ポニテが良いと思うの





滝の街、そして新興都市でもあるヘリオード。
オレ達は今、そこで騎士が密かに隠している事を探ろうとしていた。

「ねっ、ユーリ。さっきキュモキュモって騎士があそこの下へ降りてったよっ!」
「あぁ。分かってる。それからカロル先生。今は隠れてるんだから静かにな」

ばふっと慌てて口を塞ぐ。
ウチのボスは素直だ。
しかし、どうするか…。
あのゴンドラの様なエレベーターみたいな何かに乗って下の抗場に下りるには、どうしてもあの騎士が邪魔だ。
明らかに何かを隠している。
……妖しいだろ。ってか、妖し過ぎる。

「…どうにかして、あの騎士を連れだせないでしょうか?」
「だな」
「無理矢理押し通ってみたらどうかしら?」
「だめダメ駄目っ!!さっきも言ったけど、騎士団に逆らったりしたら僕たちみたいな弱小ギルド、すぐに潰されちゃうよっ!!」
「って、ボスも言ってるしなぁ」
「なら、カロルはどんな手が良いと思うのかしら?」
「えっ?」

「…色仕掛け…とか?」

ジュディの顔をじっとみて答えるカロル先生は、邪な考えなんて一切浮かばないのだろう。
純だな。カロル先生。

「しかし、色仕掛けか。ま、いいか。それで行こう」
「それで?誰がやるのかしら?」

誰ってここに色仕掛けやれるような奴一人しかいないだろ?
皆同じ考えだったらしく、視線は一人に集中された。
しかし、視線を集めた本人は妖しく微笑み小首を傾げるだけだった。
仕方なくオレは口を開こうとした時、ジュディはオレの片手を両手で持ち上げ、更に綺麗に笑った。
けど、何でだ…?
そこはかとなく冷気を感じる。
何かやばい。

「カロル先生でいいんじゃないかっ?」

苦し紛れの一言。
でも、意外とこれがヒットした。

「えっ!?僕っ!?」
「カロル、頑張ってくださいっ!」
「ちょ、ちょっと待って。僕男だからっ!!エステルやりなよっ!!」
「えっ!?わ、私ですかっ!?私は…ちょっと…。あ、ジュディスの方がきっと上手く出来ますよ、ねっ!?」

…おいおいおい。人が折角、ジュディを宥める様に仕向けたとと言うのに、お前ら…。
ほらほらほらっ。ジュディのオレの手を握る手に力が入って来たじゃねぇかっ!

「私がやってもいいのだけれど…。そう。綺麗なお洋服があれば、ね?」
「あ、あぁ。分かった…」

コクコクと必死に頷くと、ジュディの周りに犇めいていたどす黒いオーラは霧散していった。
ジュディスはオレの手を離す事無く、ズルズルと片手で引き摺りながら、オレ達は宿屋に付属している服屋へと向かった。
その服屋は、…見るからに女性物。レディースファッション専門店だった。
礼装から下着、アクセサリーまで何でもござれ…。
しかし、ここにカロルはまだいいとしても、オレが入るのはかなりの勇気が…とか立ち止まる暇など与えてくれる訳も無く、店内に四人で入って行った。
ジロジロとジュディスは一点一点チェックする。
エステルも何だかんだで、自分で服屋に入るのは初めてなんだろう。
楽しげに見て回っている。
…居場所がないオレとカロル。
取りあえず、出入り口付近にあるベンチに二人仲良く腰かけた。

「…こりゃ、時間かかりそうだな」
「だね。どうして、女の子の買い物って長いんだろうね」
「そりゃお前、男のオレ達に理解出来る訳ねぇだろ」
「…だよね」

二人揃って大きな溜息をついた。
どうすっかな〜…。いっそ外に出てクレープとか他の買い出しに行くかな?
そう思ったのだが、そうは問屋が…ジュディスが許さなかった。

「ユーリ、ちょっといいかしら」
「んー?なんだ?」

顔だけそっちを向けると、ジュディスが、黒のフリルがふんだんにあしらわれた膝上丈(だと思われる)の黒を基調としたワンピースと紫を基調としたベーシックなタイトなワンピースを持っていた。

「どっちが似合うかしら?」
「オレに聞くなよ。どっちでも似合うんじゃねぇ?」
「そう?」
「あぁ。黒の方は青い髪に映えてバランスが良いだろうし、紫は何か艶やかに見える」
「…そう。じゃあ、黒にして置きましょうか」

