カンデレラ(ユンデレラ番外編)
多分…昔。ある所に、『いい加減オレを姫役から外せっ!!』とすごまれ、しぶしぶ役を変更し、『それじゃあ、正統派で行きましょう?』と言われ大層美しい姫役になったカロル(シンデレラ)がいました。
「ねぇ、これって正統派なの…?僕男だよ?」
はて?誰にむかって呟いているのやら?
それはさておき。
カロルは毎日毎日、父親が連れてきた継母と義姉に苛められていました。
「………」
「おんやぁ?カロル君じゃないかぁ?」
「カロルっ!!何時まで掃除に時間かけてるのっ!?」
「…うぅ…。酷いよ。皆。なんで姉役にナンを持って来るのさ」
カロルは新しい配役を知らされず、色々期待していたのですが見事撃沈してしまいました。
「そう言えば、師匠っ。お城から『武闘会』の招待状が来ていました」
「なーにぃ?ボス。この喧嘩どうしますか?」
「魔物は悪だ」
「と言う事だ。ナン」
「はいっ!早速準備しますっ!!」
「……今の会話?本当に話通じてた?って言うか、『舞踏会』だし…」
部屋の隅で泣きながら一人掃除に明け暮れていると。
「カロルっ!何もたもたしてるのっ!?貴方この武闘会には出ないんだから、準備くらい手伝ってっ!!」
「う、うんっ」
強制的に準備を手伝わされ…。
「この『武闘会』はドレス着用が必須らしいの」
「えっ!?ナンのドレス姿っ!?」
一気にカロルのOVLはMAXまで上昇しました。
色々なお店を回り、ナンに似合うドレスを選び、
「アタシのより、師匠たちのを選んでよっ」
「…え…?」
やっぱり彼等もドレスを着るのかと想像し、OVLは見事不発に終了しドレスを持って帰宅。
その後が凄まじくカロルはこき使われ、泣く泣く化粧まで継母達に施しました。
そして、念願のナンのドレス姿。
は、見る事が出来ず継母達はさっさと舞踏会の会場へと行ってしまいました。
「あんなに頑張ったのに、あんまりだ…ナン…」
カロルは自室の屋根裏部屋でお星様を眺めながらシクシクと涙を流しました。
「なーに、泣いてんのよ。カロル」
行き成り姿を現したのは魔女(リタ)でした。
「だって、ナンのドレス姿…。僕頑張ったのにっ」
「あー、成る程ねー。ってかさ、あいつらドレス着て行ったけど何で?」
「え?だって『舞踏会』でしょ?」
「違うわよ。今回はちゃんと『武闘会』なのよ?」
「へ?だ、だってだってドレスは必須って言ってたよっ?」
「…何で…?ってか、今一状況が解んないわ」
「何で解んないのさっ。リタ台本読んだんでしょっ!?」
「あ、アタシが読んだのはアタシが必要な所までなのっ!!完全な台本はユーリ(王様)しか持ってないのよっ!!」
「ええええぇぇっ!!?」
「五月蝿いわよ、ガキんちょ」
「ど、どうしよっ。ナンが酷い目にあったりしたらっ」
「…どうもしないけど、いいわ。丁度試してみたい術があったのよ」
そう言って、取り出したのは南瓜とねずみ2匹。
リタが手を横に一線引くように動かすと、術式が現れカロル、南瓜、ねずみを一瞬のうちに変化させた。
「うわっ。凄いっ、リタっ!!南瓜が馬車になって、ねずみが馬になったよっ!?」
「ふふん。この天才魔導士様にかかればこんなモンよ」
「でも、僕の服をドレスに変える必要は無かったんじゃ…?」
「う、五月蝿いわねっ。ドレス着用が必須なんでしょっ!?アタシが間違えた訳無いじゃないっ!!」
「あ、そ、そうかっ」
「さっさと行って来なさいよっ!!」
「うんっ。ありがとう、リタっ!!」
「それ、試作の魔術だから12時で効果が切れるからねっ!!」
「分かったっ!!」
カロルはドレスを持ち上げ、馬車に乗り込む。
しかし、気付いて欲しい。
ここは、家の中。
しかも、屋根裏部屋。
だが、そんな事は一切気にも止めないで、天井をぶち破り、壁を崩壊させ、空飛ぶ馬車でお城へと向かっていった。
お城へ着くと、そこには見慣れた地獄絵図があった。
ドレスを着た厳つい男達が武器を手に戦っている。
もう、相手とかはどうでもいいようだ。
「所で、王子様さー」
「はい。何です?」
「どうして、こんな事にしちゃったの?おっさん、凄くびっくりなんだけど…?」
「だって、普通の『舞踏会』じゃ、つまらないってフレン(友人)が…」
「…あららー。おたくの友人はよっぽど前の台本が気に食わなかったのねー」
「???」
「だからって何もこんな仕返ししなくても…。結構意地が悪いのね…」
「何の話です?」
「いや、こっちの話。それより、その友人は今日来てないの?父として挨拶しないとね」
「いますよ。ほら、あそこに」
王子の指差す先には、黒髪の美男と剣を片手に戦っている友人の姿がありました。
「いい加減、僕のモノになってくれてもいいだろうっ!?」
「なってやっただろっ!!前の話でも、その前の話でもっ!!」
ガキィンッ!!
