※ 気付けば五作目ですwwwww
※ こんなつもりじゃなかったwwwww
※ でも気付けばこんな結果wwwww
※ お決まりですが、医者パロでございます。
※ ネタばれが多大にございます。TOG、TOA、TOS-R、のネタばれが嫌な方は回れ右。
※ 尚、TOX2の内容は入れておりません Σd(^◇^)
白衣の騎士(良い夫婦の日)
病院の休診日。
オレとフレンは珍しく有給をとり、快晴の空の下を目的地に向かって歩いていた。
「…ふぁ〜あ…。いーい天気だなぁ…」
「あぁ。思わず欠伸をしてしまうユーリの気持ちも分かるな」
並んで歩く。
目的地は遠くは無いのだが、折角の休日に折角の良い天気。
散歩して行くのもいいだろうと、フレンの提案に乗り、オレとフレンは公園をゆっくりと歩いて行く。
「こんな日は、仕事の話も何もしないで…」
「そうだ。仕事と言えば、ユーリ」
「……したくねぇって言ってるのにお前は…」
若干いらっとするが、そこはそれ。
こいつから仕事をとったら、生真面目と味音痴しか残らない。
仕方なく話にのると、今度またオレの所に回したい患者がいるらしい。
それは、いいんだが…。
また、面倒なのじゃねぇだろうな…。
疑いの眼差しをフレンに送ると、すまなそうに笑った。
その表情で全てを察する。
要するに、また面倒な相手と言う事だ。
この前、漸く、コレットとミラにローエン、ソフィが退院して、その場所を直ぐ埋める様にエミルとイオン、アッシュが入院した。
そして、今度また一人追加と。
「…すまない。何時も、君の所に回して…」
「…いんや。それで、一人でも命が救われるならそれでいいさ。お前があの病院の体制を変えるまで、支えてやるよ」
「…あぁ。絶対に変えて見せる」
フレンがぐっと拳を握る。
その拳にオレは自分も拳を作りコツンとくっつけ、笑った。
「さて、遅刻する前に行こうぜ」
「…そうだね」
足を進めながら、ふと横へ視線を向ける。
そこには小さな花が咲いていた。
そしてふと思い出す。
「なぁ、招待状、持って来てるよな?」
「勿論。ユーリだって持って来てるだろ?まさか、忘れたとかっ!?」
「忘れてねぇよ。それより手ぶらで行っていいもんか?って思ったんだよ」
「そう言えば、そうだね。…すっかり忘れていたよ」
着く前に気付いたのはいいけれど、こう言う時どういうものを買って行きゃあいいんだ…?
「花とかどうだい?」
「花か…。どんなのがいいか知ってんのか?」
「知らないけど、そこはお店の人に聞けばいいだろう?」
「それも、そうか。けど二人で一つってのもなー…」
「じゃあ、そこのデパートに寄って行こう?そうすれば、見て回れるだろうし」
「…時間は…大丈夫だな。よし、行こうぜっ」
早速少し早足に、公園を抜けて駅付近に来ると、そこで一番大きなデパートに入る。
そっからは、時間短縮の為、別行動。
フレンは花。オレは何かプレゼントを。
プレゼント…。プレゼントねぇ…。
それこそ、店の人に聞きゃあ早いんだろうが、それだとなー…。
上へ登るエスカレーターに乗り、腕を組んで考える。
アイツらだったら、何がいいかな?
どっちも未だに少女漫画みたいな二人だからな…。
となると…ペアの食器とかか?
でも、それも色々貰うだろうしな…。
絶対他と重複しない、それでいて貰うと嬉しい物。
「……となると、手作りのなんか、だよなー」
方向性は決まった。
んでオレが得意な手作りと言えば…これしかないよな。
プレゼントするものが決まった所で、オレは真っ直ぐ売場へと向かった。
必要な材料を急いで買って、手早く袋にエコバックに詰めて、フレンとの待ち合わせ場所に急ぐ。
どうやら、フレンは先に終わっていたらしく、えらい目立っていた。
大きな花束を肩に担いでいる。
その姿は確かにカッコいい。カジュアルだけどブレザーとシャツを着合わせた姿で、そうして時計を気にしながら立っていると、フレンは美形だって事を思い出す。
そして美形だからこそ、やばい。女達の人だかりが出来てる…。
……追いてったら、駄目だよな。やっぱ。
「おい、フレンっ」
「ユーリっ、遅かったじゃないかっ」
「これでも全速力だよ」
女達の波を掻き分ける様に、オレの傍に走り寄る。
「何を選んだんだい?」
「内緒。ほら、行こうぜ」
「あ、うんっ」
オレ達は並んでその場を脱けた。
今度はもう、寄り道している時間は無い。
心持ち早足でオレ達は目的地へと向かった。
目的地は実際そんなに遠くなく、直ぐに到着した。
ご立派な洋風のお屋敷。ピンポーンとチャイムを鳴らすと。
インターホンから返事が返ってくる。
「フレン・シ―フォとユーリ・シ―フォですが」
「って、ちょっと待てっ!!何をナチュラルに言ってんだ、こらっ!!」
「何をって?」
「気付けよっ!!名前だよっ!!なーまーえっ!!」
「?、何か間違っただろうか?」
「うーわー…こいつ、マジで言ってやがる…」
純粋な目が今は物凄く腹が立つ。
確かに、オレはいつの間にかこいつと養子縁組されて、こいつの子供って事で結婚したみたいな形になってはいる。
なってはいるんだが…。
なんか、腑に落ちない…。
落ちるのは肩ばかり…だった。
しばらくして、入口の門が開き、そこからまた奥へと進む。
広いなぁ〜…。
