無自覚迷宮
【後編】
目の前の月の明かりを受けた金色の髪が綺麗だと思った。
そして、何より。その蒼い瞳から零れ落ちる涙が…宝石のように綺麗で思わず手を伸ばしていた。
「…こんぐらいの事で泣くなよ。フレン」
オレがいなくなるって事でそんなに泣くな。
じゃないと、オレがずっと心に封印しようとした感情が戻って来てしまう。
だから…。
でも、フレンは更に言葉を続けた。
「…ユーリが、酷い事を言うからだ」
と。あまりにらしいセリフにオレは笑った。
「オレの所為かよ…」
「君以外誰の所為だって言うんだい?」
ボロボロと溢れる涙を拭おうともしない。
そんな姿が綺麗で、見惚れているとフレンがいきなりオレを抱きしめた。
まるでオレを離すまいとするように…。
「フレン、ほら。泣き止めよ」
「……君が、僕の前から消えないのなら、泣き止むよ…」
「…そりゃ、出来ねぇ相談だなぁ…」
まさかフレンがオレにここまで食い付くとは…予想外だった。
ポンポンと子供を泣き止ませる様に背中を叩くと、フレンはオレをじっと見つめる。
その真っ直ぐな目に、何故かオレは耐え切れなくて視線を逸らす。
「ユーリ…」
「……ん?」
「なんで僕にキスなんてした…?」
「…へ?」
「……おかげで僕は自覚してしまった」
「…フレン?」
何を?とは聞けなかった。
正しくは声を出す事が出来なかった。
フレンの唇がオレの言葉を塞いでしまったから…。
「こんな感情、自覚しなければこんなに胸が苦しくなる事なんて無かったのに…」
「ん、ぁッ……、フレ、やめ、ンッ」
「…やめない。…ユーリ」
フレンが熱の籠った声でオレを呼ぶ。
奪いたいだけ、味わいたいだけ、思う存分フレンがオレの口の中を荒らし回る。
気付けばその舌をオレは追いかけていた。
「……ふ、れん……ッ、んっ」
必死にフレンの口付けに答えているオレを見て、フレンは瞳だけで柔らかく笑った。
「逃げないの…?」
「え…?」
「……さっき君も僕に同じ事を聞いたね」
『…逃げねぇの?』
オレがさっき言ったセリフだ。
どうして、オレが逃げないのか。
……それは…、オレがフレンを……。
過った思考をオレは首を振って飛ばした。
言える訳ない。
声に出せる訳ない。
この想いを伝えるなんて出来る訳が無いっ。
なのに、オレのこの想いとは裏腹に体はずっと素直だった。
フレンの想いをまっすぐに受け止めようとしている。
両手を伸ばしてフレンの首に抱きついていた。
「……逃げる、必要ない、んだろ?」
「…君は狡い」
「オレが狡いんなら、お前だって十分狡ぃよ」
どちらかともなく唇を重ねていた。
フレンの手が今度こそオレの服を脱がす。上着を首から引き抜き、ボトムの中へと手が侵入してくる。
やられっぱなしが嫌でオレもフレンの服を脱がそうと手を上げて止まった。
……これどうやって脱がすんだよ。
まず、腕の篭手を外すだろ?
パチンとボタンを外し、両手の篭手を取り外し床に落とす。
これで後は、肩か?
マントもセットの防具を外し、ガコンと床に落とす。
よし。後は下に着ている服だな。
……ん?視線を感じる?
