金のユーリ?銀のユーリ?それとも…?(再)





多分…昔。ある所に焦った青年がいました。
金色の髪の青年フレンは、自分の最愛の恋人を取り戻す為に、失った場所、森の中の泉に立っていました。

「カロルっ!!いないのかっ!?カロルっ!!」

青年は泉の精にとにかく呼びかけます。

「カロルっ!!頼むっ!!ユーリを返してくれっ!!」

泉は一向に変化がありません。

「カロルっ!!」

すると、泉に小さな変化が訪れました。紫色の光を放ち、ざんばら髪を一つに結い上げたおじさんが現れました。

「もー、さっきから煩いわねー。一体なんなのよー」
「…あ、なたは?」
「あら?フレンちゃんじゃないの。どしたのー?」
「え?なんで、僕の名前を…?」
「そら、あーた。ユーリ青年が、いつもフレンちゃんの事話してるからねー。おっさん、すっかり事情通よぉ?」
「そうだっ。ユーリっ。すみませんっ。えーっと?」
「おっさんの名前?レイヴンでいいわよ〜?」
「レイヴンさんっ。カロルはっ?」

ユーリを取り戻そうとフレンは必死でした。

「カロル?あぁ、少年ね。少年なら今出張中よ。新しい依頼が来たんだと」
「そ、そんな…。それじゃあ、ユーリは…」
「あら?なぁに?ユーリを取り返しに来たんだ?」
「は、はい…」
「だったら、そういえばいいのに。おっさんがカロルの変わりに呼んであげるわよ?」
「本当ですかっ!?」
「おっさんに任せなさいっ」

レイヴンは勢い良く泉に潜って行きました。
しばらくして、小脇に3人。ユーリを抱えて戻ってきました。

『おっさん、放せってっ!!』

音がサラウンドで聞こえてきます。ギャースギャースと騒ぐユーリの姿は皆一緒でした。

「んで?フレンちゃん。どれがフレンちゃんのお探しの青年?」

レイヴンがフレンに尋ねました。
フレンは悩みました。

(また、この質問かっ!?ってゆーか、どうしてまた三択なんだっ!?しかも違いが全然わからないっ!!どうすれば…。そうだっ!!)

フレンは右手を挙手しました。

「はい。フレン君」
「質問してもよろしいですかっ?」
「答えられる事なら構わないわよ?」
「3人の違いを教えてくださいっ」

レイヴンは深く頷きました。

「一人目は、『フレンに優しいユーリ』」
『大丈夫か?フレン。悪かったな、いつも心配させて…。フレン、迎えに来てくれてサンキュな』

一人目のユーリが伏せ目がちにフレンを見つめました。

「二人目は、『フレンに厳しいユーリ』」
『フレン。オレが分からねぇわけ、ないよな?オレが本物だってお前なら分かるよな?』

二人目のユーリが腕を組み、フレンを睨みつけました。

「三人目は、『フレンに親しいユーリ』」
『よぉ。フレン。ようやく迎えに来たんだな。おっせーよ。お前。早く帰ろうぜ』

三人目のユーリが片手をあげ嬉しそうにフレンに微笑みました。
レイヴンの説明とユーリ達の言葉を聞き、フレンは更に悩みました。

(正直、ますます分からなくなった…。ユーリはいつも優しくなんてないけど…でも。あのユーリは凄く可愛い。誘っているとしか思えないよっ。二人目のユーリは、一番ユーリっぽいけど…でも。三人目のユーリの微笑だって本物と同じだっ!あぁっ。分からないっ!!…そう言えば、以前カロルの時はこの中に本物はいなかったっ!!とするともしかして今回もっ!?そうだよ。僕があの後調べた本によると、本来泉の精は金の斧と銀の斧を最初持っていて、そこには木こりの斧は無くもう一度探しに行ったはず。きっと、この中に僕の捜し求めるユーリはいないんだっ!!)

フレンは答えを出しました。

「この中に僕の探すユーリはいませんっ!!」
「あら?そうなの?」
「はいっ!!」

フレンは自信満々です。

「だってさー。青年」
「フレンの馬鹿野朗っ!!」
「えっ!?」

二人目のユーリは目を吊り上げて怒りました。

「ごめんね〜。掟にのっとらなきゃオッサンも怒られるから、青年没収ね」
「また帰れないのかよっ」

紫の光と一緒に皆泉の中に消えて行きました。
そして、やっぱり突然起こった突風にフレンは飛ばされ帝都に強制帰還させられましたとさ。
めでたし、めでたし。

だから、全然めでたくないっ!!(フレン談)