輝鏡花、暗鏡花
【8】
隣で膝を折るユーリの手にそっと自分の手を重ねる。
「フレン?」
「…ユーリ」
ドサリッ。
ユーリを抱きしめ頭を庇う様に後ろへと押し倒した。
「ちょ、ちょっと待て。お前、何するつもりだ?」
「……ユーリを抱きたい」
「こ、ここ、外だぞっ?」
「……ユーリ」
「お、落ち着け。せめて街に戻ってから部屋で」
「ユーリ。…駄目、か?」
うっと言葉を失うユーリの額の髪を掻きあげてそこへキスをする。
目尻に、頬に、そして、唇に…。
触れるだけのキスを落とす。
「……駄目だろうか…?」
「そんな訳じゃ、ないけどよ…。けど、外は…その、な」
「…恥ずかしい?」
聞くと、ユーリは赤い顔をして必死に頷く。
それが可愛くて、僕は小さく喉で笑う。
でも止めるつもりは最初からない。
「そっか…。じゃあ、恥ずかしさを感じない位にしてあげるね?」
「えっ!?んんっ!?」
ユーリの唇を思う存分堪能する。
恥ずかしそうに、もじもじと僕の腕の中から逃げようとするけれど、僕がそれを許す筈もない。
繋いでいた手をそっと離し、ユーリの首筋をなぞる。
ひくりと体を震わせる。その反応がもう一度みたくて、今度はそこへ唇を寄せ吸い付ける。
「…ァッ…」
「…ユーリ…」
そっとユーリの開いた胸元に手を潜らせる。
ふにっとふくよかな胸に触れ、ぐっと軽く揉むとユーリはまた小さな息を吐き出した。
「…ちょ、…フレ、ン…」
「…ユーリ。お願いだから、僕を拒否しないで」
「…フレン…?」
「怖い…」
「…え?」
「君を失ったらと考えただけで怖かったのに…。君に悉くそれをまざまざと見せつけられて…」
胸の谷間に前付けた僕の痕。そこをもう一度吸いつけ痕を濃くする。
その度に反応を示すユーリが可愛くて、何度も何度も場所を変えて吸い付く。
「怖いよ。…君がいなくなるのが…。情けなくこんなにも手が震える位に怖いっ」
きっとユーリはもう気付いているんだろう。
僕の手が、ユーリに触れていないと僅かに震えているって事が。
ユーリは僕の震えに安心しろと言う様に微笑んだ。
「フレン…。…分かった。抱けよ。…抱いてくれ。フレン。お前がそれで安心するなら。オレの体、心、全てやるよ」
ユーリの手が僕の両頬を覆った。そしてその親指で頬をなぞる。愛おしい宝物でも触る様に。
ユーリが微笑む。
その笑顔が凄く綺麗で…漸く僕の胸の空白が埋まった気がした。
ぐっと服を開き肩から脱がし、現れたバストに顔を埋める様にキスを落とし、そっとその突起を口に含む。
「ンッ…」
反対は指で。少しずつユーリを追い上げて行く。
ただ気持ち良くなって欲しい。
僕を感じて欲しい。
僕を意識して欲しい。
そして、ユーリの心に僕がいることを感じさせたい。
僕を必要とさせたい。
ユーリを翻弄させたまま下着を脱がせ、何時も履いているボトムごと脱がせる。
ユーリのそこは既に濡れていた。
そこをそっとなぞると、ユーリの体がびくりと反応を示す。
そのままぐっと中に押し込み、何度もソコを抜き差するとユーリの体は素直に応える。
最初堪えていた筈の声が少しずつ溢れ始め、体を捩るように快感を逃がそうとし始める。
「…あ、…ぁ…ッ、ふれ…」
そろそろいいかな?
ずるりと指を引き抜き、僕は上着を脱ぐとユーリ体を少し浮かせその下に敷くと再び寝かせる。
ユーリの足の間に入りこみ、ボトムのボタンを外し自分のを取り出しそっとソコへ押し付ける。
このまま入って大丈夫だろうか…?
ふと不安が過る。だが…。
「…フレン、来い、よ…」
ユーリに誘われたら断れる訳がない。
そのまま腰を押し付けた。ゆっくりと押し込んで行く。
その苦しみに耐える様にユーリはぎゅうっと僕に抱きついて来た。
全て中に入りきると、ほっと一息つく。ユーリも小さく息を吐いて無意識に入っていた力を抜いた。
ユーリの顔をじっと見つめる。
顔を耳まで真っ赤にさせて、何時もの鋭い瞳はとろんと欲に濡れて揺れて、必死に呼吸を繰り返していた。
「…動いていい?」
聞くとコクリと頷く。
僕はゆっくりと腰を引き、一気に押し込む。
「ぁ…ん、ンッ…」
口に手を当てて必死に声を我慢するユーリの手を掴み手を繋ぐ様に地面に押しつけ、中へ中へと押し込む。
ユーリが気持ちいい場所だけを狙う様に。
「…ユーリ、声、我慢しないで…」
「うぁっ!?…や、ば、ばか、…あ、アァッ!?」
声を抑える手を寄せた所為でユーリは声を抑える事が出来ず、可愛い喘ぎ声が僕の耳を捕えて離さない。
もっと聞きたくて奥へ奥へと進み続ける。
「…ふれ、…ふれん…、あ、ぁっ!!」
それでも必死に声を堪えようとする。
まだ、恥ずかしさが残っているようだ。
「ユーリ、大丈夫だよ。暗鏡花が全てを隠してくれる…」
だから、僕だけを見ていて…。
ユーリの耳元に囁くとユーリは僕にきつく抱きつく。
そのまま、僕達は夜が明けるまで、暗鏡花に隠されながら最愛の恋人を求めていった。



