失くせないモノ
【9】
「んっ、んぅ、はッ…ァ…っ、んっ」
フレンの唇が何度も何度も、オレの唇と重なりあう。
その間に、フレンの手は様々に動き回り、オレを煽って行く。
さっきオレをイかせた時より幾分優しく、ゆっくりとまるで動きを、フレンをオレに感じさせるように。
足の間を割って入り、太腿の内側の皮膚が薄い部分を感触を楽しむように撫で上げ、その感覚にぞわりとまた意識をしてしまう。
「んっ…、本当に君は感じやすい。可愛いよ、凄く」
唇を離して、鎖骨の間に唇を落とし、吸い上げられる。
チリっと小さな痛みが走るけれど、それも違う感覚に塗り替えられる程に体が熱い。
「これなら…」
フレンが小さく呟いたかと思うと、フレンの手がオレの上方へと伸びた。
その手を無意識に視線が追うと、その手には小さな小瓶が握られていた。
オレのその視線に気付いたのか、フレンは静がに微笑むとオレの頬にキスをして、唇にキスをして、意識を逸らそうとする。
実際その荒々しいキスに意識を奪われ、フレンの手にある小瓶から意識が遠ざかろうとした、その時。
「んぅっ!?」
普段、自分でも触れない所に何かが触れる。
ぬるっとした何かがついているけれど、その感触はどうやらフレンの指らしくて。
抗議しようとフレンを睨みつけた瞬間、ぐっとその指が中に入り込んで来た。
「んーっ!?」
余りの不快感にオレはすっかり力は入らなくなってしまった拳でフレンの胸を叩きつける。
しかし、フレンは指を抜く所か押し込み、更にはオレに文句を言わせない様に舌を奪い取り、更に深くキスをした。
気持ち悪い。
中で指が縦横無尽に動き回る。
何とか抜いて欲しくて、オレは首を振り、キスから逃げると「抜け」とフレンに訴える。
けれど…。
「大丈夫だよ。直ぐに慣れる。けど、もし辛いなら、ほら、こうすれば…」
「ひぅっ!?そ、こ、さわる、ぁ、なぁ…」
フレンがオレの萎えかけたそれに触れる。
すると、悲しいかな。
男ってのは、直接的な刺激に弱い所為か、直ぐにそっちへと意識が切り替わる。
体の中を何かが動いて気持ち悪いけれど、それよりも前を扱かれる気持ち良さに体が染められて。
イきそうになりかけると、体の中の圧迫感が増し、後ろの指の存在を思い出させられる。
「ユーリ、分かるかい…?今、指が三本も君の中に入ってる…」
フレンもこうやって態と知らせて来るから尚更、意識して後ろに力が入ってしまい指を締めつけてしまう。
「そんなに締め付けないで。…そろそろ、いいか」
ずるりと指が引き抜かれ、行き成り中の物が無くなったそこは小さく収縮を繰り返し、それが分かる自分が恥ずかしくて堪らなくて、オレは顔を腕で隠した。
「君は、本当に可愛いな。ほら、顔、隠さないで」
絶対にこんな顔見せたくなくて、言う事を聞かずにいると、いきなり体がふわっと浮いた。
慌てて腕を寄せてフレンを見ると、オレの腰の下にフレンの膝が入れこまれ、直ぐに柔らかい…枕?に入れ替えられる。
肩にオレの足が担がれて、フレンはふっと笑ってオレの太腿にキスを落とし、そして―――っ!?
