ひだまりの下で…。
※ ちょっと(…だと思う)グロ要素有。苦手だったらごめんなさい(T_T)
※ 強姦まがい(まがいっつーか強姦です…)の所があります。
【5】
腹が痛い…。
そして、あいつ等に滅茶苦茶腹が立つ。
腹をさすりながら、オレは天井を見た。
あの時、オレは殴られてバランスを崩したが、別に意識を失ってはいなかった。
その証拠にしっかりと武器は手の内にある。
ってゆーか、あいつ等バカか?
武器を持たせたままってどうなんだ?
むくりと起き上がり、キョロキョロと辺りをみる。
…ここは?
あいつ等の走った距離から考えて、城からそんなに遠くなさそうだ。
しかも、部屋を照らす明かりは蝋燭一本。んでもって、鉄格子。ベットは安い感じ。
それこそ、城の牢にそっくりだ。
でも、しいて言うなら…。
「お母さあんっ!!」
「ママぁーーっ!!」
「うわああああんっ!!」
と子供の声が大合唱で聞こえる事だろうか。
完全に脅えてる。
何でそんなに脅えてるんだ?
って当然か。親はいない。しかもこんな寒くて暗くて血生臭い場所…って、ん?
側にあった蝋燭を掴み、鉄格子に近寄りその先を照らすし、息をのんだ。
「…っ!?、な、んだ……これは…?」
そこには大量の血のついた、医者が使う様な診察台があった。
それには縛るベルトがついていて、そこには切断された手足が残って……気持ち悪ぃ…。
…こりゃガキ共がびびって当然だ。
どうやら子供の手足だと言う事が大きさで分かり、悪かった気分が更に悪化する。
さて、どうやって逃げるか。
何かないか?と辺りを照らす。
ここは、実験室の様だ。
棚には臓器が薬品に漬けられて飾られている。
どれもこれも子供の大きさ。…ちょっと待てよ?
なら何でオレがここにいるんだ?
こういっちゃなんだが、出るとこ出てる立派な大人だと思うが…?
しかし、それに対して答えが出る様なものは特にない。
…内部はどんな形してるんだろうか。
出口が何処か分からなければ、逃げるに逃げられん。
それに…出来る事なら、隣で泣いてるガキ共も助けたい。
ここの出口は…あれか?奥にある階段。
上に続いてる。
そう言えば、この牢は…。
思い立って、牢の中に戻り、あちこちを照らす。
するとやっぱり、【窓】が無い。
間違いなくここは地下だ。
だったらやはり階段を上らねばならないだろう。
少し歩いていると、カランと何かを蹴飛ばした。
明かりを近付けると、それは…まぁ、世に言う所の頭蓋骨って奴で。
今更こんな物にビビったりはしないが、普通の女ならビビるよな。
あと、得るべき情報は、あの黒服がどんな奴かって事か。
「おい、隣にいるお前ら」
「ひぐっ!?」
「お前ら、ママに会いたいか?」
聞くと、ガキ共は会いたいと声を大にして答えた。
そんなにデカイ声で言われるとばれる。
慌てて声を下げるよう言うと、声は小さくなった。
話しが通じる所を見ると結構年齢は高いか?
取りあえずガキ共に話を聞く限りだと、ここに黒服が来るのは、一日一回。
しかも今日の巡回は終わったらしい。
なら、今がチャンスじゃねぇ?