ふと視線をフレンの顔に戻すと、さっきまで泣いていたのが嘘の様ににっこりと笑っていた。
「……ユーリ、可愛いな」
「はっ?」
ピタリと手が止まっている隙に、フレンがオレのをきゅっと握りしめた。
何か、一つも二つもフレンが先に進んでいる気がする。
腹が立って、オレもフレンのベルトを外しボトムの中に手を突っ込みフレンの性器を握った。
軽く上下に動かすと、ビクンと手の内のフレンのそれが震える。
してやったりと思ってたのも、その一瞬だけだった。
フレンがオレのを掴み動かし始める。まるで仕返しの様に。
「……うッ…、あ、……ぁッ…」
「…………くっ…」
互いに相手にだけは負けまいとすればするほど自分が追い上げられていく。
息がどんどん荒くなっていって、呼吸をすればするほど自分の手の中にあるのが熱くなっていって…。
そして、あっという間に限界がきて、オレとフレンは互いの手に白濁を吐き出していた。
「……はッ、……はぁ……」
「…ユー、リ…」
ぐてっと力が脱けて、床に腕を落とし、大の字になる。
フレンとこう出来ている事が、既に幸せなんじゃないかと…。
そんな感情を隠すようにフレンをじっと見つめるが、………しかし、フレンは違った。
フレンの手がオレの……。
「って、おいっ!!」
「……何だ?」
「何だじゃねぇっ。ど、こ触ってっ!?」
「……ユーリを抱きたい」
「はっ?えっ?」
抱きたい?って、何言って…?
混乱しているオレを差し置いて、フレンはオレのボトムをさっさと取り去り、オレのソコを指でなぞる。
色々待てっ!ちょっと待てっ!!
「フレン、待てっ!!」
「……嫌だ」
「嫌だって、あのなっ」
「僕は言った筈だ。ユーリを抱きたいって」
「オレは許可してねぇよっ。そもそも、オレだってどうせヤるんならお前を抱く方がいいっ」
「………駄目だ」
「何でだよっ!?」
「僕が君に抱かれてる姿が想像できない」
「んなの、オレもだっつー、アッ」
……。
やっちまった……。
いや。オレは悪くない。いきなり指を突っ込んで来たコイツが悪い。
でも、それでフレンは気を良くしてしまった。
指がゆっくりと中へと進んでくる。
今度はこんな事で声を出さない様にと、きつく唇を噛む。けど、そうは問屋が…フレンが許さなかった。
「ユーリ、声、我慢しないで」
そう言って、オレの唇をそれこそ声を促す様に、舌でなぞる様に舐める。
唇を割って口を開かれると、堪えていた声が少しずつ漏れ始めて…。
「…くッ、そぉ…うァッ!?」
「…ユーリ…」
しばらく出し入れされたかと思えば、中の質量が増え息苦しさが増す。
何でこいつ、こんなに手慣れてんだっ!?
さっきのキスだってオレの真似しただけって、オレはこんなことお前にしてねーぞっ!!
頭の中では幾らでも文句を言えるのに口から出る声は喘ぎでしか無くて。
そんな声を聞きたくなくて、オレはフレンから顔を逸らす。
しかし、フレンはそれすらも許してくれず、背けた事によって顕わになったオレの耳の中に舌を入れて来る。
脳を直に揺さぶられたみたいに衝撃が走り、耳にはぴちゃりと水音がフレンの吐息と共に聞こえて少しずつフレンに思考を奪われて行く。
ドキドキと心臓の音が大きくなって、もう、いっそ止まってくれと願う。
―――悔しい。
こうしてコイツに、フレンにいいようにされるのが。
…悔しい筈なのに、嬉しい、とか思うなんて…。
オレの中に埋まっている指がある一点を掠めた。
その瞬間、全身から力が奪われる様なぞくぞくとした言い様のない感覚に襲われる。
体が震えたのがフレンにも伝わり、咄嗟にフレンの顔をみると。
「ここ、気持ちいいんだ?」
ムカつく位爽やかに笑っていた。
今度こそ文句をと口を開く前に、フレンに先手を打たれた。
指を一気に引き抜かれ足をフレンの肩にかけられて…。
ここまで来たら男だったらこの先に何が来るのか分かる。…分かる、が。覚悟が出来ているかと言われればそれは別の話だっ!
ぐっと腰を押し付けられ、灼熱の棒がオレの中へと入り込んでくる。
でかくて熱いそれに、オレは無意識腰を引いて逃げようとしていた。
でもフレンの腕がそれを阻止し、オレの腰を掴むとそこを抉じ開ける様に進んでくる。
アツイ。イタイ。クルシイ。
三重苦だ。
「…くっ、ユーリ、力、抜いて…」
力抜けって言われても、どうすれば抜けるのか分からない。
オレはただ頭を振って出来無いと繰り返す。苦しさは募るばかりで…。
寧ろ、そっちが抜いてくれよ、と懇願したい位で…。
フレンの胸を必死に押し付ける。
しかし、フレンは抜く事はせず動きを止めて。
「…息、しろ。ユーリ…」
そう、耳元に囁いた。
…息?
