親ユリ姫





多分…昔。ある所にチューリップ畑の一輪のチューリップの花から生まれた親指サイズの姫がいました。
黒いチューリップの中で、生まれた姫はそれはそれは可愛らしく…。

「また、オレが姫役かよっ!」

悪態をついていました。
真っ黒のドレスが姫にはとても似合っており、その美しさに、虫達は賛美を姫に贈りました。

「ユーリっ!僕、虫の役嫌だよっ!」
「オレだって、姫役嫌だっつーのっ!だいたい、180センチの親指姫ってどうなんだよ。どんだけでけー親指なんだよ」
「虫、嫌い。虫、恐い。虫、嫌い。虫、こわ…」
「おぉーい、聞いてるかー?帰って来ぉーい。カロルー」

姫が、虫さん達?と楽しくおしゃべりをしていたその時でした。
ピョンと行き成りチューリップの上に現れたヒキガエル。

「ひゃーはっはっはっはっ!!来たぜぇ、来てやったぜぇっ!!勝負、勝負だユーリィっ!!」
「げっ!?ザギっ!?」
「さぁっ、登りつめようぜぇっ!!ユーリィィィィっ!!」

それはそれは突然攻撃をしかけてきたヒキガエルに姫は応戦するしかありませんでした。
とにかく、虫達を巻き込む訳にはいかない。
姫はチューリップとチューリップの間を飛び、チューリップ畑を出て、池の近くまで逃げました。
そして、剣を片手に応戦します。
ギィンギィンと剣がぶつかる音が鳴り響きます。
本当にこれは童話何でしょうか。
なぁーんてそんな事を言っても考えてもいけません。
姫は間合いをとり、

「喰らえっ!!天狼滅牙・風迅っ!!」
「ぐああああっ!!」

剣から生み出された風がヒキガエルを弾き飛ばした。
ヒキガエルが風と一緒にどっかへと吹っ飛び、姫は漸く一息つけました。
すると池から顔を出した魚さん達が姫へと声をかけました。

「ユーリっ!流石ウチの婿っ!ザギを一撃で倒すとはっ!」
「うおっ!?何だよ、パティ。いきなり話しかけんなよ。ビビる」
「ふっふっふ。そんなにビビっていないくせに」
「……まぁな」
「所で、花から降りてしまって、これからどうするのじゃ?」
「あー…。それなんだよなー。流石にあんな高い所に戻る事は出来ねぇしなー…」

そう言って、姫は自分がかつていた高い高いチューリップの花を見上げた。

「戻れないなら、仕方ねぇな。ちょっと、旅でもしてみっかな」
「おぉーっ!さっすがユーリなのじゃっ!ならウチも一緒に行くぞっ!!ウチの船に乗るのじゃっ!!」
「サンキュな。パティ。助かる」

姫はお魚さん達の厚意に感謝しながら、お魚さんの船(背中)に乗り、池の上をスイスイと進みました。
そんな時でした。

「あ、せーねんみーっけっ!」

空から声がしてお魚さんと姫が一緒に空を見上げるとそこにはコガネムシがっ!?

「あぁ?おっさん?」
「おっさんっ!何しに来たのじゃっ!今ウチとユーリは新婚旅行中じゃぞっ!」
「いつからそうなったっ!?」

姫の言い分なぞお魚さんは見事にスルーするとスピードを上げ、コガネムシから逃げようとしました。
しかし、悲しいかな。
コガネムシの方が動きが早かったのです。

「せーねん、せーねん。ちょっと、おっさんに付き合ってよ。ね?」
「うぉわっ!?」
「ユーリっ!?」

コガネムシが姫の体を持ち上げ、高く飛び上がりました。

「おっさんっ!後で覚えとくのじゃああああっ!!」

お魚さんの雄叫び虚しく、姫はコガネムシに攫われてしまったのでした。

「んで?おっさん。何処に行く気だよ」
「んんー?着いたら分かるわよー」

そう言って小一時間。
空を飛び続けていると、急にコガネムシが急降下を始めた。

「お、おい?おっさんっ!?」
「ちょっと、休憩ー…。おっさん疲れちゃった」

そう言って、降ろされた場所はただの草っぱら。
回りは草だらけで何も見えない。
けど、姫は降りて来る時見つけたのです。
コガネムシ好みの女性を。

(っとに、おっさんは…)