オレは手に持っていた刀で牢の鍵を壊す。
…ちょっと、まだ腹が痛ぇな。
パタパタとポケットを探ると、運のいい事にアップルグミとリキュールボトル。
グミを口に含み咀嚼して飲み込むと、腹の痛みが和らいだ。
後…リキュールボトルなんだが…一応飲んどくか。
小さいボトルの液体を飲みほし、牢を出る。
蝋燭をもって隣の牢を覗き込むと、そこには三人の子供がいた。
金髪ロングヘアを大きな赤いリボンで一つまとめにしている女の子、緑のショートヘアの活発そうな男の子。そして、赤いツンツン髪をしたいかにもやんちゃそうな男の子の三人。
「今、鍵あけてやるからな」
しーっと口元に人差し指をよせ、声を抑えさせると鍵を破壊した。
牢を開けると、そっと三人が出て来る。
奥に一人人影がある…。
明かりを奥に向けると…駄目だった。
両目と手と足が無い…。
あの台についていた手と足はあの子のか…。
もっと奥にも死体が転がっていた。その中に、やたら身なりのいい眼鏡をした女の子の死体が並んで二つあった。
互いに助け合う様な形で倒れている。あれは…あの金髪はもしかして…。牢の中に入り込んで、その死体を照らすとマリアの面影がある。
…間違いない。マリアの姉妹だ。売られたんじゃない。…臓器を取り出されたのか。
オレはゆっくりとその場を離れた。
…ここを出たら、騎士に供養してもらおう。
オレは先頭を立ち、階段を上って行く。
子供たちには絶対に離れるなと言って。
しばらく黙々と階段を上る。
漸く、行き止まりに辿り着く。
このまま出ると流石にヤバいだろう。そっと薄くドアを開き中を覗くと、明かりが目を刺す。暗い場所にいた所為だ。少しずつ目をならし、辺りを盗み見る。やはり貴族の家らしく、そこかしこに立派な装飾品、壁には有名画家が描いたらしい絵画。そして、立派なベットが二つ。どうやらここは客室の様だ。しかし、ここに隠し部屋を作って置きながら、そこには誰もおらず警備してるやつすらいない。
…罠か?
だが、罠にしては…?
こんな風に誰もいなくして、いかにも罠と分かる仕掛けをするだろうか?
オレは意を決して、刀を何時でも構えれる様にしてドアを開けた。
が、反応はない。
…マジで誰もいないのな。
取りあえず広い建物の中を走り、エントランス的な豪華なシャンデリアのある無駄に広い場所に出る。
そこで気付いた。
人がいないんじゃない。
オレが倒す迄もなく赤い絨毯の上に気絶させられている。
…何でだ?疑問に思わなくもないが。まぁいいか。と子供らの牢にあった、多分連れて来る時に使われた縄でそいつらを縛り上げる。
これで目を覚ました時も動けないだろ。
そのまま、この建物を出ようとした、その時。
「いやあああああああああっ!!」
血が引くような…叫び声っ!?
もしかして、まだ人がいるのかっ!?
しかし、オレの手は今こいつらで手いっぱいだ。
…だったら、まずする事は、決まっている。
オレはガキ共を連れて、建物から飛び出した。
勿論、正門からじゃなく、窓から。
窓の外には草が生い茂っており、子供三人を隠す位なんてことはない。
それにここなら玄関が直ぐ見える。
…予想通りここは、貴族街だ。
なら、きっとフレンが巡回する。
「いいか。お前ら。絶対ここから顔出すなよ?」
「う、うん」
「何があってもずっと伏せてろ」
「うん」
「そうしたら絶対、フレンって名前の金色の髪をした騎士が、そこの道を通りかかるからそいつに助けてって言うんだ。分かったな」
「うん」
良い子だ。
そう言って笑うと、ガキ共は不安そうな顔をした。
そう言えば、フレンも昔こんな顔してたな。
…フレン、あの時何を言おうとしてたんだろう…?
