『フレン』のユーリ○○日記
【1】
【○月×日 金曜日】
僕は、認識した。
何を、と問われれば、一言。
『僕がユーリを好き』
だと言う事。
ユーリが誰かと言えば、隣に住む幼馴染の男。
黒いサラサラの髪に、髪より黒く輝いている瞳。細い腰に、白い肌。
誰がどうみても、女性にしか見えない。それをコンプレックスにしている、低音が腰にクる親友。
そんな親友を。
僕は好きだと認識した。
だから、ユーリを呼び出した。
そして、君が好きだと伝えたのがたった今。
僕とユーリが通っている高校の裏にある、大きな木の下で告白をした。
言うとユーリはゆっくりと口を開いた。
「……オレも、好きだ」
顔を逸らしながらぼそりと呟くユーリのその頬は真っ赤に染まっていた。
「ユーリ、ありがとう。…嬉しいよ」
ぎゅっと抱きしめると、ユーリもそっと手を背に回してくれた。
そのまま互いに目を閉じ、唇を触れ合わせる。
そして、どちらともなく離れ、また抱き締める。
こうして、僕とユーリは恋人同士になった。
手を繋いで教室に戻る。
そこで何故かいたクラスメート達に、やっぱりと頷かれた。
やっぱりって何でだろう?
意味が分かってるユーリは顔を真っ赤にして、率先して揄っていたクラスメートに殴りかかっていた。
そんなユーリを止めて、引き摺るように教室を出て、夕焼け空を眺めながら二人帰路についた。
僕とユーリはさっきも言った様に家は隣同士である。
だから、帰り道も一緒。
けど、折角恋人同士になったんだからと僕達はデートして帰る事に決めた。
何時も乗る電車で一つ前の駅で降りて、街に出る。
バッティングセンターに行って、はしゃぐユーリを可愛いと思いながら、二人で勝負して僕が勝つ。
悔しがるユーリにクレープを買って機嫌を取る。
そんなこんなで男同士だと言う事をすっかり忘れデートを楽しみ、家へと辿り着くのだった。
ユーリと別れ、部屋に入ると、お帰りと母が出迎えた。
それにただいまと答えると、部屋へと戻った。
…?
どうやら、僕の兄は帰って来てないらしい。
まぁ、丁度いい。
今いられても、こんなにやけきった顔を見せるだけだ。
部屋に鞄を置き、制服を脱ぎ室内着に着替え、皺にならないようにハンガーに制服をかけると部屋を出た。
あ、そうだ。携帯だけは持っていかないと。制服の胸ポケットから携帯を取り出す。すると同時に着信音がなった。
慌てて携帯を開くと、ユーリのメールを受信していた。メールを開封すると。
『今日は楽しかった。また、デートしようぜ。それから…これから、よろしくな』
これからよろしくなって言葉が嬉しくて、すぐにメールを返信する。
『僕も楽しかった。今度は違う所に行こうか。…それと、うん。これからも、よろしく』
送信したのを確認してから、僕はゆっくりと携帯を閉じ、ご飯を食べる為に居間へと向かった。
【○月▽日 土曜日】
僕は、認識した。
何を、と問われれば、一言。
『僕がユーリを好き』
だと言う事。
ユーリが誰かと言えば、隣に住む幼馴染の男。
黒いサラサラの髪に、髪より黒く輝いている瞳。細い腰に、白い肌。
誰がどうみても、女性にしか見えない。それをコンプレックスにしている、低音が腰にクる親友。
そんな親友を。
僕は好きだと認識した。
だから、ユーリを呼び出した。
家の近所の公園。
桜の花が咲き乱れる公園に、ユーリは黒のパーカーを着て、ジーパンを履いて現れた。
そんなユーリに告白をすると。
「ん?昨日聞いたぜ?」
「…え?」
「そ、それに、ちゃんとオレも…答えただろ」
かぁっと顔を赤くするユーリは可愛いけれど。
ちょっと待ってくれ。
昨日、僕はユーリとは会ってない。
そもそも、会える筈がない。だって『僕』はユーリとは学校が違う。だから下校時間が違うからこうして休日じゃないと会えない。…となると。
「…フレン、か」
「ん?フレン、何か言ったか?」
「…いや。それよりユーリ。君、初めてキスしたのは…僕?」
ユーリはきょろきょろとあたりを見回して、小さく頷く。
…何て事だ…。
ユーリのファーストキスを、あいつにとられるなんて…。
何か、…ムカつく。
ぐいっとユーリを抱き寄せ、驚く暇すら与えず後頭部に手を回して、無理矢理唇を重ねた。
「んっ!?」
最初驚いてはいたものの、ユーリはそっと静かに僕の唇を受け入れた。
それが、何か、また腹が立って、ユーリの唇を割る様に舌を中に押し込む。
「んんっ」
ユーリの舌を絡めとり、口の中を蹂躙する。
胸をどんどんと叩き顔を真っ赤にするユーリに漸く胸のイライラが収まり、ユーリを解放した。
「ユーリ、僕ともデート、しよう?」
「えっ!?あ、おいっ、フレンっ!?」
手を引き、ユーリと一緒にデートを楽しんだ。バッティングセンターに行き、勝負して、勝って、拗ねるユーリにクレープを買う。
夕方までデートを楽しんで、帰宅する。
家には父親がいて、ビールを飲んで休みを満喫していた。
そう言えば、母さんは弟と一緒に買い物に行くって言ってたっけ?
「おい、フレン。一緒に飲もうぜ」
「…父さん。僕はまだ未成年だから無理だよ。でも、ジュースでいいなら付き合うよ」
部屋に戻ろうとする前に、父親に呼び止められ、結局父親の飲みに付き合う事になる。
しばらくして、ボトムのポケットに入っていた携帯が音を鳴らす。
なんだろうと思って携帯を開くと、メールが入っていた。ユーリから?
早速メールを開封すると。
『今日も楽しかったけど、お前昨日違う場所に行くって言ってなかったか?』
…そんな事言った覚えは無いけれど、違う意味で覚えがあるから。
『ごめんね。じゃあ、次は違う所にするから。…愛してるよ』
送信すると、しばらくして、返信がくる。
『オレも。…んじゃ、お休み。明日は用事あっから会えねーけど、明後日、な』
ユーリの変身を読み、頬が緩む。
僕はそのメールをしっかり保存して、改めて父親の飲みに付き合う事にした。

