黒うさぎと金のかめ





多分…昔。ある所に働き者のかめさんがいました。

「さ、今日も職務だ」

かめさんはとっても働き者で、毎日毎日お仕事を頑張っておりました。
かめさんはお城に使える騎士さんです。
今日もみんなの為に働いています。
そんなかめさん。
今日の職務は、山の頂上にある花をお姫様へ届ける事でした。
お姫様は、お城に監禁されており楽しみは本とかめさんが届けるお花だけだったのです。
だから、今日も今日とてお花を調べ山へ向かいます。
ゆっくりゆっくり。
一歩一歩確実に歩いていきます。
山の下までようやく到着すると…?

「よぉ、フレン、今日も仕事かよ」
「ユーリ?」

後ろから黒ウサギさんが走ってきました。
それはもう素晴らしい毛並みの黒ウサギさんです。
かめさんはこの黒ウサギさんが大好きでした。

「ユーリこそ。どうしたんだい?」
「ちょっとな。山の上にある花畑に用があるんだよ」

なんと、目的地は一緒だったようです。
これは、一緒に行かない訳にはいきません。

「目的地は一緒か。じゃあ、一緒に行かないか?」

意を決して、お誘いします。しかし…。

「やだよ。お前足遅いから」

あっさりと叩き斬られてしまいました。
しかも、ちょっと腹が立つ言葉つき。
かめさんは反論しました。

「むっ。別に遅いわけじゃないよ。少なくとも君よりは早い」
「はぁ〜?今は亀の分際で何言ってやがる」
「好きで亀になってるわけじゃないよ。クジで亀役になったんだから仕方ないだろう」
「そうかよ。んじゃ一つ、競争でもしてみるか?先にあの山のてっぺんに着いた方が勝ち。どうだ?」
「いいだろう。やってやる。ただし、ユーリが負けたら僕の言う事一つだけきいて貰うから」
「面白ぇ。いいぜ、のったっ」

二人とも勝つ気満々でした。
そして、よーいスタートで、二人は同時に山へ向かいました。
黒ウサギさんは猛ダッシュ。
あっという間に姿が見えなくなってしまいました。
しかし、かめさんはまだスタートから歩き始めたばかり。
ゆっくり、ゆっくり…。
一歩ずつ、一歩ずつ…。
かめさんは歩いていきます。
せっせ、せっせと。

一方黒ウサギさんは、山の中腹まで辿り着いていました。
しかし、流石に走り続け疲れてしまい、野原に座り込み休憩を取ろうと思います。
ごろんと横になり、空を見上げ雲を眺めていると、穏やかな陽気に心を奪われ、うとうとと眠りについてしまいました。
黒ウサギさんはとてもとても大きな失敗をしてしまったのです。
ですが、そんな事に気付きもせず、黒ウサギさんは気持ちよくお昼寝を貪ってしまいます。
そこへ、せっせと歩き続けていたかめさんが通りかかりました。
かめさんは思いました。

(っ!?ユーリが寝てるっ!?か、可愛いっ!!ウサミミつけてお日様の下ですよすよと気持ち良さそうに…。どうしようっ。据え膳食わぬは男の恥って言うよねっ?でも、今は職務の最中だし…。……自分に縛り付けとけば…、いやでも、目覚ましちゃうし…。ゴールすれば取り敢えず僕のモノだよね。しかし…このユーリも捨てがたい…。…職務の花は帰る途中にある別の花を採っていけばいいし、今○○○してしまえば腰痛くて動けなくなってどうせ僕の勝ちになるし…でもなぁ…。あっ!!そうだっ!!頂上に行ってお花とって戻ってこようっ!!)

かめさんは決意しました。
そしてまた歩き始めました。
途中、運送業を営んでいるモグラさんをチャーターし、てっぺんまで運んで貰うと、花を摘み再び黒ウサギさんの所へ戻りました。
やはり、黒ウサギさんはまだお昼寝中です。
それもそのはず。
かめさんの往復時間は三十分とかかっていないのですから。

(エステリーゼ様へのお花も採ったし、ユーリの狙いの花がどれだか分からないけど咲いていた花を一通り採ってきたし、いいよね?)

黒ウサギさんはとてもとても大きな失敗をしてしまいました。
それは…。

『かめさんの前で無防備にお昼寝をしてしまったこと』…でした。

かめさんは黒ウサギさんをきつくきつく抱き締めました。
流石にそれに気付いた黒ウサギさんは目を覚まし、抵抗をしました。
しかし、力勝負ではかめさんには勝てません。
なぜなら立派な手と足があるからです。

「さ、ユーリ。今度こそ一つになろう?心も、体も…ね?」
「ね?じぇねぇっ!!放せっ!!結局このオチかぁーっ!!」
「ユーリ、ここにお花があるでしょう?」
「えっ!?花…?まさか…?」
「勝負は僕の勝ち。だから、腹括ってね?」
「マジでかーっ!?」

……。
えーっと…?
……………黒ウサギさんは金のかめさんと幸せになりましたとさ。
めでたしめでたし♪

幸せなわけあるかーっ!!…ぃててっ…。(ユーリ談)