※ 女体化楽しいなー♪
※ 気付けば最優先事項だろ?の続編がえらい長く続いてます(;一_一)
※ 何故続き物にしなかったんだろう…?
※ でも、前作読まなくても済むようにしている筈です…orz
※ フレユリとは別にカロエスとレイリタも大好きです(^◇^)


君からのプレゼント (前編)






「しかし、不思議な事もあるもんだなー」

帝都ザーフィアスの市民街。
今、市民街で有名なスウィーツカフェのオープンテラスの一席にピンク色の髪の姫と黒髪の女性が向かい合い、座っていた。
突然ピンク色の髪のお姫様、エステリーゼに家事をしている最中に連れ出され、何だか深刻な表情で真っ直ぐこのカフェに来たかと思うと、注文もせずにムムムッとユーリを睨みつけていた。
流石に話が進まないと思ったのか、エステリーゼに声をかけると、漸く閉じた口を開いた。
その内容が。

『カロルにプレゼント…贈りたいのですが、何を選んで良いか分からず…』

だった。何故にカロル…?
そう思い、それを口に出すとエステリーゼの顔が真っ赤に染まって行く。
そこでピンッと来た。
カロルとエステルが付き合っている。
要するに恋人同士になったのだ、と。
なんとまぁ、すっかり母親の気持ちである。
そして、不思議な事もあるものだと冒頭のセリフに戻る訳である。

「まぁ、成長してカロルもかなり男前になったもんな〜。エステルも気が気じゃないって感じか?」
「えっ!?あ、あのっ、そのっ…」
「ははっ。しかし、そうだな〜…。カロルだったら何貰っても喜んで貰ってくれる気がするけどな」
「そ、それは…そうですけど」
「でも、女心としては他とは被らない何か贈りたいよなー」
「そ、そうなんですっ!!」

喰い付いて来たエステリーゼに苦笑いを漏らしつつ、ユーリは自分の記憶を辿った。

「ユーリは、フレンに何か贈った事ありますか?」
「フレンに贈り物……ねぇ」

無い訳じゃない。
だが、結婚して娘が二人産まれて、今現在お腹にも子供がいるのに、プレゼントを贈ったのは実は…。

「オレ、フレンに一回しか贈り物を贈った事ないんだよな〜」
「えぇっ!?」
「そんな驚くような事か?」
「当たり前ですっ!えっ、それホントですかっ?」
「お、おう。あれは確か…騎士団時代、だったか」
「騎士団時代です?」
「あー…うん」

正直余り語りたくない思い出にユーリは顔をしかめた。
あの時は、確か…。
ユーリは自分の思い出したくない過去を遡るはめになった。


―――騎士団時代。


「ユーリっ!!」
「……何だよ」

相変わらず怒鳴っての登場で、ユーリはうんざりとしていた。
実は、昨日の巡回途中に貧血で倒れたと、それがフレンの耳に入ったらしい。
同室のフレンにの耳に絶対入るだろうとなるべく口止めをしていた筈なのに、やっぱりまぁ当然と言うべきかバレた。

「どうしてそう無茶ばかりするんだっ!!」
「別に無茶したくてした訳じゃねぇよ。だいたい…これはいっつも急に来るもんなんだよ」
「だけどっ!」
「男にこの辛さは分かんねーよ」
「それは…そうかもしれないけど」

沈黙が部屋に満ちる。
その空気が耐え切れずに、ユーリは入口に立っているフレンに背を向け、毛布の中に潜り込んだ。

「ユーリ…大丈夫なのか?」

そっと毛布越しに肩に何かが触れる。
それがフレンの手だと言う事は何となく分かった。
何でだろう…?フレンが優しい?
毛布から少し頭を出し振り返ると、そこには心配そうに自分を覗き込む青があった。

「ユーリ?」
「…だ、大丈夫だ。それより、お前こそ本来まだ巡回の時間だろ。いいのかよ」
「うん。大丈夫だよ。君の面倒見ろって隊長に言われたから」
「…隊長に?」
「うん?」

