金のユーリ?銀のユーリ?それとも…?
多分…昔。ある所に二人の青年がいました。
二人は、それはもう仲の良い恋人同士でありました。男同士ですが…。
そこはそれ。愛し合っている二人には全く関係ありません。
今は帝国の皇帝のヨーデル様より賜った任を果たす為、森の中へ魔物退治に出ておりました。
「はぁっ…はぁっ…。フレンっ、まだ追いかけて来てるかっ!?」
「あ、あぁっ。まだ、走る音が聞こえるっ」
「マジかよっ!!いい加減しつこいぜっ!!」
いくら薙ぎ払っても、すぐに復活するモンスター。黒い髪の青年ユーリは金の髪の青年フレンと逃げる事にしました。
けれど、モンスターは後を追ってきます。二人は必死に暗い森の中を逃げました。
「おいっ、フレンっ!!」
「なんだっ!?」
「あそこ、泉だっ!!」
「何だってっ!?」
泉に追い詰められてしまった二人。しかし、嬉しい事にそのモンスターはお水が苦手なのです。二人は泉に逃げ込む事で何とか九死に一生を得ました。
顔を見合わせて助かった事を喜びました。
「はぁ…。助かったぜ…」
「そうだね…。流石に二人だけであのギガント級のモンスターは辛いものがある」
「だな。マジで死ぬかと思った」
「大丈夫。それだけは僕が意地でも阻止するよ」
「フレン…」
ユーリが顔を真っ赤にして恋人に抱き付こうとしたら、
「うぁっ!?」
「ユーリっ!?」
―――ボッチャン。
足を滑らせユーリが泉の中へと落ちてしまいました。
「ユーリっ!!」
フレンは慌てて泉に近寄り中を覗きました。すると泉の中心が光り一人の少年が姿を現しました。大きなバックを持った少年です。
「えーっと、始めまして。フレン、さんですか?」
「あ、あぁ…。君は?」
「泉の精(ブレイブヴェスペリア)のカロルって言います」
礼儀正しいカロルにフレンも礼儀にのっとり礼をします。そして、フレンは尋ねました。
「カロル、今この泉に黒髪の男が落ちなかったかいっ!?」
「あ、うん。ボクその事で来たんだ」
「その事?」
「実はここの泉は、色んな世界に繋がってるんだ」
「そうなのかい?」
「うん。それで、フレンが探しているユーリはどのユーリなの?」
「どのユーリって?」
「今、映像を流すから、ちょっと待ってね?」
カロルは鞄からカルロウXを取り出すと、泉に三人のユーリの立体映像を作り出しました。
見た目からして、ユーリの姿は違いました。
「え?カロル。これは…?」
「まずは、『下町時代』の『ユーリ』ね」
カロルが指差したのは、小さい幼い時のユーリでした。
「で、こっちが『騎士団時代』の『ユーリ』で」
次に指差したのは、騎士の服を着た騎士団時代のユーリでした。
「最後が『ギルド所属』の『ユーリ』だよ」
最後に指差したのは、漆黒の服を着た刀を持ったユーリでした。
フレンは悩みました。
(ちょっと、待ってくれっ!どれもユーリじゃないかっ。そもそも、こういう時の質問は、『貴方が落としたのは金の斧ですか?』『いいえ。違います』『では、こちらの銀の斧ですか?』『それも違います』『ならば、この普通の斧ですか?』『はい。それです』『貴方はとても正直者ですね。正直者の貴方には全て差し上げましょう』…って事じゃないのかっ!?なのに、これはどれもユーリだっ。それに、全部見た事がある…。下町時代のユーリは本当に懐かしい。僕とユーリがまだ一緒に遊んでいた頃の…。僕はあの時彼に恋したんだ。騎士団時代のユーリは、喧嘩ばっかりだったけど…でも、久しぶりにあった彼は凄く綺麗で、見惚れてばかりいた…。そんな時の彼だ。それで、最後のギルド所属のユーリは、今のユーリだ。僕の恋人で、最愛の人で…。一体どれを選べばっ!?だって、全てユーリなんだぞっ!?…そうだっ!!でも、ようするに自分の今失ったユーリを言えばいいんだっ!!ならばっ!!)
フレンの考えは決まったようです。
「僕が探しているユーリは、その『ギルド所属』の『ユーリ』だっ!!」
「えっ!?」
カロルはとても驚きました。
「フレンでも間違える事あるんだね」
「えっ!?」
カロルの言葉に今度はフレンが驚きました。
「ここにフレンの探しているユーリはいないよ?」
「まさかっ?だって、そこにいるのはっ!?」
「うん。そこにいるのは、『ギルド所属のユーリ』で『凛々の明星のユーリ』じゃないから」
「えぇっ!?」
「う〜ん。残念だけど掟通り、正直者ではないフレンからユーリは没収ね」
「嘘だろっ!?」
「それじゃ、バイバ〜イっ」
ピカピカ光を放つと、カロルの姿は消えてしまいました。
そして、突如起こった突風にフレンは飛ばされ、強制的に帝都へ飛ばされてしまいましたとさ。
めでたし、めでたし。
全然めでたくないっ!!(フレン談)