自分を其処に置き、いなくなったコガネムシを見送り、姫はコガネムシを無視して散策を始めました。
特に目ぼしい物は特になく、どうしようかと迷ったその時。

「これは…家か?」

丁度いい。
ココが何処なのか確かめよう。
姫が家のドアをノックすると、ドアが開きそこに居たのは野ネズミの優しそうなお婆さんでした。

「はい。どちら様ですか?」
「悪い。ちょっと、色々あって、ここが何処だかわからねぇんだが、教えてくれねぇか?ついでに何か食うもんくれると嬉しい」
「まぁ。それは大変でしたね。どうぞ。上がってください」
「サンキュ」

姫は野ネズミのお婆さんに優しくして貰い、その恩返しとしてしばらく用心棒をやる事に決めました。
お婆さんに害なす者を斬り倒し、切り捨て…。
そうこうしている間に、秋になりました。
辺りはすっかり紅色です。

「いい加減お嫁に来ませんか?」
「…お嫁って、いや、だからな?騎士団に戻る気はないって」
「そうですっ!!ユーリは、私達『凛々の明星』のモノなんですっ!そんなにしつこく誘ってユーリを連れて行こうとするなんてヨーデル何て嫌いですっ!!」
「エステリーゼ…。分かりました。今日の所は帰ります。でも、また来ます」

そう言って、毎日毎日、お金持ちのモグラさんは姫へプロポーズをしに通っています。
そして、またしばらく月日が立ち、とうとう野ネズミのお婆さんが折れてしまいました。
何故なら、お婆さんの所にお爺さんが帰って来たのです。
一人が寂しくなくなったお婆さんは、快く姫をモグラさんの家に贈りました。

「…オレは認めてねぇんだけど…」

モグラさんの家で姫は、辛い毎日を送っていました。
今日は、騎士の訓練が半端無かったのです。
そんなある日、姫は、一つの部屋を見つけました。
そこには一羽の燕が横たわっていました。

「お、おいおい。ラピード。どうしたんだよっ。その怪我っ」

慌てて走り寄り、姫は手当てをします。

「ってか、何でお前だけ原寸なんだよ。でか過ぎ」
「くぅん…」
「なんだ?オレ達が小さすぎるって?仕方ねぇだろ。そーゆー話なんだから」

姫は毎日毎日手当てを続けました。
自分が辛い立場(ヨーデルの助手)に立たされようとも必死に手当を続け、やがて燕の傷は完治しました。

「ほら、行け。次はちゃんと気をつけろよ」

姫は笑いながら、燕を外へと帰してやったその日。
モグラさんと姫との結婚式(騎士襲名式)が決まったのです。
翌日、姫はとても綺麗な白のドレスを纏い…。

「何で騎士の襲名でドレスなんだっ!!」

襲名式の真っただ中。姫は只管に自分の恰好に文句を言い続けていました。
ですが、姫を取り押さえ、式が決行され今まさに、モグラさんとの誓いを交わそうとした瞬間。
突如燕が現れ、姫をその場から攫いだしました。

「助かった、ラピード」

物凄い速さで走り抜け、着いたのは花の国。
沢山の花が咲き乱れ、とてもとても美しい国の花の上でした。
花の上で空を見上げていると、そこに金の髪が美しい王子様が現れました。

「…ユーリ。待ってたよ」
「フレン…」
「さ、18禁解禁祝いにしようよっ!」
「断るっ!!」
「純白のドレスを着て僕の前に現れたって事はそーゆー事だろっ!?」
「お前が現れたんだろーがっ!!」
「ユーリ、大好きだよっ!!身も心も世間一般的にも全てにおいて結婚しようっ!!」
「ぎゃああああっ!!誰か助けろーーーーっ!!」

花の国の王子と結婚して親指姫はとても幸せにくらしましたとさ。
めでたし、めでたし。



そろそろマジで捕まりそうな予感がする…(ユーリ談)