうなのか、口の中に残った味を水で流そうと必死だ。
だが、このフレンの料理の恐ろしい所は、水で味を流せない所にある。
一瞬にして脳がその恐怖の味を舌に植え付けてしまうからだ。
これを払拭するには…。
その方法を知ってるのはオレしかいない。…のだが、この材料はハードルがマジで高い。
「…けど、やるしかねぇか」
「ユーリ?」
何が何だか理解出来ていないフレンがオレの顔を覗き込む。
瞳がごめんと言っている。
ほんと、こいつはそうゆう顔すれば何でも許されると思ってるんじゃないだろうな。
そのまま許すのも何か癪で、フレンにデコピンを少し力を入れて、バシッとぶつける。すると「痛っ!?」と驚いたようにオレにぶたれたデコを涙目で摩った。
「だから、いい加減お前の舌が可笑しいって事、自覚しろって言ってんだろ?」
「ご、ごめん…」
「全く…。とにかく、これ、材料勿体ねぇから作り直す」
『えっ!?』
オレの声に反応したのはフレンだけじゃなかった。
それこそ、其処にいた全員がまるで冗談だろって言う様にオレの方を見ている。
「作り直せる、んです?」
おずおずとフレンから直にレシピを貰って作ってしまったエステルが心配そうに聞き返す。
「あんまり、自身はねぇけど、やれるだろ」
「本当ですっ!?」
「おう」
「本当に本当なんですっ!?」
「何だよ。信用ねぇな。んじゃ、エステルも手伝えよ。一緒に作ってみれば学べる事もあるだろ。それに、エステルの持ってる罪悪感も消えるしな」
「は、はいっ!」
本当は持つ必要は全く、一欠けらも無いエステルの罪悪感。
顔にハッキリとごめんなさいって書いてるんだもんな…。
こうゆう顔にオレって弱いよなー。
案外きちんと自己分析出来ている自分に笑えてしまう。
「じゃ、じゃあ、僕も手伝うよ。ユーリ」
「お前は手出し禁止っ!!」
フレンの手伝い宣言はハッキリ却下。
でも…そうだな。
「カロル。お前も手伝ってくれ」
「えっ?う、うんっ」
三人いれば充分だろ。
取りあえず、鍋と包丁と…。
料理に必要な器具を準備する。
そもそも、折角のマグロを生で醤油と食べるならまだしも、牛乳とか柿とか、とにかく組み合わせが悪すぎるだろ。
一回洗って…と。
それじゃ、水が必要か。
「ラピード、悪ぃけど水頼めるか」
「わんっ!」
ラピードの背中にバケツを乗せる。
するとダッシュで走って行った。
腹減ってるだろうに…すまん。
「…おっさん達はどうしよかね」
「決まってるでしょ」
「のじゃ」
キラーンと妖しく光るリタとパティの視線がフレンへと向けられた。
「あら、面白そう。じゃあ、私もそれに参加するわ」
二人の目だけで何かを理解したジュディスがニッコリと秀麗な笑みをフレンへと投げつけた。
何かしら恐怖を感じたのであろうフレンが一歩二歩と後ろへと後退する。
…逃げるのを許したらつまらねぇよな。
「うらっ。逃げんなよ。フレン」
「うわっ!」
ドンっと背中を押してやる。
まさか後ろから押されるとは思わなかったのだろう。
フレンが妖しげに笑う三人の間に前のめりに膝をついた。
さ、てと。
そろそろ、真面目に料理の方に集中するか。
「ユーリ、まず何をすればいいんです?」
「そうだな。エステルは残った材料を持ってきてくれ。カロルは、エステルが作った料理(と言えるのか、コレは?)を持って来てマグロと材料を分けてくれ」
「はいっ!」
「分かったよっ」
とりあえずオレが食って死にかけたアイスとマグロを分ける。
ってか、これってマグロの切り身をアイスに乗せただけだろ…。こんなの料理とは言わない。
「持って来たよー」と楽しそうに笑うカロルの手元をみると、やっぱり基本は切り身を乗せただけらしい。
「ユーリ、残ったのは牛乳と、マグロだけです」
「そっか。サンキュ。んじゃ、そうだな…。まず、鍋に残った牛乳を入れて温めてくれ。カロルは、かまぼことマグロを念の為に水で洗って小さく切る」
「一口位の大きさ?」
「あぁ、それでいい。エステルは牛乳に膜が張らない様に気をつけろよ」
「はいっ」
指示を出しながら、大きく切られたナスを改めて見る。
これも生だ…。そう言えばおっさんもそう言ってたな。……良く口に入れたな…。
おっさんの心意気に一瞬涙が浮かびそうになった。
とにかく、乱切りにされたナスの真ん中に切れ目を入れて、そこにコンビーフを詰める。
…これに入ってるマグロだったら入れても構わないか。
マグロを小さく切って塩コショウで味付けしてコンビーフの中に入れる。
「わんわんっ」
「お、ラピード。助かった。後は出来るまで、あっちでフレン達と待ってろよ」
「わぉん…」
「行きたくないって?まぁ、そう言われると」