流石、知事の家。桁が違う。庭に噴水にベンチ。とてつもなく大きな花壇に、大量の花。
屋敷迄の道を歩いていると、屋敷のドアが開き、紫の長髪をなびかせて、女の子が走って来た。
「ユーリっ!!」
「おぉ。ソフィ」
「いらっしゃーいっ」
「おう。お邪魔するぜ」
フレンに手に持っていた荷物を渡すと、走って来たソフィの脇に手を入れて抱き上げた。
所謂、赤ちゃんにする高い高いと同じだ。
「ちょっと見ない間にデカくなったなーっ」
「ホントっ?ユーリ、それホントっ?」
「おう。マジだぜ」
嬉しげなソフィを地面に降ろし、頭をかき混ぜるように撫でて、フレンと視線を合わせる。
微笑むフレンから預けた荷物を貰い、再びソフィに向く。
「おっし。ソフィ、案内してくれんだろ?」
「うん。こっち。フレンも」
ソフィに腕を引かれるまま、オレとフレンは玄関に入ると、そこにはソフィにとっては叔父にあたる如何にもインテリチックなヒューバートが立っていた。
「ようこそ、いらっしゃいました。ユーリ先生」
「おう。お邪魔するぜ」
「フレン先生も」
「こちらこそ、お招き頂いて光栄だよ」
「ご案内します。どうぞ。中へ」
ヒューバートに促され中に入る。
広く長い廊下を歩いていると、横にヒューバートが並んだ。
「…ユーリ先生の事を考えて、一応ローウェルと書かせて頂きましたが、あんまり意味は無かったようですね」
「…ヒューバート、お前の優しさが身に染みるぜ…」
うっかり涙が出そうになった。
確かに招待状にはローウェルと書いてあった。その優しさはあっさりとフレンによって打ち砕かれたが。
そのまま足を進め、ソフィに引っ張られて、リビングと思わしき所に入ると、そこには。
「あ、いらっしゃい。ユーリ先生」
「良く来たな。大した持て成しも出来ないがゆっくりして行ってくれ」
ベビーベットの前で、濃い桃色の髪をリボンで結んだ、すっかり母親顔のシェリアと相変わらず抜けていそうなアスベルがいた。
「出産、おめでとさん。シェリア」
「ありがとう。ユーリ先生」
「アスベルも。これからは父親なんだからしっかりしねぇとな」
「あぁっ!!俺は家族を守って見せるっ!!」
「頑張ってくれ。アスベル」
「勿論だ。フレンっ!!」
…無駄に熱い。そして、そんなアスベルを苦笑いで見守る妻。
これはずっと変わらなそうだな。
とりあえず、二人の子供の顔をみようと、ベビーベットを覗く。
生まれたばかりの赤ん坊は、…どっちにも似てる…。
「目はアスベル似かな?」
「だな。口の感じはシェリアだ」
「赤い髪は父さんの血、そのままですね。僕と母さんは青い髪ですし」
「じー……」
気付けば横に、ヒューバートとソフィが一緒になって覗きこんでいた。
四人でじーっと見ていると、ふと赤ん坊の手に触ってみたくなって、手を動かすとプレゼントを持っていた事を思い出した。
「そうだった。おい、フレン。土産」
「あ、そうだった。ごめんごめん」
互いに何でこんなでっかい荷物持ってて忘れるのか、って位綺麗さっぱり忘れていた。
フレンは持っていた花束をシェリアに渡した。
やっぱり女らしいシェリアは、飛び跳ねんばかりに喜ぶ。
そして、それを横で真似するソフィ。
んじゃ、オレも。
「シェリア、キッチン借りてもいいか?」
「え?いいけど、どうしたの?」
「オレからのプレゼントって奴さ。んじゃ、借りるぜ〜」
幸い、リビングの横にキッチンがある。
買った荷物を持って、中に入る。几帳面な性格のシェリアらしい。
何処に何を置いてあるか直ぐに分かる。
手早く材料を並べて、包丁を取り出した所で、フレンがキッチンに入って来た。
「…何か作るのかい?」
「おう。アイツ等の好物をな。甘口カレーに焼き鳥丼、オムライスにカニ玉、それから祝いのケーキってね」
「成程。だから、エコバック三つ分か」
「そう言う事」
「そう言う事だったら、僕も手伝うよ」
……。
その爽やかな笑顔が怖い。
けど、祝い事のプレゼント作り。断るのも、如何なものか…。
しかし、死人を出す訳にも。
「…んじゃ、材料切ってくれよ」
「あぁ。分かった」
フレンが切ってくれた材料を下味をつけて炒めて…。
着々と料理を進めて行くと、やはり気になったのか。それとも焼き鳥の匂いに釣られてきたのか。
ひょこっとシェリアがこっちを覗いて来た。
しかし、何言う訳でもなく、ただじっとオレ達の行動を見ているようだ。
なら、気にする事はないか。
料理を続ける。
オレが、分量を分けた材料をフレンに混ぜさせケーキの生地を作る。
…それにしても、こいつらの好物って簡単なもんばっかだなー…。
オムライスは直ぐ作れるし、カニ玉もあっという間だ。
甘口カレーだって煮るだけだしな。ほとんど下拵えは終えたから、ケーキに集中すっか。
苺を切るのは、フレンにやらせるとして、オレは生クリームだな。
ボールに生クリームと砂糖を入れて泡立てる。
電動のがあるともっと早いんだが、無い様だから素早く泡立て器を動かす。
角が立つまで〜、っと。
がちゃがちゃとかき混ぜる音だけが聞こえる。
作り慣れていると、どれだけ混ぜればいいか、どれだけ力を入れるか分かるから、あっという間に角が立つまで泡立て終わる。
味見、と。
指に軽く生クリームをつけて、舐める。
「ん。合格」
「…どれ?」
「へ?…んっ」
目の前にフレンの金髪…?