ジュディがまた店内へと消えて行った。
まだまだ、決まりそうにない。
ベンチの背もたれに腕をかけ、どっかりと背中を預けふと横を見るとカロルの目が輝いていた。

「ゆ、ユーリ凄いねっ!」
「は?行き成りどうした?カロル」
「だって、僕はあんな風に女性にアドバイス何て出来ないもんっ!」
「別にアドバイスしたわけじゃねーよ。ただ、見たままを言ったまでだ」

迄なのだが、それでも凄いとはしゃぐカロルの頭をワシワシとかき混ぜた。
しばらく、カロル先生と話をしていると、ようやっと二人が戻って来た。
ジュディスの両手には大きな紙の袋が二つ。エステルも二つ。計四つ。
…一体どんだけ買い込んで来たんだが…。
呆れつつも、二人の荷物を代わりに持ちそのまま、着替える為に宿屋に部屋をとり、二階へと上がった。

部屋へ通されると同時に、二人はテキパキとベットの上にドレスを広げた。

「…ん?黒のワンピースにしたのか?」
「えぇ。似合うと思うの」
「あぁ。ジュディならどんなものも…」
「貴方に」

…は?
い、今なんつった?
き、きっとオレの聞き間違いだろ。きっとそうだ。

「誰に?」
「あ・な・た・に」
「はあぁっ!?」

お、オレぇっ!?

「そして、こっちはカロルに」
「えっ!?僕もっ!?」

オレとカロルの思考に停止命令が発動された。
…いやいやいやっ!止まってる場合じゃねぇっ!!

「待て待て、落ち着け。ジュディっ!どう考えても可笑しいっ!」
「何がおかしいのかしら?」
「おかしいだろっ。オレは男だっ!カロルみたいに誤魔化せる年齢でもねぇっ!」
「僕だって男だから誤魔化せるわけないよっ!!」

オレとカロルの必死な抗議は…。

「…駄目、なんです?」

エステルのうるうるな涙目で敢え無く、お空の彼方へと飛ばされてしまった。
…しかし、オレの声は…こう言っちゃなんだが、男らしい声な方だと自負している。
見た目は…まぁ、誤魔化せない事も無い…事も無い。
正直、認めたくない。
オレにだって男としてのプライドが…。
とは思っていても、エステルのあの純粋な目には敵わず、オレとカロルは泣く泣くその仕入れた衣装を着る羽目になった。
その黒のワンピースは、何故かオレにぴったりだった。まぁ、しいて言うなら腰に少し余裕がある位か?それでも気になる程じゃない。ほんっとに何でだ…。
どうやら、それはカロルも同じだったらしく、二人顔を突き合わせて盛大な溜息をついた。

「ジュディス〜。ユーリの髪型どうします?」
「そうねぇ。ポニーテールでどうかしら」
「あ、いいと思いますっ」

もう、好きにしてくれ。
そう言うとホントに好きにされた…。
化粧をきっちりとされ、髪は一つに結いあげられ、腕には魔導器の代わりに細い銀の蝶をモチーフにしたブレスレット。
膝上丈とは言えど、ジュディで比べていた為、実際オレが履いたらほとんど太腿位のミニスカートと変わらないワンピースに合わせる様に黒の二ーソックス。
止めで靴はハイヒール。
……オレ、今日で死ねるかもしれない…。

「凄いですっ!ユーリ、美人ですっ!」
「あー…、ありがとよ」
「さ、行きましょうか」
「…おー」

カロルからも全く精気の無い声が聞こえた。
ピンクのお子様用ワンピースにドデカイこれまたピンクのリボン。
そして、いつもオールバックにしている前髪を降ろしていた。
…しかし、あれは見せパンの一種か?
どうどうと見せているかぼちゃパンツ。
やっぱり互いに顔を突き合わせて盛大な溜息をつくのであった。

何はともあれ、例の騎士の前に来た。
ここまで来たら腹をくくるしかない。
…無理矢理括らされたとも言うが…。

「けどさ。ユーリホント美人だよね」
「あぁ?」
「通り過ぎる人皆、ユーリにぽーっとしてたよ?」
「気のせいだろ。男が女装してんだから」
「…そうかなぁ?」

首を捻るカロルに絶対そうだと言い含め、オレとカロルは二手に分かれた。
カロルは左手側の騎士。オレは右手側の騎士だ。
要は誑かして、あの結界魔導器裏に連れ込めばいい。
そしたら脅してでも、倒してでもいい訳だしな。

右手の騎士に近寄り、ニッコリと笑いかける。

「な、何の用だっ!?」

…声を出すとばれてしまう。
だから、コクンと頷く。
よくよく考えてみれば、オレって身長180ある上に、ヒール履いて190近くなってる訳だよな?
それでも、今オレはこの男を見上げてる。
っつー事は、こいつ200あるんじゃねぇ?
昔いた騎士団の先輩のエルヴィンってあいつ並みだな。
じっと、その騎士を見つめる。