言われて初めて、まともに呼吸していない事に気付き、ひゅうっと喉を鳴らし息を吸い込み、震える様に息を吐き出す。
すると、少し楽になる。
チカチカと星が飛び交っていた視界も、痛みから溢れる涙で歪んでいながらも色を取り戻す。
目の前にあるフレンの鼻先から汗が伝い、オレの頬に落ちた。
(…こいつ、こんな顔する奴だったか…?)
いつも、穏やかに、怒っていてもどこか理性的なフレンが獣の様に欲むき出しなこんな表情。
オレは初めて見た…。
ふとそんなフレンに触れてみたくて手を伸ばす。
するとフレンはその蒼い欲で揺らぐ瞳を柔らかくしてオレの手を掴むと自分の首へと回させた。
そしてそのまま…。
「―――ッ!?」
オレが息を吐く瞬間を見計らい、腰を一気に押しつけて中へと入り込んで来た。
あまりの事に息が出来ず、背が床から浮き反り上がり、瞳に溜まった涙が溢れ頬を伝った。
「……はぁっ、はぁ……、ユーリ、大丈夫、か?」
大丈夫な訳ない。
そう、言いたいのに。
心配そうに覗きこむフレンの瞳が、髪を梳くように撫でるフレンの手が、優しいから…。
大丈夫と答えてしまっていた。
ふわりと微笑むフレンをオレは見ている事が出来なくて、ぎゅっとフレンをきつく抱きしめた。
フレンは一瞬驚いた様な表情をしたけれど、直ぐに微笑み遠慮も何もなく腰を動かし始めた。
中からずるりと引き抜かれる感覚にフレンに内臓まで持って行かれるんじゃないかと、心の底に芽生える恐怖を自分からキスする事で討ち消す。
それでも、声は漏れるもので。
「んっ、ンンッ、はぁ、んんぅッ」
キスの息継ぎの合間に自分のモノと思いたくない鼻から抜ける声が聞こえて、それを聞きたくなくて急いでフレンとキスをするが、フレンは逆に声を引きだしたいのかオレが反応した場所ばかりを突いてくる。
どんどん律動が激しくなり、オレの体もフレンを受け入れてゾワゾワと走り抜けた感覚が快感に変わり、すっかりオレのそれも立ち上がっていた。
でも後ろだけじゃイけない。
けど、イってこの快感を、悦楽を逃したくてフレンの体から手を離すと自分のそれに触れて扱く。
「……駄目、だよ。まだ出しちゃ駄目」
「なっ!?ふ、れん、て、てぇ、はなし、んぁっ」
「……ねぇ、ユーリ?」
オレの懇願なんて、聞いちゃいない。
それどころか、フレンは態とオレの中の良い所を突きながらオレのそれの根元をきつく握った。
これじゃ、イくにイけない。
離せと、嫌だと切実に訴えてるのにフレンは…。
「ユーリ…。僕と約束して」
「うぁッ!?、あ、あァッ、ん、ふッ、れ、んッ、やく、そく?」
「そう。…僕から離れないって。僕の傍にずっといるって」
出来ない。
出来る訳ない。
オレが快楽で回らない頭を必死に振って拒否をすると、フレンは。
「……じゃあ、このまま、イかせない」
「ッ!?、やッ、ふれッ」
「ほら、イきたいなら、いいなよ。僕の恋人になるって」
「む、ムリ、ムリだッ、あッ、はぁッ、んんッ」
言うと、フレンは動きを止めた。
イきたいのに止められた動きにオレのそこは焦れて勝手に収縮を繰り返し、オレの手ごと握られたソコからは少しずつ我慢した物が溢れ始める。
もう、動いてくれ。
もしくはイかせてくれ。
そう言おうとしたら、フレンがオレの顔をじっと見つめて言った。
「…ユーリ。僕は、君の事が好きだよ」
「えっ?あ、な、にい、ッって」
「……ユーリは?僕の事好き?…答えて」
答えろと言うのなら、緩くオレを突き上げるの止めろっ!