ズキッと胸の奥が痛む気がした。
気の所為かも知れない。でも…。

「…いや、何でもない。サンキュな。でも、もう大丈夫だから。お前巡回に戻っていいぞ」
「そうはいかないよ。君を放って置く訳には行かない」
「いいって。それこそ毎月来るもんなんだから、休んでりゃ良くなる」
「けどっ」

尚も渋るフレンにユーリは段々腹が立って来た。
ただでさえ、血が足りず頭がフラフラしているのに、生理痛でお腹が痛いのに、その痛みすら分からない男に、しかも隊長の命令で来たと好きな男に言われたら。

「いらねぇって言ってんだろっ!!オレの事はもう放っとけっ!!」
「なっ!?僕は君の事を心配してっ!!」
「嘘言うなっ!!どうせ、隊長からの命令で嫌々来たんだろっ!!」
「違うっ!!」
「どう違うんだよっ!!お前さっきそう言ってたじゃねぇかっ!!」
「だから、それはっ!」
「…もう、いいっ!!お前が出て行かねぇならオレが行くっ!!」

ベットから立ち上がり、フラ付く頭を無理矢理動かし、部屋を飛び出した。
部屋の中からユーリっ!!と名を呼ぶ声が聞こえたのだが、ユーリにそれは届かなかった。
走って部屋を逃げ出した所で逃げ込めるような場所などユーリには無く、仕方なくシゾンタニアの街の中央。
噴水の脇に腰を降ろし、一息ついた。
お腹の痛みが頭にまで回って来たのかガンガンと鐘を鳴らし続けている。
―――しんどい。
正直言ってそれしか言葉が出て来ない位にはお腹が痛い。
何とか痛みをやり過ごす為に、大きく息を吸って、肺に堪った空気を吐き出す。

「…ユーリ?」

ビクリッ。
急に名を呼ばれて体が反応した。
呼ばれるなんて思わなかったから。
もしかしてフレンだったりしたらと…。
しかし、自分を呼んだ声は女の、先輩騎士のヒスカの声だった。

「あんた、寝てなくていいの?って、ちょっと、顔真っ青じゃないっ!」
「…大丈夫だ」
「どこが大丈夫なのよっ。とにかく、水の近くじゃ体が冷えて益々辛くなるわ。どっかの店に入りましょ」

遠慮しとく。
そう、言いたかったけれど、もう声も出ない程痛くて、ユーリはヒスカに近くのカフェへと引き摺られて行った。
ユーリを椅子に座らせ、自分もその横に座ると注文を取りに来た店員から水を受け取り、ホットココアを二つ注文すると、自分のポケットを探り小さな薬ケースを取り出すと中から錠剤を一つ取り出しユーリに手渡した。

「コレ、何?」
「痛み止。生理痛の」
「……薬、嫌いなんだけど」
「いいから、飲むの。生理痛は我慢してたって良い事ないんだから。ほら、お水」

…薬は嫌い。
これは昔から。だけど、痛みが続くのは…。グラグラと揺らぐ意思。
だが今回は、負けた。仕方なく水を受け取り、錠剤を飲み込んだ。
粉じゃない分だけましだ。

「しばらくすると、落ち着いてくるから、それまで休んでるといいわ」
「……あぁ。……悪ぃ。薬も。安いもんじゃないだろ…?」
「気にしなくていいわ。だって、この薬自分で作ってるから」
「そう、なのか?」
「うん。後でユーリにも教えてあげる。結構簡単だから」
「それは、助かる…」
「それで?どうして、あんな所にいたわけ?」
「うっ……。そ、れは…」

ジッと先を促されて仕方なく、フレンと喧嘩した流れを含め説明した。
すると、ヒスカは苦笑いをしていた。
てっきりフレンと同じく怒るものだと思っていたから、若干拍子抜けだ。

「そっかぁ…。それは腹が立つよね〜」
「…ヒスカ?」
「私も良く分かるよ。その気持ち。私も生理痛きついんだ」
「…だから、薬?」
「そうそう。私もよくシャスティルと喧嘩するよ。同じ理由で」
「マジ?」
「マジマジ。双子なのにシャスティルは生理痛何てかけらも無いのよっ!なのに、いっつもいっつも、『その位我慢しなさい』とか、男共なんか『シャスティルは我慢出来てるのに何でお前が出来ないんだ』とかっ!」