「、ふ、ふれ、ま、さか…」
「大丈夫。痛いのは、一瞬だけだから、ね、っ」
「―――ッッッ!!!!?」
熱い灼熱がオレの中に押し入って来た。
痛くて、苦しくて…。
オレは無我夢中で逃げだそうとする。
けど、フレンの腕が伸びて来て、オレを抱きしめ、それを許してはくれずぎゅっと腰を抑えつけると、一気に奥まで入り込んでくる。
「うぁあっ!?」
「くっ…、やっぱり、せまい、な」
腰にある枕がオレの腰の位置を上げさせて、何度か出し入れをされて着実に中に突き進み、その度に奥まで入り込みオレの背は弓なりにしなって、耐え切れくて瞳に貯まった涙が溢れた。
ぎゅっと無意識に目の前にあるフレンの背中に腕を回して、押し込まれる度に痛みに耐える為手に力が籠り、フレンの背中に爪を立てる。
何度か腰を押しつけられて、漸く動きが止まった。
「…ユーリ」
そっとオレの髪をかきあげて、現れた額にキスを落とす。
フレンのそのキスは今オレに強いている行為とは裏腹にとても優しいキスで。
まるでオレを落ち着かせる為にしているようだった。
何度も何度もキスを落とす。
「ユーリの中、凄く、気持ちいいよ…」
耳元で囁かれ息を吹きかけられて、体が震える。
その所為で中に入っているフレンのを絞めつけてしまい、自分の中に本来入る筈も無い物が入っている事に気付かされ、ぎゅっと瞳を閉じてしまう。
どうにかしてその意識を飛ばしたい。
今自分が置かれている状況を気の所為にしたい。
なのに、そうやって意識を他に向ける度に、フレンがそれを許すまいとぐっと中へ入り込む。
頭の後ろに腕を回されて、額にキスを落とされる。
「…ふふっ、…顔が真っ赤だ…。何時も、白くて綺麗な肌も、黒くて吸いこまれそうな瞳も、赤く染まっているね」
―――可愛い。
そう、吐息交じりの囁きを耳へと吹き込まれ、体に電気の様な衝撃が走る。
すると、フレンが一瞬顔を顰めた。
「ユーリ…。そんなに、締め付けないで。痛い、よ」
痛いと言った割に気持ち良さそうに目を細め、額にキスを落とす。
そんな状況と言われた言葉に恥ずかしさが勝り、無意識に力が入り中に入ったフレンのを絞めつけてしまったらしい。
体に力が入る度に中のフレンを絞めつけ、その度にそれが更にフレンに快楽をもたらしているのか、フレンのが大きくなって圧迫感が増す。
「ふ、れ…、ぁ、ん、ぬい、て…っ」
「……抜かない。何度も言わせないでくれ。君を、動けなくすると言った筈だ…」
「ぇ…?、ぅあっ!?」
唐突にフレンが腰を引いた。
確かに抜いて欲しいと
思ったけれど、こんな行き成りだとは全然思っていなく、ひゅぅっと喉を鳴らして息を吸い込む。
驚いたオレが体を落ち着かせようと思って息を吐いた瞬間。
「ひぁっ!?」
勢い良く再び入り込んでくる。
熱いと苦しいと痛いが入り混じってオレの頭を占拠していた。
逃げたくて、フレンのその腕の中から離れたくて、オレは手を振り上げる。
けれど、それはあっさりと抑えられて、腰を押しつけられる。
「動くよ。…動けなくするとは言ったけれど、出来るだけ傷はつけないようにするから」
ちゅっと頬にキスを落として、にっこりと微笑む。
その瞳が、青い筈のその瞳が、静かな炎を宿していて。
ぞくりと背が震えた。
ぐっと最初はゆっくりに、けれどフレンの動きは荒くオレの中へと入り込む。
「っ、れっ、ったい、ぃたいぃ…っ」
痛みに我慢出来ずに声が無意識に零れ落ちる。
涙が視界を塞いで、情けない位泣いているのに、フレンは決して動きを止めない。
それどころか、奥へ奥へとガツガツとオレの体を突いてくる。
男に抱かれている。
屈辱的な状況に、責めて声だけでもとオレは手で口を塞ごうとした。
しかし、それは謎の感覚に阻まれた。
フレンが何度も突くそこは、体中に痺れにも似た感覚をもたらした。
そこを突かれる度に手が震え、体が震える。
自分の体が、思う様に動かない。
―――怖い。
怖いコワイ、こわいっ!
「や、こわっ、ふれ、そこっ、や、んんっ!?」
必死に訴えた嫌だと怖いと訴えたその言葉はフレンの唇に吸収されて行く。
それでも、怖くて。
止めて欲しくて。
訴え続ける。
もう、止めてくれ。
抜いてくれ。
コワイ。怖いんだ、フレンっ!
