吸血恋歌
【3】
「なぁなぁ」
ユーリが僕の腕を掴み、眼をキラキラさせて尻尾をふりふりと振っている。
…最近ユーリの可愛さが増大して困る。
なんだろう、この可愛さは…。
つい先日、ユーリから少し血を頂いて以来、ユーリは僕達を近づけさせてくれなかった。
一歩近付こうものなら、フーッ!!っと毛を逆立てて、そこを無視して触れようものなら、ワーキャットが誇る立派な立派な爪が僕達に川の字を数個も付けてくれた。
仕方なく、僕達はユーリを甘やかしに甘やかし、一ヶ月の色んな意味のお預けを喰らいながらも漸く、警戒しない位になってくれた。
…のはいいものの。
ハッキリ言おう。
限界だっ!!
こうも、スリスリされたり、無邪気な目に見られていると、どうしても、どうしても……ユーリを食べてしまいたい。
「なぁなぁ、フレン」
尻尾が僕の手に巻き付く。
かわ、かわい、可愛いっ!!
ついつい口を抑えて、ぐっと溢れそうな言葉を呑みこむ。
「なぁってばっ」
「あ、え?、な、なんだい?ユーリ」
「それなに?それなに?」
我に返った僕に質問されたユーリが指さしていた物。
ふと視線を手元に戻す。
そこには吸血印の血液パック(B型)があったりする。
吸血鬼は血に飢える時期がある。
が、それは何とか先日のユーリの血で補えたものの、やはり一口じゃ足りない。
でも飢えは治まった訳だし、これで事足りるかと、冷蔵庫から取り出していたのだった。
そして、そこにユーリが歩いて来たと。
「これは血液パックだよ」
「けつえきパック?」
「そう。僕達が吸血鬼だって事は話しただろう?」
こくこくと頷く。
「ユーリはお腹が減ったらご飯を食べるだろ?それと同じで僕達もお腹が減ったら血を呑むんだよ」
「血?」
「そう、血。だからこれは僕達のご飯みたいなもの、かな」
「だから、この前がぶって?」
そう言って、自分の首を指さす。
それに苦笑いを返し、頷くとユーリは不思議そうに目をくりっとさせ首を捻った。
だから、可愛いってばっ!!
出そうな声をごくんと飲み込み、笑った。
「うん。ごめんね?痛かっただろう?」
まぁ、兄さん達が痛くしたんだけど。
僕は極力、痛くしない様に努力した。
「うん。すっげー痛かった。じくってして、なんかこー、ぞぞぞって」
「ぞぞぞ?」
「うん。ぞぞぞ」
ずずずなら、何となく分かるんだが、ぞぞぞって…。
「でもそっか。フレンにとってオレは肉なんだな?」
「ははっ、うん。まぁ、そんなものかな」
笑うとユーリも何故かにっこり嬉しげに笑い、よじよじと僕の背をよじ登って来た。
そんなに重くないというか寧ろ軽い位だから全然平気なんだけど…うぅ〜ん…。
「なぁなぁ、フレン」
「んー?なんだい?」
「フレンはオレの事好き?」
「勿論。じゃないと血を吸いたいなんて思わないよ。僕はユーリに一目惚れしたんだからね」
言うと更によじ登る勢いが増し、肩に足を乗せて肩車状態で僕の頭に抱き付き頬を擦りよせて来る。
「オレもフレン好き。大好きだぜ」
「―――ッ!?」
え?今?ユーリ、何て言った?
「あのな、フレン。ワーキャットってな」
「ん?」
「家族と決めたら、ずーっと死ぬまで、ずーっと家族なんだぜ」
「へぇ」
「だから、フレンはずーっとオレの家族。フレンもオレの事好きって言ったから家族。いいんだよな?」
すりすりすりすり…。
ユーリが頬ずりする度にユーリの黒髪が頬にかかってくすぐったい。
けど、それ以上に。
「…ユーリ」
「んー?」
「それ以上煽られるとすっごく困る事になるんだけど」
「フレンが困る?」
「あ、いや。僕じゃなくて君が」
「オレ?オレは別に困らねぇぞ?」
「そう?」
「うん。家族ってのはどんな事をしてもされても『ユルセルナカ』のことをいうんだぜっ」
人の上でふんっと胸を張り、威張るユーリ。
……。
もう、無理。
っぽいっと血液パックを放り投げ。
「おわっ!?」
今までに無いほどの速さで歩く。
目指すは勿論寝室。
そうだ。今日は調度兄さん達は薔薇園の手入れでいないしっ!!
ユーリを一人で堪能するには今がチャンスっ!!
自分の部屋にダッシュ。
そんなに遠くない自室へ入り込み、しっかりと鍵をかけるとユーリともどもベットへとダイブ。
「ねぇ、ユーリ?」
胸へと引き寄せぎゅっと抱き締める。
「僕とユーリは家族だよね?」
「おう」
「僕が何をしても許してくれるんだよね」
「おうっ」
「じゃあ、君を抱かせて」
直球勝負。
普通なら嫌がって当然のセリフ。
だけど。
ユーリは。
「なんか良く分からねぇけど…家族だからなっ、いいぜっ」
予想通りの言葉をくれた。
「ありがとう、ユーリ」
許可も出た事だし、いいよね?