「いっつも最後のベットシーンで逃げるじゃないかっ!!」
「当たり前だっっつのっ!!お前何考えてるんだよっ!!」
「君のドレス姿に萌えてるだけだよっ!!」
「馬鹿かお前はっ!!」
バキィッ!!
「ユーリっ!!」
「そもそも、折角ドレスから逃げられるって思って台本書いたのに、勝手に書き直してんじゃねーよっ!!」
「大丈夫、凄く可愛いよっ!!」
「んな事聞いてねぇっ!!」
ガキィンッ!!
「綺麗だよっ!!ユーリっ!!だから、今日こそはっ!!」
「だああぁぁっ!!誰がお前に抱かれるかっ!!童話に濡場なんてないだろっ!!」
「作ればいいよっ!!」
「マジでお前の頭、作り直せっ!!」
周りにいる男達をそっちのけで、素晴らしい内容で争っている2人に王様は挨拶などとてもとても出来ませんでした。
なので、そっと王子に視線を戻し問いました。
「それで、王子は良さそうな人いたの?」
「え?あ、そうですよね。その為の舞踏会ですし。…えーっと…」
キョロキョロと辺りを見渡すと、とても人様に結婚しましたと宣言したくないような人達ばかりでした。
「難しいです…」
「そうねー。強そうなのは全部爺さんだったり、結構な中年だったりするもんねー」
「そう、です……あ、あれはっ」
「あれ?王子ー?どしたのー?」
王子は真っ直ぐ目的に向かって走っていきました。
「カロルっ!!」
「あ、エステルっ!!」
2人は再会を喜び抱き合いました。
色っぽさのかけらもありませんでした。
「カロル、可愛いですっ♪」
「あ、ありがと…。エステルも王子姿カッコいいよ」
「ありがとうございますっ♪」
ほのぼの〜…。
「ねぇ、エステル。ナン知らない?」
「え?そう言えば、先程新しい依頼がどうとか言っていなくなっちゃいましたけど」
「そっかぁ…」
「残念でしたね」
「うん…」
しょぼんとするカロルをエステルは慰めました。
そんな時。
ゴーンゴーン…。
「あ、12時の鐘です?」
「じゃあ、僕帰らなきゃっ。馬車の時間がっ!!」
「カロル、待ってくださいっ」
外へ飛び出し階段を降りるカロルをエステルが呼び止めた。
「ごめん。エステルっ。約束を破るとリタがっ」
「でもっ」
「そうだ。エステル」
「はい?」
「僕ね。エステルのドレス姿見たかったな。なんだかんだで、僕ドレス姿のエステル見たこと無いから」
「カロル…」
「じゃあ、またねっ」
階段を駆け下りるカロル。カッコよく去ろうとした瞬間。
ガシリと持ち上げられた。
「え?え?何?」
「とにかくっ!!オレはお前と繋がるつもりはないっ!!」
「ユーリっ!!待つんだっ!!」
もう『台本?何それ?美味しいの?』な状況で、ユーリに担がれカロルは闇に姿を消しました。
「ガラスの…靴。カロル…」
「ユーリ…絶対に君と寝てみせるっ!!」
エステルの儚げな雰囲気をフレンは台無しにした。
そして、翌日何時もの様にカロルは苛められながらも仕事を終え、台所で洗い物をしていると玄関の方から話し声が聞こえてきました。
ちょっと、気になり玄関をこっそりと覗き込むと、そこには…。
「通して下さい。私はカロルに会いに来たんです」
「それは出来ません。お姫様は、さっさとお城に戻ったらどう?」
エステルとナンが戦っていました。
「カロルは、私が探していた最初で最後の…」
「エステルっ!!」
カロルはエステルに走りよりました。
「カロルっ!!」
「エステルっ!!」
「迎えに来ました。カロルが言った様にドレスで…」
「エステル…。うん。凄く似合ってるよ。やっぱり、エステルは男の格好よりそっちのがいいよ」
「カロル…。これを」
「これは、ガラスの靴…?」
「行きましょう。カロル」
「うんっ!!」
ナンは大切だけど、僕はエステルの方がもっと大切なんだ。
カロルはエステルと手を繋ぎ仲良く城へと帰って行きましたとさ。
そして…。
「ユーリっ!!愛してるよっ!!」
「だったら、この手錠外せっ、馬鹿野郎っ!!」
ずるずると引き摺られ、隣の国へ強制連行されたユーリはそのまま……。
だったとさ☆
めでたしめでたし☆
誰か助けろーーーーっ!!(ユーリ談)