お前が怖くて堪らない。
だからっ!
「…大丈夫、だよ。ほら…。僕に体、預けて…」
出来ないっ!
逃げたい一心で頭を振る。
すると、フレンはふぅと小さく息を吐き動きを止めた。
抜いて、くれる…?
じっとフレンを見るとフレンはオレの手をとり、指先を口に含んだ。
ぴりっと指先に全神経が集まったみたいに、フレンの舌の動きをリアルに感じる。
「ユーリ…、怖くない。…怖く、ないから」
「だ、だって、からだ、が…ぞわぞわ、して…」
「それは、気持ち良くなる、前兆だよ。抵抗しないで、怖がらないで、受け入れて…」
そっとオレの手を離して笑う。
何言って、…受け入れる?
理解する前にフレンが再び動き出す。
気持ち良くなる前兆?
フレンを、感覚を受け入れる?
分からない。
分からないけど、フレンの言葉が頭の中をぐるぐると回る。
受け入れたら、楽になる?
怖くなくなる?
ふと力が抜けて、フレンが深く入り込み、中を一層強く押し付けられて。
「ぁあっ!?」
自分の声とも思えない声が漏れた。
するとフレンがとても嬉しげに微笑み、動きを速め、更にすっかり起ち上がったそれに手を触れて一緒に刺激を与え始める。
さっきまで痛かった。
確かに痛かった筈なのに、その痛みすら飲み込む感覚の波がオレを包む。
部屋の中にフレンとオレの荒い息とフレンがオレの中を出し入れする音だけが響く。
ぐちゅと耳を塞ぎたくなる音。そして急激に登り始める射精感に抗う事が出来ず、オレはそのまま達していた。
体が射精により、強張り中のフレンを絞めつける。
一瞬フレンの体が震えたかと思うと、オレの中に熱い何かが吐き出される様な感覚が広がった。
丸で全力疾走した後みたいな呼吸をゆっくりと整え、漸くフレンがオレの中で達した事に気付く。
中に、フレンのが…。
何を意識した訳でもなく、ただ、手を動かし下腹部を撫で、自分が吐き出したもので手が濡れた。
「…まだ、動く力はあるみたいだね」
下腹部に触れていた手をフレンは掴み、ちゅっと態と音を聞かせる様なキスをして、オレが驚いている間に、腰の下に腕を回され一気に抱き起こされた。
抜かれずに無理矢理態勢を変えられて、痛みに一瞬声を漏らしてしまう。
フレンと向かい合う様に抱き合い、しかし体を起こされた事により、更に深くフレンのを飲みこんでしまい、けれどそれに抗おうと足に力を必死に込める。
でも、それもフレンにあっさり見つかり、オレの腰に片手を添えるとぐっと下方向に力を入れられ、奥へと誘い込んでしまう。
さっき無理矢理与えられた快楽を、体が欲しているのか、フレンの動きに素直に従う自分がいて…。
こんな風に快楽に従っている自分が嫌で、オレは最後の抵抗を試みた。
渾身の力を拳に籠めて…だが。
「無駄だよ。…ユーリ」
読まれていた。
腕を背に回させる様に抱きしめられ、キスで全ての行動を封じられる。
更に追い打ちをかける様に、腰を動かされ始め再びオレの思考は快楽に飲み込まれて行った。
さっきよりも、強く中を押しつけられて、体が震える。
呼吸すら満足に出来ないのに、与えられる快楽に答えて声だけが零れ落ちて行く。
フレンと擦れる肌にすら、気持ちいいと思い始めて…。
オレはまたフレンに誘われるまま、達していた。
けれど、フレンの責めは止まらなかった。
そのまま、ベットへとオレを押し倒し、もっともっとと奥へと侵入を続ける。
「も、っ、むり、ふれ、むりぃっ」
訴えるその言葉はフレンに届く事無く、フレンはオレの体を求め続ける。
何時になったら終わりが来るのか…。
そんな恐怖すら感じる中、オレは何時までもフレンに揺さ振られ続け、最終的にはそのまま意識を手放していた。