しかし、フレンは動きを止めるつもりは全くなく寧ろ、どんどんオレを追い上げて行く。
出したくても出せない。
出す事を塞き止められたその苦しさがオレの思考を混乱させる。
体中がフレンの与える快楽を拾い上げ、もう今オレが考えられるのは『イきたい』ただそれだけに染められていた。
塞き止めるフレンの手の甲をかりかりと引っ掻く。
けれど、それはフレンにとってなんの抵抗にもならない。
どうすれば、フレンの手を外せる?
どうすれば…出せる?
そんな切羽詰まった状態でのフレンの言葉は完全なる誘いだった。
「ユーリ。僕を好きだろう?口に出して言ってくれれば、手放してあげるよ?」
「あ、んッ、ほん、と、か、ぁッ?」
「うん。本当。君のホントの気持ちを僕に教えてくれたら、ね」
「お、れ、も、好き、ぃッ。好き、だから、ぁッ、イ、かせッ」
「……確かに聞いたからね。これで、もう、君は僕のモノだっ」
フレンの言葉に意味も理解出来ず必死に頷く。
すると、フレンは手を解き、一気にスピードを上げてオレの中へと入り込む。
一体何処まで入ってくるのか。
恐怖すら覚えるほどの熱に浮かされオレとフレンはそのまま二人同時に白濁を吐き出した。
荒れた息を整えながらずるりと中を埋めていたフレンのが出て行く。
ちゃちゃっと自分だけ後処理を済ませ、オレの精で汚れた上着を脱ぎ捨てオレの側によると、オレを抱き上げた。
「ちょっ!?おま、降ろせっ!!」
「嫌だ。君はもう僕のモノなんだから」
そう言ってオレを姫抱きしたまま、自分の何時も座る執務室の椅子へと座った。
オレはフレンの膝の上に座る形になり、なんとも居た堪れない。
「……はぁ」
「ユーリ?」
「こんなはずじゃなかったのに」
「…なら、どんなつもりだったんだい?」
「…上手い事お前に嫌悪されていなくなる予定だったのに」
「それは、残念だったね。でも、絶対に僕はユーリを離さないから」
ちゅっと触れるだけのキスをされる。
フレンの瞳は本気だった。
…これは、もう、覚悟を決めるしかないのかもしれない。
フレンと二人、生きる覚悟を…。
「ユーリ、愛してるよ…」
微笑むフレンの顔を見ると、そんな覚悟も受け入れられる気がして…。
「……ったく、仕方ねぇな」
「ユーリ…?」
「認めるつもりは無かったんだ。…けど、お前が覚悟を決めたんなら、オレも決める」
意味が分からないのか、オレの顔を覗きこむフレンの首に腕を回し、正面から向かい会う。
「…フレン、オレも愛してる」
フレンが言葉を発する前に、オレはフレンの唇を奪い取った。
―――その後。
どっちにしろオレに一年城勤めなんて出来る訳も無く、城を出てギルドに戻り、フレンが追いかけてオレを説教地獄へと追いやったのはまた別の話である。


アトガキ?
ひごモル様からのリクエストでした(^◇^)
まだ恋人関係になかった二人が騎士団長となったフレンの部屋に夜忍び込んだユーリと執務室でHしちゃうお話
まだ恋人でなかったと言ってもお互い無自覚に思っているので戸惑いながらもドキドキしちゃってる感じ。
とのリクエストで。
ドキドキ感。頑張ってみましたがありましたでしょうか。ヽ(≡ω≡;ヽ)ォロォロ(ノ;≡ω≡)ノ
アタシにして見れば珍しく乗り気なユーリさんですwww
結構レアかもしれませんwww
そして予想外のシリアスですみませんでした((((;´・ω・`)))ガクガクブルブル
ユーリはどっちにしろ出て行く気満々だったのですが、フレンと言う存在がユーリを引きとめていて、更にそれをフレンが自覚した事によって、一緒に生きると言う自覚をユーリがした。
簡単にまとめるとこんな話でしたがいかがでしたでしょうか。
楽しんで頂けると嬉しいです(>_<)
それでは、リクエストありがとうございました+。:.゚ヽ(*´∀)ノ゚.:。+゚ァリガトゥ