……ヒートアップ。
なるほど。確かにこれは我慢何て出来る筈もない。
ただ、自分の気持ちを理解出来る奴がいると落ち着いてくる。
そして、自分がフレンに八つ当たりしてしまった事も、落ち着いてくると見えて来る。
そうこうしていると、店員がホットココアを運んで来た。すると漸く落ち着いたのか、運ばれたココアを口に含みユーリに向かって微笑んだ。

「でもさ。やっぱり八つ当たりした事は分かってるんだし、ここは謝るべきよね」
「…そう、だよな。やっぱ」
「私もシャスティルには何時も謝ってるわ。男共はどうせ分からないだろうし、鉄拳制裁で終わるけど」
「そ、そうか…」

謝る。
ココアを一口のみ考える。
謝る…フレンに?
どうやって…?
隊長の命令だとしても、それを聞いてユーリの体を心配して来てくれたフレンに八つ当たりをして逃げ出した。
それをどうやって謝れと言うのだろう…?

「…どうやって…、どんな顔して謝れって言うんだよ」
「どんなって、普通の顔して普通にごめんなさいでいいんじゃない?」
「出来る訳」
「ないわよね〜。うんうん。だから私はいっつも何かプレゼントするよ?シャスティルの好きな物を」
「好きな物?…フレンの好きな物?……肉?」
「さ、流石にプレゼントでお肉は…。お肉の柄物…それは、ないわ。お肉以外でないの?」
「…知らない」

本格的に頭を抱え始めたユーリにヒスカは提案した。
兎に角一緒に街を見て回らないか?と。
ユーリは取りあえず、フレンに謝る手段を探る為、それに一も二も無く頷いた。

街を歩いていると色んな物が置いている。
魔物が増えてからと言うもの、住人は減ってきているが、それでもまだまだお店は一杯あるのだ。
ふと、ユーリはあるものが目に入り足を止めた。

「…?……指輪?」
「ユーリ?どうしたの?」
「い、いや。何でもないっ」

何か恥ずかしくて、ユーリはヒスカの背を押して、その場から離れた。
しばらく一緒にヒスカと街を回り、ふと思いついてチョコレートを大量買いしたのだが、ユーリは何時までもつい足を止めてしまった指輪が気になって仕方なかった。


宿舎に戻り、部屋に戻らずに真っ先に食堂へ向かい、買って来たチョコレートを早速調理する。
ヒスカと一緒にチョコレートケーキを作る事にしたのだ。
卵に小麦粉、牛乳と材料を勝手に出し、勝手に使用して大きなチョコレートケーキを二つ、焼き上げた。

「…んじゃ、ヒスカ。悪いんだが、コレ、皆に配ってくれないか?」
「えっ!?これ、フレンにあげるんじゃないのっ!?」
「……こんなに上げた所で喰いきれないだろ。これは、迷惑かけた他の奴らに、だよ」
「そうなの?って何処行くのよ」
「オレ、ちょっと買い忘れ。悪いけど頼むな」
「あ、ユーリっ!!」

そう言って外へ飛び出して行ったユーリを呆れ顔でヒスカは見送った。


――― 現在。


ユーリの過去話を聞きながら目を輝かせているエステルがテーブルを乗り越えて来る勢いでユーリに問いかけた。

「え?じゃあ、フレンには何も贈らなかったんですっ!?」
「チョコケーキはやらなかったな」
「だ、だって、さっきプレゼント贈ったって…」
「いや、だからチョコケーキは贈らなかっただけだって」
「どうゆう事です?」
「あー……それは…」

言い辛い。
確かにあげた。
あげたけれど、フレンはユーリが贈ったと気付いているのだろうか?

「あげたんだけど、あいつ気付いてねぇんじゃないかな?案外もう捨ててたりして」
「そ、そんな事っ!?」
「そんな事無いよ」

今、聞こえる筈のない声が聞こえ、ユーリは勢い良く振り返った。