理想的な人。





【後編】



「おや?ルーク、どうしました?」

保健室に入ると、鬼畜ロン毛眼鏡保健医が…もとい、ジェイド先生がルークを見て言った。
どうやらルークは自分のこの現状が恥ずかしいのか、ぷいっとそっぽ向いてしまったんだが…。

「…ルーク?私はどうしたのかと聞いたのですが?」

近付きルークの痛めた足をむぎゅっと掴みにっこりと笑ってもう一度問い掛けた。
…ほんっと性格悪いな、この眼鏡は。
思いっきり痛めた足を握られたルークは当然涙目で叫ぶ。

「痛ぇっつーのっ!!この鬼畜っ!!」
「おや〜?何か言いましたか?」

むぎゅむぎゅっ。

「〜〜〜〜〜っ!!!!」

ルークの声にならない悲鳴が聞こえる。
女にも容赦ねぇな。
いや、正しくは『自分の女』にも、だな。

「あ、アッシュ、…手合わせ、…転んだっ…!」
「成程。一方的に嫉妬されて酷く打ちこまれてバランス崩した時に捻ったと」

おぉー。流石保健医。
理解してるな。

「おいおい、先生。仮にも怪我人であんたの患者なんだ。少しは手加減してやってくれよ」
「それはそれは申し訳ありません。なに、ちょっとした嫉妬ですよ」

しれっと嫉妬と言う言葉を使う先生のセリフに、ガイは口をぽっかりと開けて、ルークは目を見開いた。

「嫉妬、ね。まぁ、確かにそうかもな。ルークがアッシュに猛烈なアプローチかけられたら、そりゃ心穏やかにいられねぇよな。恋人としては」
「えっ!?」
「この保健のせんせーって奴は、んっとに分かり辛いよなぁ」

くるっと背を向けてルークの手当する道具を取りに行ったんだろう、その背中をルークがジッと見つめている。

「照れてるぜ、ルーク。恋人が照れてるの見るなんて、しかもあの手のタイプが照れてるのを見るのはレアだぞ〜?」
「照れて、…ジェイドがっ!?」
「そりゃそうだろ。だって恋人に妬き餅妬いてる所見られてんだぜ?オレだったら死ぬほど恥ずかしいね。好きなら好きな程、な」

信じられないと言う様な顔で、でもこっちを向かないジェイドに違和感を覚えて、ルークはガイに頼んでゆっくりと地面に降ろして貰うと、痛む足を庇う様に歩きながら、ジェイドに抱き付いた。

「ジェイド…?」

何とかして顔を覗けないかと頑張るが、覗けない。
まぁ、あの身長差じゃ無理だな。
取りあえず、オレは少し後ろへと下がり、ドアへと背を預けた。
ガイも距離を取る為に、オレの横へと並ぶ。

「なぁ…、ホントか?ホントに妬いたのか?」

嬉しそうにルークがジェイドに問い掛ける。
すると、ジェイドは大きく息を吐いて、眼鏡をゆっくりと外し机の上へと置くと、ルークの手を引っ張った。

「おわっ!?」

大きくバランスを崩すルークを片腕で抱き上げ、足に衝撃を与えない様にするとそのまま…。

「んっ!?」
「………」

ジェイドの唇とルークの唇が重なった。
ついつい、突然の行動にオレは目を丸くしてしまったが、どうやら隣のガイも同じだったらしい。
数秒の沈黙。
それを破ったのは、ガイの雄叫びだった。