唇に柔らかいけど…湿ってる…?
「あぁ、確かに美味しいね」
「って、おいっ!!」
こんな他人の家でチュウとか、何考えてんだ、コイツっ!
じっと睨みつけると。
フレンは楽しそうに笑って、今度は頬にキスをしてくる。
「おい、だから、やめろってっ」
「どうして?」
「どうしてって、ここ他人ん家っ」
「あぁ、そっか。そうだよね。ごめん、ユーリが可愛いから」
「って、言いながら、チューすんなっ」
さっきからシェリアが赤い顔しながらも身を乗り出して様子を伺ってるんだよ。
こいつ、分かってるくせにっ。
「とにかく、離せってっ。続きやんぞっ!!」
「続き…?」
ニッコリ笑って…。
その笑顔が胡散臭い。
「違うぞ。ちゅーの続きじゃねぇからな。料理の続きだからな」
「なんだ」
「なんだじゃねぇっつーのっ。………そっちの続きは、家に帰ってからな」
「ユーリ…。うん、そうだね」
何とかフレンを言い包めて、料理を再開させる。
「そう…。そうなのよ。新婚の形はこうあるべきなのよっ。……アスベルに足りないのは……ぶつぶつぶつ」
……シェリアが何か呟いてるが、聞かなかった事にした。
その後あっというまに料理は完成し、出来上がった料理を全員で食べて、しっかりと後片付けを済ませるとオレ達は帰る事にした。
外に出ると、昼だった筈なのにすっかり日は傾いていた。
「んじゃ、今日はありがとな」
「うぅん。こっちこそ」
「あぁ。甘口カレー、ありがとうっ!!ユーリっ!!ほんっとうに有難うっ!!」
…相変わらず、夕方になってもこのテンションか。アスベル…。
オレ達はアスベルとシェリアに送られ、門を抜ける。
「じゃ、帰ろうか」
「だな」
家に向かって歩き出そうとした、その時。
一つ、思い出した事があった。
シェリアに来い来いと、手招きすると、首を傾げながらも近付いてくる。
「今日はもう飯を作る手間もないだろ?ゆっくりと夫婦の時間、過ごせよ」
「なっ!?」
「じゃあな」
真っ赤に顔を染めたシェリアに後ろ向きで手を振りつつ、今度こそ、フレンと一緒に並んで歩き出した。
「ユーリ。最初から、あれが目的だったんだろう」
「あれって?」
「料理。シェリアの家事の時間を減らして、アスベルとの時間を増やしてあげるのが、さ」
「…まぁな」
てくてくと昼来た道を戻る。
「そういえば、知ってる?ユーリ」
「んー?」
「今日は、11月22日。良い夫婦の日なんだよ」
「へぇ」
アイツ等にぴったりじゃねぇか。
なんか嬉しくて顔が無意識に笑みを浮かべていた。
あぁいう夫婦の間に子供が生まれて…。幸せな家族を見ているとこっちも幸せになる。
オレには両親がいないから尚更。
そんな感傷に浸っていたオレを、フレンの手が引きもどした。
「何を他人事みたいに言ってるんだ?」
「ん?」
「僕達も、夫婦だろう?」
「いや、夫婦って言うのか?」
「さ、愛を確かめ合おうっ!!」
ぐっと腕を引かれ連れて行かれた先は…。
「って、ラブホっ!?」
「さあ、ユーリっ」
いかにもな外観の中へと連れ込まれて。
「ちょ、ちょっと待てぇっ!!」
オレの叫びがフレンに届く事はなく。
こうして、結局どんな日も同じ結末を迎えるんだと、オレは心の底から感じる羽目になった。