「お、おい…?」

オレは、ゆっくりと手を結界魔導器の方を指さす。

「あ、あちらに何かあるのか?だが、私は持ち場を離れる訳にはっ」

…面倒だな…。
じゃあ、あっちならどうだ?
一旦手を降ろし、そっともう一度指をさす。宿屋の方向だ。

「な、な、なっ!?」

ちっ…。これでも動かねぇか…。
けど、どうやらもう一押しみてぇだな。よし。
ここは、覚悟を決めて。
騎士の胸にぴったりとくっつき、しな垂れかかる様に上目づかいで…。
高い声は苦手だが、出来る限り高い声で…。

「いや、か…?」

落ちたっ!
確信だった。何せ、騎士が必死に顔を横に振っていた。
何とか虜にした騎士の手をとり、約束通り結界魔導器の裏側へ入るとドスっと手刀が騎士の首に決まった。
はぁ〜…。

「これでいいんだろ、ジュディ…」

疲れ切り方をコキコキならしながら、手刀を喰らわせたであろうジュディに振り向くと…。

「ユーリ…。君は、何をやってるんだい?」
「ふ、フレンっ!?お、おま、何でここにっ!?」

ジュディではなく、怒れるフレンが仁王立ちしていた。
何でっ!?ジュディ達はっ!?
と視線を急いで巡らすと、あいつ等は既に非難済みだった。
ず、ずりぃぞっ!!

「ユーリ。僕は何をやっていたかと聞いているんだが?」
「そ、それはだな。そのー…」
「こんな風に男を誘って…。そんな可愛い姿でっ」
「あっ!?おい、離、せっ!!」

フレンの腕がオレを逃がすまいと腰に腕を回し、ぎゅっと抱き寄せる。
鼻が触れ合いそうな位近くに顔がある。

「他人に食べられる位なら、僕がっ!」
「んんッ!?」

唇に…って、ぎゃあああああっ!?
これって、これってもしかしなくてもキスかっ!?
ちょっと待てぇっ!?
確かにファーストキスは終わってるし、男とするキスなんて数に入らないかもしれねぇが、だからって幼馴染な親友とキスしてぇなんて思う訳ねぇだろうがっ!!
ちょっ!!やめろっ!!
唇舐めるなっ!!舌をいれるなっ!絡めるなっ!!
せめてもの抵抗に、肩を力一杯押してみるが、考えてみれば真剣な力勝負。
フレンに勝てたためしなんかない。
案の定、逆に掴まれて、結界魔導器に強く押し付けられ、フレンの手がオレの指の隙間に絡まる様に繋がれる。

「その髪型、可愛い…。その項も…首筋が見えて…誘ってるとしか、思えないっ!」

何度も唇が重ねられ…1分…2分…3分経過。
流石に抵抗する気力も、空気も無くなりオレの抵抗が少なくなった隙を狙ってフレンの膝がオレの足の間、スカートの中に…ってやべぇっ!?
マジで焦り始めたその時。

ゴンッ。
―――バタッ。

フレンがずるりと倒れた。
頭の上には大きなタンコブが…。

「…わぅん?」
「ラピードっ。助かったっ。流石、オレの相棒っ!!」

ラピードがどうやらフレンの上に自分の武器を落としたらしい。
意識を失ったフレンをこれ幸いと放置して急ぎその場を離れ、走りだす。
無意識にさっきまで触れ合っていた唇を手の甲で擦る。
…気持ち良かった、とか…嬉しいとか、き、気の所為だっ!!気の所為に決まってるっ!!
全力で走り、良い感じに傍観していたジュディとエステルと合流して、さっさと魔の服を脱ぎ去ると、爆発を起こした騎士団支部へとカロル先生に騎士顔防具を嵌めさせて中へと突入したのだった。

その後、色々あって、ヘリオードの抗場の方へ行ってイエガーと対峙し、フレンが追って来たがオレは言うまでもなく、全力でフレンから逃走した…。

















アトガキ?


ひごモル様からのリクエストでした(^◇^)
【女装イベントをユーリがやったらどんな風になるのか】
…こんなんなりました(`・ω・´)キリッ
女装イベントってこのイベントの事…ですよね?ヾ(・ω・`;)ノぁゎゎ
実際何でユーリのバージョン無かったんでしょうね〜?
勿体ない…。
配膳イベントも無かったし…勿体ない。
…さて、楽しんでいただければ嬉しいです。
リクエスト有難うございましたっ!!
次のリクエストまでお時間下さい(*^_^*)