「おんぎゃあああああああっ!!」

…おんぎゃあっ、っておい…。

「ルークから離れろっ!!」

ガイがルークをジェイドから奪い返した。
けれど更にジェイドがガイから奪い返し、ふんっと鼻で笑い…。

「残念ですねぇ、ガイ。ルークは私の物なんですよ」
「ルークは物じゃないっ!」
「いいえ。『私のモノ』です。まぁ、当然私もルークの物ですが」
「ルークっ!!」

叫ぶように呼ばれてルークはハッとする。
ガイとジェイドの顔を見比べて、そっと口に手をやって…あ、真っ赤に染まっちまった。

「ルークぅっ!!考え直せっ!!こんなのと付き合ってると絶対お前が不幸になるっ!!」
「はっはっは。ガイは面白い事をいいますね〜」

…楽しいっちゃ楽しい会話だけど。ルークが可哀想だな。
てくてくと歩きジェイドとガイの間を行き来しているルークを没収するとルークの顔を覗きこんだ。
どうやら思考は停止している様だ。

「おーい、ルークー。生きってっかー?」
「……ゆー、り?」
「駄目っぽいな」

どうすっかなー…?
未だにルークラブな二人は戦いを起こしてるし…。
連れて帰って、ジュディスの所にでも連れてくか?
いっそフレンでもいいしな。
よし、そうしよう。
ルークを抱き上げて、保健室の外へ向かう。

「おや、ユーリ。私のルークを何処に連れて行くのですか?」
「んー?ルークを手当てしてくれそうな奴のトコに」
「って、ここに保健医(ジェイド)がいるだろう」
「だって何時までたっても手当てしてくれねぇだろ?だから、外のフレンか、ジュディスの所に連れてくわ。最悪おっさん、レイヴンせんせーでもいいしな」

言うとガイがはっと我に返った。
と言うよりはいい案が浮かんだと言う顔で笑いジェイドを見て一瞥くれるとオレに向き直った。

「そ、そうだよな。ここでジェイドに頼むよりは良いかもしれないなっ。ルークを離せるしなっ」
「おやおや。すっかり私が悪者ですか」

きらりと眼鏡が輝く。
その言い方と表情が自分を悪者にしてんじゃねぇか?
思わなくもなかったが、それを口にするのは止めておいた。すると、オレの代わりに惚け切っていてルークが口を開いた。

「……ジェイド、今、俺に、キス、した?」

かたこと。
うっかり笑いそうになるのをぐっと堪え、ルークかもしくはジェイドの言葉を待つ。

「えぇ、しましたよ」

けろりと言う。
ほんとこの鬼畜は躊躇いって事がないんだな。

「な、んで?…俺に手出す気なかったんじゃねーのか?」
「おや。いつ私がそんな事を言いました?」
「え?だって、この前…俺には色気が無い、って…」
「えぇ、確かに言いましたよ。貴女には色気は無い」
「やっぱりっ…」
「ですが、私は、ルークに手を出さないと言った覚えは無い」

…ほんっと、ほんっとにコイツは分かりにくい。
こんなんじゃ、ルークが勘違いしても仕方ない。
ジェイドは、真っ直ぐオレの方へと歩いてくると、そのままルークを受け取りベットに座らせる。

「寧ろ、私にはそちらの方が都合がいい。他の男にルーク、貴女を取られずに済む」
「…ジェイ、ド……、ほんとに?」
「…何がですか?」
「本当に、俺の事、好き?」
「……好きでない人間に、ましてや生徒に手を出すなど。そんな危険な橋を私が渡ると思いますか?」
「…ジェイド…」

ぼろぼろとルークの瞳から涙が溢れる。
きっと色々ルークも考えたんだろう。
ジェイドが自分を恋人にしてくれた訳を必死に探して。
でも自分に自信が無いから、それも見つからず。そんな中、突然に色気が無いとか言われたら…悩まない訳がねぇ。
一段落、だな。
ふぅっと息を吐き、視線を巡らせると…うっ。

「…ルークー…」

ガイがぼたぼたと涙をこぼして泣いていた。
あー…失恋決定か?
…仕方ねぇなぁ。

「ほら、ガイ。行くぞっ」
「……しくしくしく……」

泣くガイの襟首を掴み、オレ達は保健室を出ると、ドアの真横にフレンが壁に背を預け腕を組み、立っていた。

「…大丈夫そうかい?」
「大丈夫だろ」
「…そう、だね。ルークもジェイド先生の本音を聞けたみたいだし」
「あれを、本音って言って良いならな。さて、と。部活に戻るかな」
「うん。そうしようか」

