※ 繋げる気は無かったんです…orz
※ でも長くなっちゃって…。
※ やっぱり白衣っていいよね。
※ 黒髪のユーリに白衣…。ユーリに白衣…欲しい…。
※ そう言えば続・白衣の騎士にフレン記憶でしか出てないww
※ ネタばれ嫌な人は回れ右。(TOX、TOG、TOA、TOS−R、TOS)



続々・白衣の騎士





おっさんが病院を出て行ったのを見送り、オレ達はロビーを抜け二階の病室へと向かう為、階段を登り始めた。

「んで?ジュード。どうだった?おっさんの診察は?」
「あ、はい。レイヴン先生は、なんて言うか…」
「面白かったろ。どっちが医者か分からないよな」
「はい。患者さんから煙草止めろ、酒止めろ、女止めろのオンパレードで」
「患者って言うか、患者の父兄からな。あのおっさん。あー見えて、小児科だからなー」
「えっ!?」
「何だよ。気付かなかったのか?おっさんがオレの代わりに診てたのは全部ガキだったろー?」
「そ、そういえば…」
「父兄との会話も子供との会話も凄くスムーズで、子供がそっちを意識している間に診察と治療を終える。上手いやり方だよ」
「な、なるほど」
「だけど、医者としては見習ってはいけない所の方が多いのよね」

間違っちゃいないがあっさりとそれを言ってのけるジュディスにオレは笑いながら頷いた。
ジュードもそれは納得なのか一緒に笑っている。
なんだかんだ話していると、気付けば病室の前に来ていた。
因みにオレは病室に番号を付けるのは嫌で、入院した奴の部屋って形にしている。
だから、最初はソフィの部屋だ。
「ソフィ、入るぞー」と声をかけドアを開ける。

「あ、ユーリ」
「おー、ソフィ。診察に来たぞー。どうだ?調子は?」
「今日はなんともない」

ベットの上で本を読んでいた顔を上げ、オレに向かってニッコリ笑うソフィの頭を撫で、顔を覗き込む。

「本当かー?オレはソフィが物凄く嬉しいって顔してる様な気がすっけどなー?」
「どうして?」
「んー?」
「どうして分かるの?ユーリ」
「そりゃ、オレがソフィの先生だから、だな」
「そっか。ユーリ凄いね。あのね、あのね、ユーリ」
「お?」

嬉しそうに本を閉じ、オレに何かを耳打ちしようした、その時。

「ソフィーーーーーーっ!!!」

ドアをぶち破りそうな勢いで、ソフィの育ての親であるアスベルがスライディングでもするかのようにソフィの前に現れた。
そらーもう嵐の様な勢い+形相で。

「本当かっ!?本当なのかっ!?」
「アスベル?どうしたの?」
「お前、リチャードのプロポーズ受けたって本当なのかっ!?」
「え?どうして知ってるの?アスベル」
「う、嘘だーーーーーっ!!」

突然の事で何が何やら。
取りあえず分かってるのは、ソフィが、アスベルの同僚リチャードのプロポーズを受けたって事か。

「そう言えば、ここんとこ毎日リチャード、ソフィの所に通ってたっけ?」
「えぇ。ホントに毎日。ソフィの事が好きだったから通ってたのね。とっても素敵だわ」
「えぇーっと…僕達どうしたらいいんでしょう?」

手持ち無沙汰って奴か。
んでも、まぁ、ちょっと様子を見るか。

「お、お前が嫁になんてまだまだまだまだまだ先の事だと思ってたのにぃー……」
「アスベル、女性は一瞬の内に美しく大人になっていくものだよ」
「病院は静かにしなきゃ駄目よ。アスベル」

