光と影の導く先へ。
―――ガサッ。
山の奥深く。
そこは誰も知ることのない、動物達が静かに暮らしている場所。
そんな山の中を一人の女性が歩き続けていた。
一心不乱に歩き続けていた彼女が、ふと足を止め木々の間から空を見上げた。
青く澄んだ空。漸く訪れた誰もが望んでいた平和。ずっと求めていたもの。でも…。彼女には足りないものがある。それをずっと探し求めこんな山の中まで来た。
だが、こんなに探していても見つからない。この山も外れなのだろうか…。もしかして、もう…。何度も最悪な考えが浮かんではそれを振り払うように頭を振る。そして、気分をもう一度立て直す為、再度空を眺めていると白い何かが立ち昇っていた。雲でも、霧でもないそれは…この先に在るであろう山小屋の煙突からの煙。
それは、彼女が探し求めていたものに他ならなかった。
「やっと…やっと見つけましたっ」
漸く辿り着いた…。
この道のりは長く辛い道のりだったけれど…けれど、そんなことはもうどうでもいい。
彼女にとって、それはもう些細なこと。
「やっと、会えるっ」
急く気持ちに呼応するように足が勝手に走り出す。
その先に待っている人達を…笑顔を取り戻すために。
数年の間にすっかり伸びてしまった桃色の髪を靡かせ、エステリーゼは感情の急くままに駆け抜けた。

