『フレン』のユーリ○○日記  





【2】



【○月○日 日曜日】



両親がユーリの両親と一緒に出かけた。
今日から一週間。
ユーリが僕の家に泊まりに来る事になった。

…だから、ここいらではっきりしておかなければならない。

「フレン」
「…何だい?兄さん」

弟のこの顔を見ると、僕の要件は理解しているらしい。
リビングのテレビに目を向けていた弟が僕を見た。
僕とそっくりの外見を持った、親にはクローンと言われた双子の僕の弟。
金髪、碧眼の、そして、名前まで同じな弟を、ジッと見ていると弟も自分をみた。

「…フレン。君もユーリの事が好きなんだろう?」
「…あぁ。好きだよ。そう言う君だってそうなんだろう?」
「うん」

弟が座っている目の前のソファに僕も腰かける。
弟の目は真剣だった。勿論、僕も真剣だった。
だって、ここで一歩間違うとユーリを取られてしまう。
…だけど、一つ問題がある。

「昨日、僕、ユーリに告白したんだ」
「え?」
「そうしたら、やっぱりと言うか何と言うか…区別ついてなかったよ」
「あぁ…。やっぱり」

互いに胸の前に腕を組み、首を前に落とした。
ここでも動きがユニゾンしてしまうのは双子だから仕方ない。

「でも、どうして分かったんだい?」
「告白した時に、昨日も聞いたと言っていたんだ」
「そうか…。でも、仕方ないのかもしれない」
「確かに。僕は休日に何時も誘っていたし」
「僕は学校で何時も一緒で、それ以外の時はユーリの前に現れなかったから…」
「上手い事交互に会ってたよね…」
「うん。それに、初めて会った時、僕いなかったからね」

だから、簡単に言うなれば、ユーリは『僕と弟が一人の人間』だと思っている。
これだけ長い事一緒にいて気付いていないってのは、どうなんだろう…。
しかし、それも仕方ないと言えば、仕方ない。
…仕方ないんだけど…納得がいかない。

「結局ユーリはどっちが好きなんだ?」
「…うん」
「メール、してみようか」
「だね」

互いに携帯を取り出し、ほぼ同時にメールを打ち、送信する。
因みに、僕と弟は携帯の機種が違う。契約している会社も違う。
だからメールアドレスが違うのだが…。
要するにこう言う事だ。

whiteknight-sifo@dokemo.co.jp
whiteknight-sifo@sohetobank.co.jp

と言う感じで。上は知らぬうちに全く一緒で登録してしまっていた。
勿論気付いた地点で、互いに変えたんだが結局同じ事になってしまったから、もう諦めた。
そして、ユーリはと言うと。
しばらくして、二つの携帯に同時にメールが返って来た。
その文章はと言うと…。

『…オレは、お前の生徒会長の姿も、休日の無邪気な姿も好きだぜ。…書かせんなよ。こんな事。だいたいお前いい加減携帯一つにしろよ。メアド二つあると面倒くせぇ』

だった。
【生徒会長の姿】=【弟】
【休日の無邪気な姿】=【僕】
って事は、どっちも好きだと言われた様なもので…。
弟と顔を見合わせて溜息をついた。

「…どうしたら」
「いいんだろうな…」
「兄さんは、ユーリを諦めれる?」
「…無理に決まってる」
「僕もだ」

解決方法はないんだろうか…。

「…因みにフレンは、ユーリを抱きたいのか?」
「少なくとも抱かれたくはない」
「…そこまで一緒か」

どうしようもない。
そして、どうしたらいい?
結局究極案が二人の間に生まれた。

「…ユーリがどっちも好きだと言うのなら」
「ユーリに僕達二人とも受け入れて貰おう」

そう。
きっとユーリにとってかなりハタ迷惑な結果だろうけど。
でも、これしか案がない。
だって、僕もフレンもユーリを諦めるなんて出来ないんだから。

「ユーリが来るの何時だっけ?」
「今日の18時に、お泊まり道具もってくるよ」
「そうか。じゃあ『作戦』考えようか」
「うん。とりあえず、どっちがユーリを先に抱く?」
「…素直に言って良いかい?」
「あぁ。勿論」
「僕が先に抱きたい」
「…僕もだ。ユーリの中に誰より先に入りたい」

またしても、沈黙。
けど、たった今僕達二人を受け入れて貰うと決めたんだ。
だったら僕達も共有する覚悟を決めないと。
フレンもそう思ったんだろう。

『じゃあ…』

僕とフレンの声が同時に重なった。
きっと考えている事も一緒だろう。
フレンと目線を合わせると、あっちもこくりと頷いた。

そして、互いに話し合って、話しあって…。

18時。
ユーリは鞄一つもって、現れた。
僕は部屋の中で待機。
フレンはユーリを連れて、客室へと案内。

ユーリが、シ―フォ家に足を踏み入れた、そこから僕達の作戦が始まった。そして、ユーリはそれを、知らない…。