ふと、フレン達の方へ視線を動かすと、何やら言い争っている。
「…確かに行き辛そうだな。んじゃ、こっち手伝うか?」
「わんっ!!」
さて、んじゃ続きを。
「ユーリ、牛乳温まりましたよっ」
「おー、んじゃ次はチョコを細かく切って湯煎で溶かす」
「ユーリ、出来たよっ!」
「おー、立派立派。次は米を研いでくれよ。カロル先生」
「うんっ!」
指示を出しながら、着々と料理は作り直されていく。
しかし、何だろうな。
エステルもカロルも滅茶苦茶楽しそうだな。
……ま、こーゆーのも悪くはねぇけどな。
そうして、数40分後。
何とか、見れる形にして、再び皆の前に並べる事が出来た。
「す、すごいわね。青年。あんの料理をここまで…」
「流石ね。ユーリ」
「ありがとよ。所で、なんでフレンは口を押さえてるんだ?」
そう。何故か口を押さえているフレン。目も若干涙目だ。
「ちょっとした実験、かしら?」
「ちょっとした実験よ」
「ちょっとした実験なのじゃ」
……一体何があったのやら。
「でも、本当ユーリの調理は凄いです。次の工程、次の工程ってちゃんと考えて、私達にもきちんと指示してくれてっ」
「色々勉強出来たみたいね」
「はいっ。今度はちゃんと『味見』をして調理しますねっ!」
「えぇ、楽しみにしているわ」
「それじゃ、皆食べようよっ!」
カロルの言葉にフレンを除いた全員が頷き、いただきますと食事を始めた。
「ユーリ、このマグロとかまぼこの炊き込みご飯、超旨なのじゃっ!」
「それはカロルが味付けたんだぜ」
「ほほう。やりおるの。カロル」
「えへへ…。でも、エステルの作った、チョコレートミルクも美味しいよっ」
「ホントホント。チョコレートなのに甘くなくて、苦味が聞いてて大人なおっさんにも丁度いいわよ」
「え?僕のは凄く甘いよ?」
「アタシのも」
「あら?私のは甘さ控えめよ?」
「もしかして、エステル。皆の糖度を変えたの?」
「はい。ユーリが教えてくれた味見ってこうゆう事かな?って」
ほんわかした会話の中、ただ一人相変わらず口を押さえているフレン。
いい加減心配になって来た。
「フレン…?どうした?」
聞いても視線をこちらへ向けるだけで、口元を押さえる手は離れない。
一体あいつらどんな実験やったんだよ。
……仕方ねぇなぁ。
「わり、ちょっと抜けるわ。お前らはそのまま食っててくれよ」
一言そう告げると、フレンの手を引きその場を抜ける。
しばらく歩き、川の近くに来て、漸く引っ張っていた手を離す。
そして、改めてフレンに向き直り、先程と同じ質問をした。
「フレン。どうしたんだよ?」
何も言わず、フレンは手を離し、そして。
「ちょ、ぅ、んんっ!?」
なん、なん、なんだーーーっ!?
この際いきなりされたキスはどうでもいいっ!!
口がヒリヒリするっ!!
フレンが押しこんで絡めてきた舌がとにかく辛いっ!!
「んんっ!んんんーーーっ!!」
はーなーれーろーっ!!
フレンの肩を押すと、逆に抱き締められ、せめてキスから逃れようとすると、今度は頭を押さえつけられる。
正直、キスで頭がぼんやりするなんてありえない位辛い。
あまりの辛さに涙が浮かんでくる。
どうする?
この辛味から逃げるにはどうすればいいっ?
どうすれば……はっ!?
そこに川があるっ!!
この思考は明らかに間違いである事は知っている。
知っているけれど、もうどうにも出来ない所まで限界が迫っていたのだ。
フレンの服をがっしりと掴み、すぐ横に流れる川に落ちた。
バシャンッと凄い水飛沫をあげ、流石に驚いたフレンが唇を離し、二人同時に水面に顔を出した。
「フレンっ!!てめぇ、何しやがるっ!!」
「君こそ。川に落とすなんて酷いじゃないか」
「この位当然だっ!!」
しかも全然辛味が抜けない。
口の中に水を含み、洗い流そうとしてもやはり全然変化なし。
「全然辛味がとれねぇ。お前マジで何考えてんだよ」
「…うぅーん。焼き餅ち…かな?」
「は?」
「だって、なんか、ね」
……。
なんだ。こいつ、結構落ち込んでたんだな。
自分が用意したレシピでオレがいつもお前にしか見せてない料理のレシピを見せたからか?
っとに馬鹿な奴。……でも、こいつのこんな所が可愛いと思ってる地点でオレが一番馬鹿なのかもしれないな。
「オレそのものがお前のものなのに、少し位他の奴に譲れよ」
「嫌だよ。少しも譲りたくない位君の事が好きなんだ」
「フレン……ばーか」
「ユーリ…」
フレンがそっとオレを抱き締める。
そして、落ちて来る唇を目を閉じて受け止めた。そして…。
「んんーーーっ!?」
辛い事忘れてたーーーーっ!!
後悔は先に立つことなく、再びフレンの辛いキスを受け入れ、泣きを見る羽目になったのは、言うまでもない。