ふと頭を過る。
…フレンの声が聞きてぇな…。
柄にもなく思う。
オレでも、こんな女っぽい事思うんだなと逆に驚いてしまう。
そんなオレが自分に苦笑しているとガキ共は更に不安そうな顔をしてしまった。
「こら、ライもビートも男だろ?んな不安そうな顔してねぇで、ソラを守ってやれ。いいな」
オレが言うと、二人は力強く頷き、ソラも二人の手を握り締めて頷いてくれた。
そして、オレは建物の中に戻る。
さっきの耳を割く様な叫びが嘘の様に静まり返っていた。
慎重に部屋を一つずつ確認する。
部屋の数は多いけれど、人はいないようだ。
となると、あの声の主だけ。
階段を更に昇り、真っ直ぐ前にある部屋へ向かうとそこにはやはり倒れた警備の二人。
待ったなしで勢い良くドアを蹴破ると、そこでは、オレの腸が更に煮えくり返りそうな、状況があった。
大きな貴族らしい立派な天蓋付きベットの上でいかにもお貴族様で白髪ロングの、いい年した腹の出た醜い爺さんが一人の女を【犯して】いた。
が、オレが入って来た事によって、動きは止まり、女の視線がオレとかち合い、必死に助けてと訴えている。
「…なんじゃ、お前は」
「オレの事なんてどーでもいい。あんた、何してんだ?」
「ふん。見て分からんか?」
「分かんねぇな。爺が嫌がる女を無理矢理犯している様にしか」
「何を言っとる。こんなに喜んどるのに。ワシの子を作る事を幸せに思っとるんじゃ。邪魔をするで、ないっ」
「いやぁっ!!」
ぐっと爺の腰が女の奥深くに突き刺さる。
この爺っ!!
かっと頭に血が昇り、そいつの脳天に愛刀の一撃を喰らわしてやるっ!!
刀を振り上げた瞬間。
「うぐぁっ!?」
「うぅっ!?」
目の前の二人がいきなり苦しみ始めた。
胸を押さえ、爺に至っては、自分の首を引っ掻き始めまるで呼吸が出来ないみたいに苦しみ、女から自分のを引きづりだし空気を求める様に這いずり回る。
その点、女は、爺が離れた所為か、苦しみから逃れる事が出来た様で、大きく呼吸を繰り返してる。
良く分かんねぇけど、今がチャンスだ。
女に近寄り、オレの上着を脱いで肩からかけてやり、そして、守る様に抱き寄せる。
女もオレが同性だと気付いて安心して抱きつく。
「なんで行き成り苦しんでんだ?この爺?」
聞いても女も知らないらしく青くなった表情のままブルブルと首を振った。
何か。
何か原因が?
ヒントは無いかと辺りを見る。立派な本棚に机、高級ワインにグラス。このクソ爺が来ていたと思われる服。
特に気になる所はないと、ふと視線を上げて気付いた。
窓の外に、浮かんでいる蒼い光。
シャボン玉のような光の膜の中心にいた、…それは。
「マリアっ!?」
その蒼い光は、どんどん強くなって行き、それに比例するように爺がどんどん痩せていく。
まるでミイラのように細くなり…。
「駄目だっ!!マリアっ!!止めろっ!!」
こいつは、知ってるんだ。
親を殺したのが誰か。自分の兄弟を殺したのが誰か、を。
どうやってその力を使っているか分からない。
けど、きっと外にいたあの警備の連中も今のたうち回ってる爺程では無いにしても、こうして意識を奪われたに違いない。
「マリアっ!!」
オレは、走りだしていた。
外に浮かぶマリアを両手を広げて抱き寄せる。
しかし、その蒼い光は消えない。
「マリア…。駄目だ。お前が、こんな汚い奴の為に手を汚すな。マリア…聞こえてるか?」
辛いよな。
苦しいよな。
でも…。
「こんな腐れた爺、殺してもお前の父ちゃんも母ちゃんも姉ちゃんも弟も返って来ないんだ。…分かるか?」
蒼い光がどんどん小さくなっていき、マリアは漸く暴走を止めた。
「良い子だ。マリア…。良い子だな」
この年で身内の死を受け止めたんだ。
良く頑張ったな…。
そう言いながら、マリアの頭を撫でてやるとマリアは全力で泣きだした。
この声を懐かしく思いながらオレはほっと一息ついていると。
「ユーリっ!!」
ずっと心の何処かで求めていた声が、心に響いた。