お、リチャード登場か。なんだ、シェリアも一緒か。
アスベルの婚約者、シェリアのその後ろにアスベルの実の弟、ヒューバートもいる。

「うぅぅ…。ソフィのウエディング姿。確実に可愛いっ。可愛いけどっ!!他の男のモノになるかと思うと……ソフィィ…しくしくしく」
「アスベル、泣かないで」

なんとまぁ…。微笑ましいやら何やら。
……ってか、そう言えば。アスベルも、リチャードもヒューバートもシェリアですらスーツ姿だ。

「おい、アスベル。お前、仕事抜け出してきたのか?」

オレの声に漸く、四人がオレ達が居た事に気付いたんだろう。
シェリアが慌てて、オレに頭を下げた。

「あっ!ごめんなさいっ!ユーリ先生。いつも、ソフィがお世話になってます」
「あぁ、いや、それはいいんだけどよ。それより、アスベルもお前達も仕事抜け出してきたんだろ?いいのかよ」
「いつか、こうなる事は予想がついていたので、この分の時間調整は何時でもとれるようにしてあります。ご心配なく」
「あのヒューバートもすっかり立派な秘書か。月日が経つのはホンット早いねぇ」
「あ、あの、ユーリ先生。昔の話は…」
「はっは、悪ぃ」

オレがソフィから手を離し、シェリアと向き合い顔を見る。
……ん?

「シェリア、ちょっといいか?」
「え?」

額に手を当て、手首に手を当て……んん?
グイッと体ごと引っ張り、ぎゅっと抱き締める。
幾分かふくよかになってる…。

「ゆ、ユーリ…い、一体何を…?」

アスベルの思考が停止しているのが見て取れる。
…あぁ、そうか。つい癖で。
でも、これは確実だな。

「…アスベル。おめでとさん」
「へ?」

目を白黒させているシェリアを離し、昔したように頭を撫でる。
そして、隣でわなわな震えてるアスベルの頭も同じように撫でる。

「シェリア、お前妊娠してるぞ」
『えっ!?』
「あら。おめでとう。シェリア」
「え?え?」
「おめでとうございます。アスベルさん」
「あ、ありがと…って、え?」

おーおー、完全に思考が停止してるぞ。
そして、いち早く我に返ったのは、なんとソフィだった。

「シェリア、お腹に赤ちゃんいるの?」
「ちゃんと検査してみないと何とも言えねぇけどな。でも、間違いねぇと思うぜ」

ソフィの言葉に自信満々に答えると、ソフィがまた嬉しそうにオレの手を引いた。

「私、お姉ちゃんになるの?」
「そうだ。良かったな。ソフィ」
「うんっ!」

それはそれは幸せそうな笑顔で。
そして我に返った、アスベルはこれまた嬉しそうにシェリアを抱き締めた。
しばらくは身内だけにしてやるか。
視線で二人に合図を送りそっと部屋の外へ出る。
ドアを閉めるその時。

「これで僕がソフィを貰っても寂しくないだろう?アスベル」
「それとこれとは話が別だぁーっ!!」

と聞こえたが、聞こえないふりをした。

「シェリアの赤ちゃん、楽しみね」
「そうだな。さて、次だ次。一人目で時間喰っちまった」

そして、二人目。

「ミラー。入るぞー」

ガチャリとドアを開けて入ると、床に大の字になって転がっているミラがいた。

「何してんだ?お前」
「うむ。歩けるかと思ったんだが…」
「…歩けるわけないでしょっ!ほら、ミラ。肩貸すから」
「すまないな。ジュード」

ふ〜ん。
なるほどなー。ウチに研修医が来るなんて可笑しいと思ったんだが、こうゆう事か。
ミラをベットへと戻し座らせると、ジュードがはっとして顔を赤くして戻って来た。
気にする事ねぇのにな。
誰だって大事な奴はいるんだから。

「んで、ミラ。どうだ?足の調子は」
「うむ。やはり思う様にはいかないな」
「そうか。痛みは?」
「この程度ならどうって事はない」

ミラに近づき火傷をした足に触れるマッサージをする。
フレンがしたんだ。治療は完璧だろう。
問題はこれからのリハビリなのだが、それもミラならば何の問題もなさそうだ。
寧ろやり過ぎが心配だったりするが、ジュードがいれば大丈夫だろう。

「ミラ。後でオレの代わりにラピードの散歩、また頼んでもいいか?」
「うむ。あれは意外に楽しいからな。いいだろう」
「サンキュ。ジュードも一緒によろしくな」
「はいっ」

マッサージを終え、後はジュディスに任せればいいだろう。

「ジュード、行くぞ」
「え?でも」
「これからミラの着替えだぞ?手伝うなら構わねぇけど」
「えっ!?あ、い、行くっ」

取りあえずミラも順調に回復している。
んじゃ、次行くか。
次は、コレット…。
部屋の前に立つと、どっと笑い声が…?
なんだ。友達来てんのか?

