※ この話は以前書いた最優先事項の続き物です(^◇^)
※ でも、これだけでも読めます。
※ ……多分、きっと(;一_一)
※ ユーリ女体化話です。苦手な人は回れ右。
※ カロエス、レイリタ要素があります。
輝鏡花、暗鏡花
【1】
帝都ザーフィアスの市民街の一角。
ここに暮らし始めて、結構な日々が過ぎた。
何度も言うようだが、僕は今凄い幸せだ。
何故って、僕の何よりも大事で愛おしい奥さんと愛娘、更にもう少しで産まれるもう一人の子供。
僕の宝物がここに全て揃っている。
今日も、無事仕事を終え、僕の宝物たちが待つ家へと帰宅した。
「ただいま」と玄関のドアを開けると、何時もの様に、見た目僕中身ユーリなハルと見た目ユーリ中身僕のルリが元気よく「おかえりーっ!!」と飛び込んで来た。
それを両腕で受け止めると、二人を抱き上げ居間へ向かう。
その手前あたりで話声が聞こえた。
「この声は…?」
「カロルお兄ちゃんとレイヴンが来てるよ」
「あー、ハル。駄目だよ。レイヴンさん、だよ?」
「だって、母さんがレイヴンでいいって言ってたよ?ね?父さん」
「…うぅ〜ん…。レイヴンさん自体本名じゃないから良いのかもしれないけれど」
でも、教育として、どうなんだろう…?
素直にいいとも、悪いとも言えないこの状況。
それでも、こうやって僕の腕の中で二人が真剣に考えているのをみて、大きくなったなぁと違う事が頭を過る。
そのまま、居間へ入るとテーブルを囲み、カロルとレイヴンさん、そしてユーリが仲良く談笑していた。
ユーリが僕に気がつくと、柔らかく微笑みお帰りと言ってくれる。僕はただいまと答えるとユーリはまた嬉しげに笑った。
「フレン、お帰りー」
「カロル、いらっしゃい。良く来たね」
「うん。ちょっとフレンに相談があって」
「?、僕に?」
「うん。レイヴンじゃあてにならないし…」
「あらー、少年酷いわー」
「って事らしいから、フレン聞いてやってくれよ。オレは飯作っからさ」
「おろ?ユーリちゃん、おっさん達にも御馳走してくれんのー?」
「あぁ。ってか、元々そんつもりでこの時間に来たんだろ。今日はコロッケにでもすっかな」
ユーリがソファを立ち上がりキッチンへと歩いて行くのを娘二人が僕の腕から降り身重な体のユーリ支えながら歩いて行った。
残されたのは僕等男三人。
僕はカロルの向かい。ユーリがさっきまで座っていたソファに座るとそれで?とカロルに問い掛けた。
「何が聞きたいのかな?」
「…その、ね。僕の、と、友達の話なんだけど」
「うん」
「彼女と喧嘩、しちゃったらしくて。その喧嘩した理由ってのが、身分の差って奴でさ」
「身分の差?」
「彼女は立派な貴族の子で、友達はしがないギルドの人間。どう考えても釣り合わなくて、それを伝えたら彼女が怒っちゃって…」
「…成程。それで?」
「…そう言う時ってどうやって仲直りしたらいいのかな」
……友達の事って言っているけれど、どう考えてもこれはカロル自身の話のようだ。
そう言えば、ユーリが言っていた。
エステリーゼ様とカロルが付き合い始めたって。
それ聞いてユーリはしみじみとしていたけれど、成程。今その気持ちが分かった気がする。
「…その友達は、その子の事が嫌いなのかい?」
「そんな訳ないよっ!!嫌いだったらこんなに悩まないしっ!!」
「だったら、その気持ちを素直に伝えたらどうかな?」
「え…?」
「好きだって。例え貴族とギルドの相容れない存在であっても、君の事が好きなんだって。素直に」
「そ、それは…」
「うぅ〜ん。フレンちゃん、それはちょっとハードル高いんじゃなぁい?」
ずっと僕達の会話を傍観していたレイヴンさんが僕に待ったをかけた。
「それが言えたら少年だって今ここで悩んでないでしょうよ」
「でも…、そこで自分の心をはっきり言えないようなら、それこそ壁のある恋愛なんて無理です。自分の本当の気持ちも伝えずにただ相手の為だと自分に言い聞かせていると絶対に後悔する。…僕が、そうだったように」
「フレン…?」
僕は静かに瞳を閉じぐっと手を握り締めた。その行動に不安を覚えたカロルが僕の名を静かに呼ぶ。
だが、それに反してレイヴンさんは随分と大人気がなかった。
「なになに?もしかして、ユーリちゃんとそんなシリアスな時期があったのっ?フレンちゃんとユーリちゃんの馴れ初めっ?それ、おっさん超興味あるーっ」
「ぼ、僕も聞いてみたいっ!!」
「……そんな楽しい話じゃないですけど、それでも良ければ」
二人の食い付きぶりに若干苦笑いを浮かべながらも僕は少しずつ語り始めた。
皆と旅をしていた時の僕とユーリの馴れ初めを…。
※※※
その日。僕は月明かりに導かれコゴール砂漠の中を歩いていた。
少し、頭を整理したいからかもしれない。
勿論、ここは砂漠な訳で僕も一人しかいないから、そんな街を遠く離れる訳にはいかなかったけど。
でも、どうしても一人考えたい事があった。
『選ぶんじゃねぇ。…もう、選んだんだよ』
ユーリの決意の声がただ頭の中をぐるぐると占拠する。
…ラゴウがヘリオードで発見された時、あの太刀筋を見て直ぐに誰がラゴウを殺したのか理解した。
そして、ユーリはギルドで生きる道を選び、キュモールを殺した。
…僕は全然理解出来ていなかった。
なんで、ユーリがあんな悪人共の為に手を血で濡らさねばならなかったのか。
なんでっ、僕はあぁなる前に止められなかったんだっ!!