フレンと並び歩き出す。
勿論ガイを引き摺ったまま。
…まるで屍だな。

「ルークぅ〜…俺の、俺の大事なルークがぁ〜…」

引き摺る背後から情けない声が聞こえ続け、ガイには悪いが、オレとフレンは笑えてしまった。
ガイの情けない声は部活が終わり、下校する時もずっと続いていたと言う…。
何ともまー情けない話だった。


※※※


夜になり、何時もの様にオレと先に帰っていたルークが食事の準備をして、一緒にテレビを見ながら食事をする。
後片付けをして、順番に風呂に入り、互いに自室に入って後は寝るだけ。
髪をタオルで拭きながらベットへと座ると、携帯が鳴った。
この音はメールか?
素早く画面をタッチして受信したメールを開くと。
差出人は…フレンから?

『今日は大変だったね。お休み、ユーリ』

…ははっ、ったくあいつらしい。
手早く返信すると、今度こそ毛布をめくりベットに潜り込む。
すると、コンコンと部屋の戸がノックされ、ドアが開いた隙間から赤毛がひょこっと顔を出した。

「どうした?ルーク」
「…一緒に、寝ていいか?」
「へ?」
「……駄目、か?」
「いや、別にかまわねぇけど…ほら、来いよ」

言うと、ルークの顔がぱあっと明るくなる。
中に入って来たルークは腕にしっかりと枕を抱きしめていた。
ドアを閉めて近寄って来たから、毛布を少し上げて、体を寄せてルークの寝る分の隙間を作ってやると、するっとそこへ入り込む。

「へへっ…」
「何だよ、変な笑い方して」
「ユーリってすげぇよな」
「そうかぁ?」
「おうっ。憧れる。何でも出来て、何でも知ってて…あのジェイドすら一目置いてて…俺、ユーリみたいになりたい…」

ルークがオレの方へとすり寄ってくる。
言ってる事もやってる事も可愛い。
これじゃああの鬼畜眼鏡も惚れるよな。
しかもお子様体温って言うか、すげぇホカホカして暖かい。

「俺、…俺、な…」

眠くなって来たのか、声がとぎれとぎれになって来た。
オレはそんなルークの頭をゆっくりと眠気を誘うように撫でる。

「……決め、たん、ら……」
「へぇ。何を、決めたんだ?」
「……ユー、リ…を…、観察、するって……」
「へぇー。オレを観察…観察っ!?ちょっと、待てっ!?」

そりゃ一体どういう事だっ!?
問い掛けようにもその対象は既に夢の中。
しかも気持ち良さそうに眠っている。
まさか起こして聞く訳にも行かなくて、仕方なくオレは眠る事にした。
翌日から、ルークは自分の発言をきっちりと有言実行し、オレは監視される事になる。
けど、それをまだ知らないオレはルークをしっかりと抱きしめ夢の中へと落ちて行った。



















アトガキっぽいもの。


匿名係長様からのリクエストでした〜(*^_^*)
お題は『ジェイルクとフレユリ(女体化) ラブより姉御なユーリ懐く短髪ルーク』でした。
もう久しぶりにルークを書いたので若干キャラが安定しなく…orz
頑張りましたがこんな結果に…wwwww
それでも気に入って貰えれば嬉しいです(^◇^)
因みにジェイドが手を出していないのは、ただ単にタイミングを見計らっていただけでございますwww
手を出す時は例え子供が出来ても出しますよ。
でもルークに嫌われるとそれはそれで望んだものとは違うのでじっくり成長を待ってますwww
それからフレユリ要素少なく感じますが、もうこの二人は最後まで行ってますwww
結婚の約束までしているラブラブな関係ですwwwww
さて。完成まで物凄く時間がかかってしまって申し訳ありませんでした…orz
それでは、リクエスト有難うございましたっ!!\(^o^)/