「コレットー。入るぞー」

中からハーイって声が聞こえる。
その声に誘われた様に中へ入ると、このせっまい病室に何だ、この人口密度は…?
ひー、ふー、みー……9人って…。
いやいや、それより。

「コレット、お前」
「はい。なんですか?先生」

……。
治ったんじゃね?
天使疾患って要するに、感覚を全て失う病気だ。
最終的に何も感じなくなる。感情すら無くなり、コレットは感情すら無くなった末期症状でウチの病院に緊急入院した。……んだが、あれ?
笑ってる、よな?
話してる…よな?

「コレット、オレとジャンケンしようぜ」
「うんっ。いいよ」
「勝った方がデコピン出来るって事で、じゃーんけーんぽん」

じゃんけん。
結果、オレがパーでコレットがチョキ。
オレの勝ちで、コレットにデコピンする。

「あちゃー。負けちゃった。先生のデコピンって痛いんだね」
「ま、痛くしたからな」

痛い。
って事は…。本当に治ったんだな。

「コレット。お前今週中にも退院出来るかもな」
「ホントっ!?」
「おう。よし、んじゃ詳しく分かったらまた教えるからな」

これ以上邪魔しても可哀想だからな、オレとジュードは病室を出た。
そして、新しいネタが入った所為か更に病室から明るい声がだだもれになった。
元気だねー。若人は。
んで次は、ローエンか。
男には遠慮しない。
さっさとドアを開けてしまう。

「ローエン、どうだ?」
「おぉ。ユーリ先生。もうすっかりいいですよ」
「それは良かった。明日退院だ。次からはちゃんと気をつけて物持てよ」

軽く腰の調子を伺い、もう治っているが念の為診察をする。

「所で、他の病室が凄く騒がしいですね」
「あぁ。若いのは元気が取り柄だからな」
「全くですな。ほっほっほっ」

お茶があれば欲しい位ののんびりした会話。

「そう言えば、お隣のルーク君、でしたか。彼の所にも誰か来ているようですね。まぁ、他の女性の皆さんの様に明るい感じではないですが…」

『…加減にしろっ!この屑がっ!!』

「…ね?」

いや、『ね?』とか嬉しそうに言われてもな…。
しかし、屑って事は…ルークの兄さんが来てるのか?
よく、そう言われてるって言ってたもんな?

「……どれ、見に行くか」
「おや?あの中に入ると?先生も若いですねぇ」
「いや、若さとか関係なく、オレ一応医者だから」
「ほっほっほっ」

食えない爺さんだよ。ホント。

「ローエン、駄目だよ。ユーリ先生にあんな言い方しちゃ」
「ほっほっほ」
「もー。ローエンっ!」
「ジュード。別に気にしちゃいねぇよ」

「そうそう。ユーリ先生はこんな事気にしないよなー」

ドアを開け入って来たのは。

「アルヴィンっ!?」

らしい。オレは直接話した事がそんなに無いんだが、ジュードは顔見知り所か、学校の先生だったらしい。
しかし、それを呼び捨てとは、よっぽどの事があったんだろうなー。
けど、それを詳しく聞く気もないし、とりあえずは。

「そう言う事。んじゃ、ジュード、オレは隣に行くが、お前はローエンの準備手伝ってやってくれよ」
「え?あ、はい」

オレがそう言うと、ジュードは不思議そうに頷く。
そんなジュードの肩に腕を回し、体重をかけつつアルヴィンが胡散臭そうな笑顔を浮かべた。

「そうそう。俺達は仲良くここにいよーぜ。なぁ?ジュード君」
「…アルヴィン。ミラの所にエリーゼとレイア来てるんだろ?」
「うっ…」
「…全く、仕方ないな」

へぇ。ジュードって親しい奴には結構厳しいんだな。
意外な一面をしって、苦笑いを浮かべながらローエンの部屋を後にする。
なんだかんだで最後は一人になる。
そしてやっぱり遠慮もなしでルークの部屋のドアを開ける。

「お?」

これまた、そっくりな兄さんだな。
ルークの髪を伸ばしたらまんまじゃねーか。

「あ、ユーリ…」
「何だ?ルーク。泣きそうな顔して。兄さんに苛められでもしたか?」
「ん、んなことねぇつーのっ!!」

ごしごしと目を擦って、誤魔化すが全然否定になってない。
むしろ、その行動が肯定しているんだが…。
さて、と。ルークを泣かしたのは?
ルークの兄さんに、長髪の「男性の理想体型」の女の子?