ユーリの首筋をペロリと舐める。
ぴくっとユーリの耳が動く。
ユーリの耳は可愛いよね。ホント。
そっと耳を撫でて、ぱくりと口に含む。
「んにゃっ!?」
はむはむはむ…。
唇で挟み、たまにペロリと舐めると、ユーリの体がふるふると震えだす。
ユーリが耳に意識をとられている隙に、ユーリの為に作った服を脱がして行く。
威嚇されなくなった時からお風呂は僕達が入れてるから、服を脱がす事に何の抵抗も無いだろうけど。
しかし…ユーリのお風呂嫌いにも困ったものだな。
入れようとすると、物凄いスピードで逃げる、浴槽に入れようとすると爪を立てる、隙をついて猫型になって逃げようとする。
最初の頃はもう僕達の方がボロボロになるくらいで…。
はぁ…。
つい溜息をついたら。
「にゃにゃっ!?」
「あ、ごめん」
へたっと耳が伏せられてしまった。
どうやら耳に息を吹き込まれたのが嫌だったみたいだ。
でも、顔は真っ赤だし…もしかして。
「感じてる?」
もう一度息を耳にかけてみる。
するとぴこぴこと耳が空気を避ける様に動かされ、ユーリはふるふると震える。
可愛くて何度も繰り返す間に、ユーリの服を脱がし、そっと胸の突起へと触れた。
「うにゃっ?」
小さいそれを指で押して擦ってみると、ぷくりと存在を主張し始める。
摘まみ、擦り、撫でて、もう一度摘まむ。
…ちっちゃくて可愛い…。
頬にキスをしてから体を動かし今まで弄っていた所をぺろっと舐める。
流石に恥ずかしいのか、ユーリが僕の頭を掴んで嫌がる。
まぁ、大した抵抗じゃないから続ける。
身を捩って逃げようとするのを抑えて、舐めてるとはっと気付く。
そう言えば、ユーリって…まだ…?
視線を動かし、ユーリの下半身に目をやる。
あ…やっぱり…。
陰毛すら生えてないのに、出せる訳ないか…。
じゃあ、ユーリが大きくなるまでに、感じるって事を覚えて貰おう。
えーっと、…。
指をユーリの口に持って行き、唇をそっと撫でると、ユーリは無意識にそれを口に含む。
舌に絡ませる様に、わざと指を動かすと。
本能なのか、軽く牙が刺さる。
「ユーリ、駄目だよ。舌、使って」
「んん?」
「そう。上手」
たっぷりとユーリの唾液を指につけて、そのままユーリの奥まったそこをなぞりながら一本押し込む。
「うぁっ!?」
「ユーリ、力抜いて。ちゃんと息して」
言われたままユーリは大きく息を吸ってそして吐くことを繰り返す。
「そう。上手だよ」
そのままユーリのそこを慣らしていく。
違和感があるのか、それとも痛いのか。
わからないけれど、ユーリの尻尾が酷く震えている。
そっともう一方の手でユーリの尻尾を撫でると、更に倍に膨れる。
そうか。ネコ科の動物は尻尾が膨らむんだっけ?
…可愛いな。
もう一度撫でると、嫌々とユーリは首を振り、尻尾を僕の腕に巻き付けてきた。
あぁ、確かにこうすると撫でれないか。
賢いな、僕のユーリは。
じゃあ、もう一本追加、しようかな。
「やっ、ふれ、ん、やぁ…」
「大丈夫。直ぐになれるから。痛くはないだろう?」
「ぃたく、ない、けど、ぉ…」
あーあ、顔が真っ赤だ。
瞳もウルウルと、アメジストの瞳が可愛い。
…ちょっと年齢の割に色っぽ過ぎないか?
―――ごくり。
唾を飲み込む音がはっきりと聞こえる。
で、でも我慢だ。
まだ、これじゃあ、ユーリに怪我させちゃう。
一旦指を引き抜き、三本同時に入れ込むとユーリの体が更に震えた。
かなり解れてきた。
…そろそろいい、かな?いい、よね?
ずるっと中から指を引き抜き、そして…いざ入れようとした瞬間。
『フレンッ!!』
「えっ!?」
名を呼ぶ声と。
ズバァンッ!!
ドアをぶち破る音が同時に響く。
「抜け駆けはしないって約束だっただろっ」
「兄さんの言う通りだっ!」
あー…バレた。
「一番に入れる権利はあげるけれど」
「独り占めは許さないよ。フレン」
「……はぁ。分かったよ」
「…ふれ、ん…?」
艶を帯びた瞳が僕をじっと見つめる。
「……から、だ、ぁ…つぃ…」
「うん。ごめん。今楽になるからね」
額にそっとキスを落とし、ユーリの体を抱き起こし膝裏に腕を通しながら抱きあげ、良くほぐしたそこへと自分の宛がい一気に貫いた。
「にゃあああぁっ!?」
肩につかまるユーリの爪がぐっと刺さる。
でも、ユーリのこの顔をみると、むしろこの痛みも嬉しいものに…。
全ておさめきって、ユーリの呼吸が整うのを待つ。
何度も何度も頭をなで、髪を梳く。
「大丈夫?ユーリ」
「…ふれ、…ふれっ、ん」
必死に僕に抱き付き、スリスリと頬を寄せて来る。
…わざと?わざとなんだろうか?
こんな状況で我慢が出来る訳が無い。
ユーリをぐっと持ち上げて、また押し込む。
何度も何度も、ユーリの奥へと入り込む。
「うぁ、ぁっ、んン、んッ」
「…可愛い、可愛いよ、ユーリっ」
ユーリの声を導き出すように、突き上げ続ける。
どうしよう。
滅茶苦茶気持ちいいっ。
ユーリを腰を掴み、深く深く入り込み、その快感に引き摺られるまま、僕はユーリの中へ吐き出した。
荒い息を互いに呼吸を整える。
「…さて、フレン」
「え?」
「君が一番手を抜け駆けで奪ったんだから」
「当然、暫くお預けでいい、よね?」
「えぇっ!?」
…兄さん達の目は本気だった。
しかも非は僕にあるから逆らう訳にも行かず、僕はそれから兄さん達がユーリの中で2回ずつ行くまで入れる事が出来なかった。