自分の大切な人が、どんな人間かも理解出来ていなかったなんて…。
「……くっ……っ」
許されるなら今ここで大声で叫びたい位だ。
泣き叫びたい。
自分の非力さに。自分の不甲斐無さに。
行く宛ても無い中、砂漠をただ歩き続けていると、夜なのに光る一角が目に入った。
そこは砂漠の中のオアシスの様で。でも、水なんて何処にもない。
あの場所は、一体…?
何故だが気になって、フラフラとその光る一角へ誘われる様に向かう。
そして、そこへ足を踏み入れるとそれはまるで月明かりを鏡の様に反射させ光る花が咲き誇っていた。
「……砂漠の一角に花畑があるなんて…」
見渡す限り花畑だ。
こんな場所僕は全く知らなかった。
花を踏まない様に最大限に足元を気遣い少しずつ中央へと近付く。
だから、気付かなかった。
その光に染まらない漆黒を持った彼女に。
「……フレン?」
「ユー、リ…?」
ユーリは花が咲き誇るそこに座り込みただ空を見上げていた。
僕の名を呼んだ以外は何も話さず、ただ空を眺めている。
どうして、空を…?
ユーリの眺めている物を、見ている景色を僕も見てみたくて同じく見上げてみるけれど、そこにはただ満面の星空が広がるだけ。
「………懐かしいよな」
「…え?」
「シゾンタニアで、お前がオレに告って来た時もこんな星空だった。凛々の明星が凄く輝きを放って…」
「……ユーリ」
泣いているのか?
危うく口に出しそうになったのを呑みこむ。
「あん時、オレ死ぬ程嬉しかったな。お前が抱きしめてくれたその腕が暖かくて。ずっとこの腕の中にいられたらどんだけ幸せだろうって」
嫌な予感がした。
胸騒ぎばかりが僕の胸を締めあげる。
僕は足を一歩踏み出し、ユーリへ近づこうとした。だが。
「来んなっ!!」
「…えっ!?」
張り上げられた拒絶の声に僕の足は勝手に動きを止めていた。
ゆっくりと立ち上がったユーリは僕を真正面から見据え、……言ったんだ。
「……フレン。オレはもうお前とは一緒にいられない。…別れよう」
「…ユーリ、何、言って…?」
「……今までお前の恋人でいられてオレは幸せだったよ。…いや、違うな。今だって幸せだ。お前の、フレンの彼女になれたんだから」
「ちょっと待ってくれっ。一体何を言っているんだっ」
全く理解出来ない。
僕にはユーリと別れる気なんてさらさらない。
なのに、ユーリは勝手に話を進めて別れようとする。
何でっ!?
こんなの全然笑えない冗談だっ!
それにユーリは、僕に気付かれない様にしているけれど、…震えている。
「……ユーリは、僕の事が嫌いになったのか?」
知らず、僕の声も震えていた。
真っ直ぐ見つめるユーリは僕の言葉を聞くと、穏やかに柔らかい微笑みを浮かべ…。
「……好きだよ。お前の事を愛してる…。多分、一生。オレが愛する男はこの世でフレン、お前だけだ」
「だったら何でっ!?」
「……お前には綺麗な光でいて欲しいから。この花みたいに」
くるりとユーリが背を向けた。
いなくなるっ!?
ユーリがいなくなると言う事に気付いた。慌てて走りユーリへと手を伸ばした。けれどその手は闇をすり抜けユーリには届く事は無く、僕は間に合わなかった…。
―――ユーリの姿は砂漠の闇へと消えて行った…。