「んで?どうしたんだよ。ルーク」

ずかずかと歩き、ベットに座っているルークの隣に座り、頭をぐりぐりと撫でる。

「ルーク。どうして、黙っていたの?」

女の子が口を開く。それは、ルークを心底心配したと言っているようで。

「音素乖離なんて、そんな病気にかかったなら教えてくれても良かったでしょう?」
「……どうせ、父上に迷惑かけるとか考えたんだろ。この屑が」

心配したのは分かるが…。

「おいおい。オレも対外人の事言えねぇ位口が悪いが、それは無いだろ」
「貴様には関係ない」
「関係なくはねぇなぁ。オレはルークの主治医だからな」

それにルークってオレ、結構気に入ってるんだよな。
最初来た時も頼むから誰にも教えないでくれって言って泣いてたっけ?

「それに、オレは自分の患者を苛める奴らは嫌いでね。ルークが何でここに一人で来たのか。それを理解せずルークを責め続けるなら、悪いが出て行って貰う」

感情のまま、二人を睨みつける。
怒気を隠さずに威嚇したオレを止めたのは、当の本人、ルークだった。

「ユーリ、いいんだ。俺が悪いんだ。全部、俺が…」
「悪くはねぇだろ。誰だって、自分が生きる為に健康体な兄貴を傷つけなきゃならねぇなら、悩みもするし、一人で苦しんだ方がいいと思っちまうだろ。お前は何も悪くねぇ。悪くないんだ。ルーク」
「ユーリ……。う……うぅぅっ…」
「馬鹿だな。溜め込み過ぎだよ。お前」

ルークの頭を自分の胸に抱きよせ、背中をぽんぽんと叩く。
すると、ルークは今まで我慢していたのを吐き出すように声をあげて泣き出した。

「ルーク…」
「んで、お前らも何か言う事あるんじゃねーの?」
「ふんっ。……屑が……」

何か想う所があったのか、兄貴の方は部屋を出て行ってしまった。
残った女の子は、ゆっくりとルークの後ろへと座り、ルークの背中へそっと自分の背中をくっつけた。

「ルーク…。ごめんなさい。私、貴方の苦しみを理解出来てなかったのね。…大丈夫よ。ルーク。アッシュならきっと貴方を助けてくれるから…」
「……ティア…っ。ごめっ、ごめんっ……」

これで一件落着か?
場も落ち着き、これで終わるかと思ったその時。

「ルークーーーーーーーっ!!」

…何だ?このデジャヴ…。
バァンッ!と今回は見事に扉をブチ壊し飛び込んできたのは、オレと同世代っぽい、スーツ姿の男だった。
誰かに似ている気がするが、それは敢えてスルーの方向で。

「ルークっ!!心配したんだぞーーーっ!!」
「……ガイ…」
「何だっ!?どうして泣いてるんだっ!?俺のルークを泣かしたのはどこのどいつだっ!?」

これまた、凄ぇな…。

「あぁぁっ!ルークっ!!こんなにやつれてっ!!」

オレから奪いとる勢いでルークを抱き締め、頭に頬ずりしまくりである。
しかし、やつれてはいない。ってかオレの病院に来てからルークは少し体重が増した位なんだが…。

「さ、俺と一緒に帰ろうっ!なっ!?」
「へ?ガイ。オレ、今入院中…」
「ガイ、少し落ち着いて…」
「ぎゃああああああっ!!」

……。
こりゃ取りあえず放って置いた方がいいな。
オレは、そっと病室を抜け出た。
後は午後の診療をやって今日の仕事は終わりだな。全く、今日は何かどっと疲れたな。

この日の夜。
最大級の疲労がオレを襲う事をオレはまだ知らない。