君とお前と歩む為に。11
―――事の発端はこれだ。
『騎士団とギルドの抗争』
あの星喰みを倒し、世界で起きた暴動を抑えている最中にそれは起きた。
それに逸早く気付いたのは多分、俺だ。
ギルドの依頼で別行動していた時に突然訳の分からん奴らに襲われた。
そんな奴らに負ける俺じゃないが、あいつらは見覚えの無い武器を所持していた。
どうにも、新型の魔導器らしい。
リタ達、アスピオの魔導士達が考え出した技術を横流しして『騎士団』と『ギルド』を再び争わせ金儲けをしようとしている集団がいる。
それが俺を襲った奴から無理矢理引き出して得た情報だった。
とにかくコレを誰かに伝える必要があったのだが、何せ情報を知ってしまった俺を相手も逃がすわけが無い。
ダングレストに急ぎ、たまたまそこに居合わせたレイヴンにこの状況を伝えた。
あのおっさんは行動だけは早いからな。(ちょっと、青年っ!?それは酷くないっ!?/byレイヴン)
レイヴンが騎士団に連絡をしようとした。
―――ギルドの街 ダングレスト。
真っ直ぐ飲み屋に向かうと案の定レイヴンが酒を飲んでいた。
正しくは飲んだ暮れ?になっていた。
「よぉ、おっさん」
ようやく俺に気付いたレイヴンが酒を飲むのをやめて俺が席に座るのを待った。
馴染みのバーテンに何時もの酒を頼むと、しっかりと席につき、しばらく近況の報告をして本題に入った。
「…成る程ね。青年、よく生きて帰って来れたわねー」
おっさんに今の状況を説明すると、あっさりとした言葉が返ってきた。
「あんな奴ら、どうってことないけどな。でも、どうする?今騎士団とギルドに抗争が起これば…」
「…そうね。んじゃ、おっさんが一っ走りして騎士団長に伝えてきてあげるわ」
「悪ぃな、おっさん。頼むな」
何とか対応が出来そうだな。
おっさんの背を見送ると、自分の前にあるグラスに口をつけた。
フレンが動けば騎士団の方は大丈夫だろ。
となると後はギルドの方か…。
思考を巡らせていると、いきなり…。
「青年っ!!」
「っ!?」
出て行ったはずのレイヴンが走って、しかも珍しく真剣な表情で帰ってきた。
あまりに行き成りだった為、飲んでいた酒が気管に入って大いに咽せた。
しかし、いつもならこんな状況をからかうレイヴンが真面目に話を続ける。
「どうした?おっさん」
「…こんなモン渡されたんだが」
渡されたのは四つ折にされた紙。
開くと、そこには。
「…『ダングレストの市民街に罠を仕掛けた。発動させれば市民街全てが消える。それが嫌ならばユーリ・ローウェル。明日の夜貴様一人で街の外へ来い』…って、いい根性してるじゃねぇか。しかも、街の外って外の何処だよ」
「青年、どうする気?」
「ご指名頂いたんだ。行ってやるよ」
「おっさんも行こうか?」
「いや、いい。俺一人で来いって書いてあるしな」
「…大丈夫か?」
「ま、やばかったら助けてくれよ。とにかく行ってみてどうにかする」
「…いやいや、青年。何の策もなく行くのは駄目よ」
「だったらどうしろってんだよ」
行かなければ皆死んじまう。
だったら、俺が行って片付ければいい話だろ?
と思ったんだが、確かにレイヴンが言う通り作も無く行くのは危険か。
「幸い時間はあるし。奴さんが行動を起こす前にこっちも対処しときましょーや」
「で?どうするんだよ」
「…そうねー…。奴さんがどんな作戦を取ってくるか分からんが多分かなりの人数がいるだろうし、まずおっさんが市民街にある罠を解いて来るわ」
「おっさんが罠を解いている間に俺が時間稼ぎをするんだな?そうすれば確かに街の人も確実に救える」
「最悪の事態も考えていた方がいいわよ。例えば、倒しきれずに逃がしてしまった場合とか」
「ひでぇな、おっさん。俺がンな奴等に負けるとでも思ってるのかよ」
「だーかーらー、最悪の事態もって言ったでしょ」
「それじゃ、その時どうする?」
「…うーん。まー、ここは青年、いっそ死んだ事にしちゃう?」
「…は?」
「そうすればきっと動きやすいわよ?」
「…分かった。なら、もしもそうなった時の為フレンに手紙を書いておく。いざとなったらおっさん、フレンに渡してくれよ」
頷くおっさんを確認すると早速手紙を書いた。
―――その後。
おっさんが、罠を解いている間敵と戦い続けた。
しかし、おっさんの予想通りでかなりの人数がいた。
ひたすら戦い続け、おっさんが合流して更に薙ぎ倒していったが、やはり何人かに逃げられてしまった。
顔も割れてしまったから仕方なくおっさんの作戦を実行した。
そして、約束通り手紙をおっさんに託した。
俺の魔導器と一緒に…。



